最近見た映画について①

最近見た映画の中から『女王陛下のお気に入り(2019)』をピックアップして感想を述べます。
ネタバレします。
断っておくと映画にはそこまで詳しくないので優しい目で読んでいただけますと幸いです。

この作品は筋としては(ほぼ)ノンフィクションで、自分が加入しているアマゾンプライムビデオにある、
'過去のアカデミー賞®受賞作'というカテゴリーから見つけた作品ですー

以下、作品の説明。

エマ・ストーン出演作品。(エマ・ストーンしか知らなかった)
舞台は18世紀イギリス、アン女王治世下の王宮が舞台。
アン女王はステュアート朝の最後の女王かつ、今もなお続く大ブリテン王国の最初の女王を務めた人である。
女王が有名無実化していた政界の実体とか、スペイン継承戦争で増税に苦しむ庶民たちと、王侯貴族たちのきらびやかで豪勢な宮廷生活のコントラストなどが、面白おかしくアイロニカルに描かれている。

物語の主要人物はアン女王と、彼女の側近を務めた二人の聡明な女性。
二人とは、レイチェル・ワイズ演じるサラ・ジェニングスと、エマ・ストーン演じるアビゲイル・メイシャム。
この二人の女官が女王の寵愛を勝ち得るためになんでもやるのだが(本当に何でも)、その攻防が知的で非情。
率直に彼女らがとても美しい。たくましい。潔い。少し惚れそうになる。
こういった、時代に屈することなく自分の身固めに心血を注ぐ、良くも悪くもまっしぐらすぎる女性を描くというのは、現代に生きる女性のエンパワーというメッセージも込められているのではと思う。
もっとも見ならいたいは越して若干引いてしまったけれど。
そして、オリヴィア・コールマン演じるアン女王。
とてつもなく演技がうまい。本作でアカデミー主演女優賞をとったらしい。
アン女王は流産、死産、そして生後間もない夭折で、一人も大人になるまで自身の子を持つことができなかった人だ。
彼女が抱えるその深い悲しみが垣間見れる。

コメディという位置づけにある作品だが、描かれているのは全部割と凄惨なことばかりだ。
こういう史実を映画の中で表す場合、コメディにしなければ簡単には消化できないくらい重くなるのが常なのかもしれない。

映画や女優の細かい知識はないし、世界史も高校までの貯金しかないので専門的なことは言えないけれど、思ったことをいうならば、この作品の魅力はなんというか、先述したけれど、現実の重苦しさがみじんも感じられないところ。
全部芝居じみたセリフと表情と動作で(そりゃ芝居なんだけど)物語は展開するから、見ていて疲れないし、普通にシュールでコメディとして面白い。
イソップ寓話の世界観並みに軽い。
女がしたたかで強い。
全員何かと愚か。

コメディ映画の人間はどこかどうしても人間離れしていると思う。
何を考えているのかわからない。奇行に走る。
感情があるかもわからない。少なくとも正常に機能はしていない。

まあ何が言いたいかというと、大ブリテン王国時代草創期の史実を表す上でこの手の手法を使うのはかなり成功しているんじゃないかということだ。
全員あたまおかしいなあ…と随時考えながら映画を見ていたけれど、監督のヨルゴス・ランティモスさんもそういうことを狙っていたんじゃないかなと思う。(違ったらごめんなさい)

なにかうわあ大変な時代だったんですね、、今の平和な時代に(現時点の日本の場合は、ということであるけれど)生きることができて幸せです~となるような映画はたくさんあるけれど、いい意味でこの作品はそういう自分へのフィードバックができないというか、あまり学びという観点では得られるものはない。だってコミカルだから。

でも全員が全員かわいそうで醜いこの映画は、私に自分の矮小さを思い知らせる。
私なんか絶対に見知らぬ人のために寒い朝に薬草を積んでまで出世を狙おうとするガッツはないし、ばれたら首をふっとばされかねないような極秘情報を政敵の政敵にリークすることもできない。

ノーリスクノーリターンであるのねーと相変わらず私は暖房のきいた狭い部屋でぬくぬくと鑑賞していたわけではあるが、まあこんな人たちのようにはなれないし、身近にいたら自分の身が危険にさらされかねないので距離を置きます。普通に。

人間なんて全員どうしようもなく未熟で弱いのであるが、自分の限界を突破しようとあがくことは誰だってしていることだし、せざるを得ない時も往々としてある。
生きてる意味とか結局自己満足で創作するものだし、傑出した充実度合いの人生を享受できる人なんてほとんどいない。私たちの多くは地味で起伏の少ない日々を地道にこなしていくしかない。と思っている。私は。

けれどやっぱり、その中で努力して何かを成し遂げようとしている人は今も昔もいたり、結構胸を打たれるものだったりする。
『女王陛下のお気に入り』の中に出てくるこんな彼女ら(彼らも)は、とても愛おしい。
この混沌の先には栄光と富と幸福が待っているに違いないということを一糸も疑わずに信じていて、それを手に入れるまではなにがあっても引かない、どんなことでもやってやるわ!って感じだ。

殊勝だなとも思う。真実の愛なんてないとはだれもが知りながらも、その体現に全力で務めているんだから。

こういう風に激動的に身を削る生き方はなるだけしたくはないけれど、少しうらやましいなとか思わなくもない。
ずんのコントにある、自室で寝転がったまま「あ~おれも幕末に生まれてたらな~」というセリフ並みに中身のない気持ちではあるが。

あんまりまとまってる感じはしないが、同監督が今度は主演としてエマ・ストーンを迎えた『哀れなるものたち』も必見だなということだけはとりあえず導ける結論である。

インプットした映画作品をこういう形でアウトプットするのはなかなか骨が折れるなと感じたところで今回のnoteは終わりますー。




この記事が参加している募集

#映画感想文

67,587件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?