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無関心領域へようこそ。映画『関心領域』鑑賞

ジョナサン・グレイザー監督といえば音楽好きな私の場合、映画監督というよりあの有名なジャミロクワイの『ヴァーチャル・インサニティ』(1996年)のMVが思い浮かぶ映像作家さん。
私、ボーカルのジェイ・ケイの軽やかなダンスが見たいのに床をコソコソ歩く虫(フナムシの一種)がどうしても大っ嫌いなGにしか見えず、視界に入らぬよう手の平で覆い隠しながらMVを見るというアホな時代がありましたな。懐かしい。


そんなグレイザー監督の、アウシュビッツ強制収容所の塀一つ隔てた隣の壮大な土地に住む所長、ヘス一家の日常を描いた映画『関心領域』。
仕事場である施設や邸宅の、奥行きのある冷たい空間の不穏さと湖畔近いプール付き自然いっぱいのだだっ広いお庭で寛ぐ家族の平和ボケ加減が印象的かつ対称的。

音響がですね、、まるで『オーメン』さながらの讃美歌のようなコーラス?私の耳にはコーラスが
「コワイコワイコワイコワイ・・・」
に聞こえてしょうがなかった←
真っ黒や真っ赤なスクリーンの背後に何が起きているのか、、聴こえてくるのは叫び声や罵声etc.

、、怖いよ~っ!

アウシュビッツや強制収容所といった単語だけでもある意味ホラーといえばホラーな状況を連想させてしまうのですが、収容所で行われていたであろう残酷かつ陰惨な場面は一切スクリーンに出て来ません。
言語が早口のドイツ語(ポーランド語?)で、特に詳しい説明や描写もなし、人物の表情も乏しく心情が分かりにくいため字幕を見逃すまいと集中、想像するしかない。
疲れた、、。
観客を選ぶ映画かもしれません。
想像力と集中力、そして少しでもこの事実を基にしたストーリーや歴史に関心がなければ難解かつ不快な映画です。
途中で退席する人もいらっしゃいました。

ヘス所長の奥様、よっぽど湖畔近いプール付き自然いっぱいのだだっ広いお庭のある邸宅がお気に入りであるらしく、夫の転勤を知ると私はイヤ!絶対ここを離れたくない!と駄々をこねます。
わかるよ、わかる。夢だった不自由のない快適な暮らし。そう簡単に手放せないよね。
だけど、働きづくめの夫の心情や仕事を考えてみ。
ゾッと、、
しないみたい。


娘(奥さん)の住む家にお世話になるらしいお母様(所長の義母)。お部屋のベッドをすっかり気に入っちゃう。だから就寝時「あら~やけにお外が騒がしいわね~。夕焼けみたいにオレンジで明るいし~でも大丈夫よ、気にしない気にしない♪」なんて言って(ちなみにうちの義母はこのタイプ)爆睡するかと思いきや。娘と違って感受性をお持ちの方でした。なぜかここで少し安心してしまう私。
安眠出来なかったのね。
お母様、手紙残してすぐに出ていっちゃった。
まあ、(本来なら)そうだよね、、。


立場は違えど、所長も家族もアウシュビッツの犠牲者といえるのかもしれない。

感覚が麻痺するって恐ろしい、、。

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