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読書の話②

今日は私が最近読んだ中で面白かった小説をテーマにしてみようと思う。

マーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/4488780016/ref=cm_sw_r_other_apa_glt_i_QS2WC21AY7321AJCAWZV

マーサ・ウェルズ作、中原直哉訳の上下巻。ジャンルはSFなのだが、なんと言ってもこの小説、主人公の一人称が特徴的なのである。
主人公は過去に大量殺人を犯したと言われている(本人はその時の記憶を消去されている)生体警備ロボットなのだが、彼(ロボットに性別はないがあえてこの二人称を使う)は自分のことを『弊機』と呼ぶ。

そう、『弊機』である。

なんとへりくだった一人称だろうか。翻訳者の腕が光っている。物語はこの『弊機』の一人称視点で進んでいく。
元々『弊機』は会社の指示に則って行動するようにインプットされているのだが、自分でその『統制モジュール』と呼ばれる会社の司令系統をハッキングし、自由に行動できるようになった。

そして彼はハッキングしたことを隠して保険会社の仕事を続けていく訳だが。仕事の合間の時間になにをしているかと言えば『サンクチュアリームーンの衰退』という作品を始めとした、連続ドラマの視聴が趣味なのである。

……まるで人間の余暇のようだ。

ここまでの説明文は小説の始めのページに書いてある。そして私はこのあらすじを読んで、この作品に非常に興味が湧いた。ということで、さっそく上下巻を購入し読んでみた。

読み始めて最初に思ったことは、とにかく「専門用語が多い」ということだった。登場人物が多いのはまだなんとか理解できるが、私はその専門用語の多さでつまづきかけた。

相手と連絡を取り合う時に使われる「フィード」、居住施設「ハビダット」、そして先ほども説明した「統制モジュール」。たった1ページ目でこれだけの専門用語が出てくる。
だが、徐々にこれらの専門用語が馴染んでくるにつれて、この小説の面白さを噛み締められるようになった。

『弊機』はとにかく、人間が苦手だ。見た目はほぼ人と変わりないのだが、あくまでも自分を「ロボットとして」扱われることを望む。仕事の関係上人間と関わらない訳にはいかないのだが、会話の時も相手を直視しないようにする。

極端に言えば、極度の人見知りとも言えるかもしれない。そんな『弊機』はひょんなきっかけで会社のくびきから離れることになる。そして様々な人やロボットとの出会いと別れを繰り返しながら、最後に行き着く場所とは……。

私は読了後、『弊機』の可愛さに目覚めた。続編の出版も決定しているようなので、発売を楽しみに待っているところだ。
「マーダーボット・ダイアリー」はSF小説を読まない方にはオススメしづらいが、SFに抵抗がない方には是非ともオススメしたい作品である。

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