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【1分で読了。即興小説】中華街ぼいん

【お題】


中華街ぼいん


【本文】



中華街に彼女と旅行に行ったときのこと。
過去に何度か来たことがあったのだが、何だか当時とは様子が違う。人々が何やらピリピリしている様子。

彼女とその違和感を共有しつつ、まぁいいか、気のせいだ、楽しもうと一旦このことは忘れた。

しかし、奥に進むにつれて、時間が立つにつれて、その違和感は徐々に強まっていった。
彼女が言った。
「やっぱ変だよ」
「なんか怖い」

私も彼女を落ち着かせながらも警戒を強めていった。


だいぶ街の奥に進んだときのこと、
街中に響き渡るドラの音。
けたたましく鳴る音に思わず耳をふさぎたくなった。

その音をきっかけに街の人々は老若男女、猫も杓子も、一斉に服を脱ぎだし、ぼいんをあらわにした。

そして、狂ったように踊りだした。
カンフー映画のように素早く動き回っているかと思えば、太極拳のようにゆったりと優雅に舞う。
一人ひとりが競い合うように、一生懸命自分自身のぼいんをアピールしていた。


私は呆気にとられていたが、我に返って、
「すぐにここを出よう」
と、彼女の手を取った。

しかし彼女は動かない。
どうしたものかと彼女の顔を見ると遠くを見つめ恍惚の表情を見せている。

次の瞬間、彼女は私の腕を振り切り、服を脱ぎだし、
ぼいんを乱舞させた。

私は必死で止めようとしたがダメ。
彼女は狂ったように暴れだした。

その姿、そのぼいんは、
まさに龍。
昇龍、暴れ龍だった。


私はしばらく彼女を制止しようとしたが、
どうにもならず諦めた。
彼女を捨ててこの街を出るべく電車に乗った。


道中、私の心はウズウズ。
服を脱ぎたい…

数分後私は電車の中で、上着のボタンを外していた。

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