産休への罪悪感を「持続可能性」と呼んでくれた人
「独り立ちしてこれからというときに、申し訳ありません」
大きなお腹でみなさんの前に立ち、私はそう発していました。多分、顔を少し曇らせながら。
産休に入るまであと3日。会社の本部の人たちが集まる会議の最後に、挨拶をする機会をいただいて。何を言おうか、数日前からぐるぐる悩みつつ。
できるだけ「申し訳ない」ではなく「ありがとう」を伝えようと思っていたのに。罪悪感が拭いきれなくて、結局謝っている自分がいました。
自分で希望して面接を受けて、去年から今の本部に受け入れてもらって。メインで担当していた先輩との1年を経てこれから、というときに。しかも先輩は異動してしまって、私が全てを担うべきだったのに。
先輩の異動と自分の妊娠が重なったことをどこかで恨みつつ……受け入れてくれた方々や、これから引き継がせてもらう方になんと言えばいいのかわからなくて。
安易な「申し訳ない」という言葉になっていました。
そんな中でもみなさんはあたたかく、私の挨拶が終わると寄せ書きや絵本、お守りなどをくださって。
勝手にいなくなる私に、なぜみなさんはこんなにも優しく送り出してくださるのだろう。
感謝以上に恐縮の気持ちが、大きくなっていきました。
会の最後に言葉をくださったのは、本部長。
女性の本部長がまだまだ少ない中、パワフルに仕事に邁進されている憧れの方。
「さっき、申し訳ないって言葉があったけど」
私の方を見て、ゆっくりと口を開く。
「人が入れ替わっていくことは、持続可能な組織になっていくってことだから。」
持続可能な、組織。
確かに、先輩が異動したからといって成り立たない組織なんてだめだし、そのために私はいた。
同じように、この本部は私が休みに入るからといって成り立たない組織なはずはない。そのために、次に引き継がせてもらう方がいる。
「休みに入って迷惑をかける自分」は、「人が入れ替わっても続いていく本部だと証明できる自分」なのかも、しれません。
私は自分の人生として子育てもするし、働くこともあきらめないつもりで。
「持続可能性」と聞くと壮大で、どこか人ごとだったけれど。
私一人の生き方が、大きな組織や社会が続いていくことにも繋がるのかも……と少しだけ、思えたりもして。
「申し訳ない」が消えることはないけれど、できるだけ「ありがとう」に変えて。この人生を歩んでいきたいと思います。
お腹の中の人が大きくなる頃には、どんな世界になっているのかな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?