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介護をしている全ての人へ#93 ~ 6回目

 「がんセンター」にはがんを患った人とその家族がたくさんいる。もちろん病を癒して家族の元に帰っていく人はいる。でも、母はその可能性が低いことを知っている。
 母がこの日記を書いたとき、周りの家族は何をしてあげるのが正解だったのか…いまだにわからない。

2019年4月3日 母の日記

 今日は、抗がん剤6回目
 二人の息子とこうちゃん(父の弟)と4人でがんセンターに向かう。
 今日は、血液検査、胸部レントゲンをしてからの抗がん剤。
 待つ時間が長かった。婦人科の待合スペースで検査の順番を待っていると、悲喜こもごもの景色が目の前を流れてゆく。
 治療が成功して肩をたたきあいながら喜ぶ夫婦。治療がうまくいかずに発する言葉を探している患者とその家族。
 わたしは、たぶん言葉を探す人たちのお仲間かな。押し黙って下を向いていると、次男が病院の外に連れ出してくれた。
 こうちゃんと長男を伴って、三島のうなぎ屋さんで昼ごはん。久しぶりに楽しい話をしながらご飯をたべた。会話が成立するってたのしい。
 ジーラスタの注射は明日になるという。このまま病院に一泊することを勧められたが、息子たちとの時間を大切にしたい。長男が運転手役を買って出てくれたので、帰宅することになった。
 ジーラスタの副作用のつらさを息子たちやこうちゃんに話した。苦しいことを分かち合ってくれる家族は素晴らしい。
 長男にも、そういう家族がいたら思い残すことはないのに。

2019年4月3日 私の日記

 母、6回目の抗がん剤治療。
 がんが消えてしまうことを祈る。でも、そんな奇蹟は起きないことは父以外のみんなが知っている。
 父も、母も苦しみませんように。

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