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下田の歴史と未来を見守る神社。

この記事の投稿日、2020年8月15日の下田は
賑やかな太鼓や笛の音に包まれているはずでした。
毎年8月15日は下田八幡神社の例大祭が行われる日。
今年は新型コロナウイルスの影響で巡幸奉仕は中止が決定し、
神事のみを神社で執り行うことになりました。

そんな現状について宮司さんは何を思うのだろう?
下田の町の真ん中あたりに
行きかう人々を見守るかのように佇む下田八幡神社(はちまんじんじゃ)。
今回は下田八幡神社の宮司、碓氷 欣栄(うすい きんえい)さんに
お話を聞いてきました。

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「こんにちは!暑かったでしょう。あがってあがって!」
神社にお邪魔してすぐに、笑顔の欣栄さんが出迎えてくれました。

下田八幡神社は1288年頃には既にあったといわれる由緒ある神社。
長い歴史の中で2度の火災に見舞われ、
その度に町民の協力によって立て直されてきました。
今残っている神社は、1986年に建て直されたもので、
もともとあった神社より立派に作り直された権現(ごんげん)づくりの建物です。
優しそうな宮司さんや、神社の歴史を見るだけでも
町民から愛されている神社であることが伝わってきますよね。


そして毎年、8月14日・15日の2日間行われるのが
下田八幡神社の例大祭の巡幸奉公。
下田市民が、各町に伝わる全部で20台の太鼓台を引き回し
町中を練り歩くことから、「下田太鼓祭り」の呼び名で親しまれています。
毎年この時期は練習の笛や太鼓の音が聞こえ始め、俄かに町が賑やかになります。県外で暮らす下田出身の若者も、この時ばかりは帰ってくる人も多いのだとか。

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起源を遡ると江戸時代、大阪夏の陣に大勝した徳川方の軍勢が
大阪城に入城する際、徳川の威風を宣揚し、
志気を鼓舞して堂々と入城した陣太鼓をまねた物なのだそう。
ルーツを感じさせる、勇壮で活気に満ちたお祭りです。

そのお祭が今年は中止と聞いて、
「宮司さんも元気ないだろうなぁ・・・」
だなんて思いながら神社を訪れましたが、欣栄さんはとてもお元気で、にこやかに取材に応じてくださいました。

「お祭りが中止になるのはいいんです。
 それよりも中止による町への経済損失が心配ですね。」

お祭りの中止を決定した今、何を思うのか。
返ってきたのは意外な返事でした。
下田市は観光業の町。特に夏は1年の売上のほとんどを占めるといっても
過言ではない季節です。
勿論、下田太鼓祭りも夏の観光資源になっています。

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しかし、神社のお祭りは市民からの寄付金で成り立っており、
太鼓台を牽くのも、笛や太鼓の演奏をするのも全て下田市民の力です。
大学や、工場等の働く場所がないために
若い世代の人口流出が年々増える一方の下田市では
縮小していくことも考えなければいけないと欣栄さんは言います。

「このコロナを機会にね、改革のチャンスにしよう!って思ったよね。」

実は下田八幡神社では電子マネーが導入済み。
お守りなど、PayPayでの購入が可能です。
今現在、祭りを開催するための御浄財(ごじょうざい)は、
1軒1軒下田市内のお家をまわって集めているそうですが、ゆくゆくは電子マネーでの御浄財受け取り、支払いも可能にしたいとおっしゃっていました。
神社への御浄財や、お賽銭が電子マネーだなんて
不思議な感じもするけれど、下田にいなくても、太鼓祭りに参加したいだとか、下田を応援したい、と思っている人にはいいのかも。

「神社が町の先頭に立っていかないと!」

来年の夏に向けて、欣栄さんが提案したのが
「下田の町丸ごと電子決済導入する」というもの。
初めて訪れた人も、どこか懐かしさを感じるノスタルジックなこの町で、
「町丸ごとキャッシュレスです、現金扱ってません。」
だなんて言われたら・・・。ちょっと面白いですよね。

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伝統は大切にしつつ、変わらないままでは居られない。
本当に大切なものと、変えたほうがいい古いもの。
見極めはとても難しいけれど、欣栄さんのバランス感覚なら
きっといい方向に行くように思えました。

下田の夏の風物詩、「下田太鼓祭り」は来年は必ず行うとのこと。
今年を準備期間として、来年からのお祭りがどんな風に変わっていくのか?
楽しみはあれど、不安はありません。
お祭りは、誰よりも下田の人たち自身を元気づけるためのものなのですから。

下田八幡神社
宮司:碓氷 欣栄
Facebook:https://www.facebook.com/jimmy.morris.9465

(ライター/VILLAGE INC. 本間 千裕)
(イラスト/温泉民宿 勝五郎 土屋 尊司)
( 写真 /碓氷さん提供、田口 知奈未さん提供 他 )

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