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恐山(2)

何年ぶりでしょうか。実に15年前にもなると思います。家族で泊まりがけの旅行をするのは・・・私は土日祝日休みではなく、盆も正月もまとまった休みは取れない職場でしたので(ブラック企業というわけではなく、一般に小売りで働く社員とはそういうものです)、なかなか1日2日の休みで泊まりがけの旅行に行く気にはなれなかった、というのが正直なところです。やっとできたのは退職したから、という事実には我ながら悲喜こもごもと言わざるを得ません。

目的地に恐山を選んだ理由は、前回書かせて頂いたとおり、幼いころの思い出が大きなところでしたが、霊場などに行けば、少し自分の心も落ち着くのではないか、と考えたことも、やはり大きいのです。まあ誰しも忙しい生活を送る中で、癒やしを求めて旅行に出かけるのだから、それも無理はないと思います。

大町桂月という方は、政治的にやや右寄りの考え方をしていたらしく、そのため与謝野晶子さんとは論争を繰り広げたらしいです

このような歌を詠んだ方もいらっしゃるようで、調べてみると高知県出身で与謝野晶子と同時代に生きた有名な詩人の方でした(大町桂月)。こういった方も何かしらの癒やしを求めていたのでしょうね。

さて、前回は山道を登り不動明王さまにお目にかかったところまでご紹介致しました。以降は山を下りて「地獄」エリアに入ります。

黄色く縁取られた穴からもくもくと煙が立っています
こちらの方がわかりやすいでしょうか。いずれにしても写真技術が低く、実際に出ていた煙はあまり見えませんね。


硫黄の煙が左右に立つ道を下っていくと、やがて小さな像を納める堂にたどり着きました。こちらが慈覚大師円仁さまで、恐山の開祖とされる方です。円仁さまは最後の遣唐使であり、帰国後は浅草の浅草寺や平泉の毛越寺、中尊寺などを開いた方なのだそうです。天台宗の開祖である最澄の弟子で高名な方のようです。(恐山自体は曹洞宗です)

地獄エリアには至る所に小石が積み重ねられて塚となっており、風車が回っていました。おそらくこのひとつひとつに霊が宿っているのでしょう。誰が立てたかわからない風車は、その菩提を弔う証なのです。

荒涼とした地獄の中におられるからこそ、その存在自体がありがたみとして拝まれる八葉地蔵菩薩さまです。背景の白い岩肌は地獄と称されますが、ある意味極楽のようにも目に映ります。

こちらは慈覚大師座禅石で、そう名付けられたからにはここで円仁さまが座禅を組まれたのでしょう。画像ではわかりませんが、このあたりは特に噴煙がすごく、その影響で周りの砂も黄色く変色しています。

座禅石の後方を振り返ると、急峻な崖になっていたのですが、そこを一匹のカモシカが降りてきたのに遭遇しました。超望遠で撮影したため手ブレがひどく、ぼやけた画像になってしまい、残念です。しかし、これには妻・息子ともども「山の神に会えた」と喜んでおりました。本当に斜面をコツコツと歩く姿は神聖でした!

その先に「水子供養地蔵尊」さまがいらっしゃいました。恐山と言えば水子供養ですね・・・。お母さんのお腹から出てくることなく亡くなった子供たちの霊を弔おうと、開山前にもかかわらずお供えがあったのが印象的でした。

お供えの多くはミニカーなどのおもちゃでした。生まれることができなかった赤子の気持ち、失った母親の気持ちが象徴されるような場所です。

パンフレットによればこの周辺に有名な「血の池地獄」があったらしいのですが、池の水に赤い藻が発生するときでなければ、それとわからないようです。残念でした。

順路を辿ると極楽エリアへと入ります。この池だけ水が緑色で、雰囲気がまさに極楽でした。

そしていよいよ宇曽利湖です。

空が青ければ湖面がそれを反射して真っ青に映るのですが、この日は薄曇りだったため・・・それでも白い砂の極楽浜と相まって美しいものでした。恐山はこのカルデラである宇曽利湖を囲む八つの峰の総称で、単独で恐山という山はありません。
最高峰は釜臥山で、昔小学校のスキー教室で滑った思い出があります。

また、宇曽利湖は見方によっては沖縄の海のように綺麗に見えますが、泳げません。強酸性のため水を触ることもお勧めしません。

さて、帰りの順路は、また地獄エリアを抜けます。こちらは色が鮮やかな「胎内地獄」。名前の由来はよくわかりませんが「胎内」という言葉には母親の腹の中という意味の他に仏像の腹の中という意味もあるようですので、そちらに由来するものかもしれません。いずれにしてもかなり地獄っぽい場所です。

こちらは「重罪地獄」。どういう由来があるのでしょう・・・。

看板にもありますが、こちらは「金堀地獄」。お金にまつわる罪を犯した人が眠る地獄なのでしょうか・・・
調べてみると、昔は砂金が採れたそうなので、もしかしたらそちらの方が由来なのかもしれません。

こちらは「修羅王地獄」。写真ではあまりわかりませんが、噴煙が立ち上り、本当に危険です。近寄らないこと。危ない危ない・・・。

他にも「無間地獄」もありましたが、撮った写真がぶれていてアップできる状態ではありませんでした。またしても残念・・・。旅行あるあるです。

帰りの順路で山頂に見えるのは「林崎大明神」です。ここで山門前に戻ることとなります。

こちらは総門前にいらっしゃいます「来迎の像」。本来なら総門の前なので最初に紹介する画像なのですが、駐車する際に反対側に止めたので、目に入りませんでした。ごめんなさい。

駐車場内にある「六地蔵」。こちらはなんだかかわいいですね。

だいぶ写真で紹介しましたが、このほかにも戦没者慰霊碑や東日本大震災供養塔などがあります。

心残りなのは、山門の手前に男女の温泉小屋があって、参拝者は無料で入浴できるのですが、どちらも実際に入っている方がいらっしゃって、撮影を遠慮してしまったことです。外観だけでも撮っておけばよかった・・・。
お湯は入浴剤を入れたお湯のように黄緑色でした(もちろん天然の硫黄成分です)

なお、有名なイタコは大祭期間中に出張してやって来る人たちであって、恐山菩提寺とは本来なんの関わりもないそうです。
また、風車は総門横の売店にて500円で販売されていました。実際に購入して地面に刺す人のことを思うと、やはり切なくなります。

駐車場の手前には赤い欄干の橋があって、これも名所的な施設なのですが、現在修繕中であり、渡ることができなかったことも残念なことの一つです。

昔、子供の頃にはよく「恐山で転んで膝などを擦りむいたら、一生治らない」なんてことも言ったり、言われたりしたものですが、実際にはそんなことはありません。ありがたい場所なのに、よくそんな失礼なことを言ったものだと私も反省しています。

いずれにしても、私も久しぶりに行ってみて少し救われたような気がします。皆さまもいちど訪れてみてはいかがでしょうか。よく晴れた日がお勧めです。極楽感が倍増します。
なお、冬は道が閉鎖されますので行くことができませんのでご注意下さい。

それではここまでお読み下さいまして、ありがとうございました。

↑前の話:恐山 https://note.com/witty_camel483/n/nf1f041acabbe


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