介護をしている全ての人へ#52 ~ 父を見舞う母
この日の母の日記には、父と叔父さんと私を心配する気持ちが詰まっている。それに比べ、自分の日記は、世の中を拗ねて世を呪う言葉が詰まっていた。
不幸に酔っている自分が痛い
2019年2月21日(木) 母の日記
朝8:40に夫をあずみ荘(デイサービス)に送り出す。その後、デイサービスにこっそり行って夫の様子を見る……思っていたよりかなり悪い。
職員さんの言っていることが殆ど理解できていない様子。施設利用者とのコミュニケーションも無い。
少し前まで家で、利用者や職員の悪口を言うこともあったが、最近はそういうことも殆どなくなった。職員さんや利用者とのコミュニケーションを拒んでいるうちに認知症の症状が進んでしまったのだろうか。
夫が、NHKの囲碁番組やスポーツ中継に異常な執着を示す理由は、現の世界に必死にしがみつく行為ということなのか?……わからない。
長男に厳命されている不用品の仕分けを進めるが、断捨離が辛い。
夕方近く、気分転換に近所を散歩する。歩行が今までより辛い。足のむくみが日に々々ひどくなっているような気がする。「がんばれ、がんばれ」と自分にエールを送りながら30分ほど歩く。ここで私が歩けなくなったりしたら、長男が倒れる。長男が倒れたら家族は崩壊してしまう。
夜、車で光輪に行く。(光輪は父の弟が創業したフランス料理レストラン。Jさんはオーナーシェフ)。偶然、がんセンターで見かけたJさん(父の弟)の様子をうかがいに行く。
Jさんは去年、甲状腺にがん(初期)が見つかったのだという。
自分のこともあるので、とても心配。
がんを患いながらも、明るい表情で厨房に立って料理を作り続けるJさんのことをすごいと思うと同時にうらやましい。
長男から電話、今日は埼玉に帰るとのこと。疲れている様子。
2019年2月21日(木) 私の日記
上司との面談1時間。今期の仕事っぷりを総括をされる嫌な時間。母の病院や父の債務のこと病気のこと、いろいろあって、急な有給休暇をしばしば取得していることを指摘される。赤の他人である上司としては当然の指摘だが、物言いがあまりに冷酷な感じがした。
元々上司との関係はうまくいっていた感覚はなかったし、上司もそれは感じていた様子。超一流大学を卒業後、30年以上N社の禄を食んできたエリートサラリーマンと自分では価値観が異なるのも当然。評価の基準は何を達成したかではなく、如何にミスをしなかったか。そういう評価軸の中では自分の評価は最低だろうとあきらめる。
この会社に入る時、”会社にはない着想”で仕事を創造してくれと言われたのだが、”会社にない着想”なんて、そもそも会社は必要としていなかったことがわかった。
1時間ほど残業をして帰宅、帰り際に仕事の「効率が悪いと、ご両親の看護にも影響が出かねない」と嫌味を言われてさらに気分が落ちる。
今日は埼玉のマンションに帰る旨、母に連絡。父のことで何か言いたそうだったが、明日の夜聞くことにして電話を切る。
いつもだったら、母にあんなに冷淡な反応はしない。どうかしている。
この日記を書き終えたら、母にラインをしよう。