見出し画像

【英語本】『受験英語をバージョンアップする』石原健志【ブックレビュー】

発売当初twitterで話題になった時に購入し、半分くらい読んだところで積読状態となっていたのですが、個人的に少し落ち着いて本を読める時間のある今がタイミングということで、約1年半越しに読了しました。

奥付を見ると2022年7月22日第1版第1刷発行とあって、つい最近のことのようで、でもそこから今日まで英語学習を取り巻く環境はかなり変わったなという印象もあります。それはもちろんChatGPTに代表される生成AIの登場のためですが。そう思うと時系列的に当然ながら本書の中にChatGPTへの言及がないことで、しみじみ時の流れを感じたりもしました。そういえばtwitterもこの期間にXとなったりしましたし。。Time flies! The blue bird flies away!

著者の石原健志先生は大阪星光学院の教諭をされているとのことで、こんな実力も熱意もある先生から中学・高校の伸び盛りの時期に英語を教われるとは何と幸せな生徒たちなんだろう!心からそう思いますね。羨ましいかぎりです。。

さて、本書のコンセプトは最新の言語学の知見を活用して「受験英語」をもっと使えるものにしようと言うもの。個人的には第14-15章の情報構造+統語論的切り口やGoogle Ngram Viewerの紹介が特に参考になりました。

そこでさっそく前にnoteに書いた、sourの比較級は辞書に載っているsourerなのかそれとも英語カフェやBarでネイティヴに確認したmore sourなのかをGoogle Ngramにかけてみました!

すると以下のような結果に!

興味深いことにかつてはsourerの方がかなり優勢だったが近年は拮抗状態が続いており、現在は若干more sourの方が多いか、といったところ。つくづく言語事象を観察するには、数人のネイティヴの意見だけでなく、通時的・共時的、それに規範的・記述的視点を持つことが大切だなと思う。

ところで、全体的にはもちろん学びの多い本書なのですが、一点、どうにも腑に落ちない箇所があったので、そこに言及しておきます。

頁でいうとpp162-163の「13.2. 英語の省略現象①:動詞句削除規則」でして、ここでは以下の(4)の例文が導入されます。

(4)a. Well, you can come back to our home anytime you want to.
(ええっと、私たちの家に戻ってきたい時にいつでも戻ってきていいですよ。)

b.  Well, you can come back to our home anytime you want to [come back to our home].

こちらは伝統文法では「代不定詞」とされているものですが、本書では「動詞句削除VP-Deletion)」として解説されています。

そしてこの後に一般に「代動詞do」とされている例文(5)を、後ろに動詞句が存在することを示す「助動詞do」であると解説を加えた後で、その発音の話になります。

また、語句を省略した時の大きな特徴として、省略された箇所の直前の単語にアクセントを置いて読むのが普通です。(4)と(5)の例で、強く発音する語を大文字で表記すると以下のようになります。
(7)a. ...anytime you want TO

ええっ?
そんなところ強く発音します??
発音しづらいし、違和感が。。

気になって手元の総合英語『SKYWARD』の「代不定詞」の項を確認してみたところ、

"Can you join us?"
"I'd love to, but I'm busy now."

という対話で使われている代不定詞の音読ポイントとして、「I'd love to, but I'm busy now.ではloveを強く読み、toには強勢を置かない(ただし[tu:]と読む)」と解説されています。

うーむ、理屈から言っても旧情報である代不定詞を強く発音する道理はないと思うのですがどうなんでしょうか。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?