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分野にこだわると「分断」が生まれる

最近にはじまったことじゃありませんが、障害福祉の制度事業者のくせにしょっちゅう違う法人の活動に参加をさせていただいています。
 
 
つい先日は「障害のあるお子さんのお父さんとの語らい場」や「お母さんがゆっくり休めるマルシェ」などに参加しました。
 
 
もちろんこの活動自体が楽しい企画だから参加している、というのもあるんですが、個人的には参加するたびにいつも感じさせられるものがあるというのが一番の理由かもしれません。
 
 
普段仕事をしていると、どうしても僕らは同じ分野の人同士で関わることが増えてきます。僕であれば成人期の障害者の支援という分野です。もっと細かく言えば障害者の就労支援という分野です。
障害福祉という大きなカテゴリがありますが、日常的に関わるのはやはり同じ界隈にいる人に偏りがちになります。
 
 
それは仕事をしていく上で当然仕方のないことではあるんですが、ずっとその中にいると気づかないうちに自分の視野が狭まってしまう、という側面もあって、もちろん専門分野の中で醸成されるものもあるので、それが悪い、ということではないんですが、実はちょっとアンバランスになってしまうような気がするんです。
 
 
 


 
例えば、先日参加した「障害のあるお子さんのお父さんとの語らい場」は、ただ支援者が障害児のお父さんと語らう場、なわけはなくて、そこには困窮やひとり親を支援する分野の支援者、保護者の支援をする支援者、そして僕ら当事者支援をする支援者が集って、お父さんの様々な不安や困り感にいろんな側面から見ながら語らいを通じて答えていきます。
 
 
普段は違う分野として支援をしている主体が、当事者を支援する上で、保護者の一人の人生という視点で、同じ社会の中の生活者として、お父さんを支えることは十分に解決しなきゃいけない事だという共通認識があるからこそ一緒に向き合って生まれた場なんです。

 
僕らは普段フォーマル(制度の中)でしか関わる機会がなくて、そこでは拾えない課題が見えたりします。でもそれは、僕ら制度事業者ではなく、ソーシャルセクターの支援者さん達がインフォーマルな場所と機会を企画してくれて、そこでみんなで飯を囲み飲み食いしながら語れるフランクな場だからこそぶっちゃけた話もできるわけです。
  
 
さらにそのインフォーマルな場所で、僕らも「支援者」という自分のハッシュタグだけではなく、「お父さん」という属性で共通の立場も持っていて、それが支援者も相談者も関係なく同じ土俵で話が出来る空間を生み出したりします。
 
 
つまり、ただお父さんとお話する場というものに価値があるんじゃなくて、分野を飛び越えていろんな支援の主体が自分達の分野をキーにするんじゃなく、対象者そのものをキーにして集っていることや、支援者も支援者然としなくてもいいように、そしてお客さんも相談者然としてしまわなくてもいいようにあえて「お父さん同士が語らう場」というインフォーマルな機会として設定していることに価値があるわけです。
 
 
これはそれぞれの分野の支援者だけで実現できるものじゃなく、視野を広げて分野を飛び越えて交わりあったからこそ生まれるものなんですよね。
 


あるいは「お母さんがゆっくり休めるマルシェ」もそう。
開催者さんがいて、確かに彼らは提供者なんだけど、そのマルシェには友人が出店したり、参加者の子どもがお店出したり、参加者がマルシェの運営を手伝ったりしています。
 
 
小綺麗に整ったマルシェなわけでは多分ないんだと思うんですが、実はそんな線引きが曖昧で「ちゃんと」してないからこそ実は参加ハードルも下がり気安さが上がって、結果的にゆるく過ごせる場ができる。
 
 
マルシェというのはそれこそいろんな分野の主体の方がお店を出したりしてその場を作っているんですが、それどころじゃなくどこまでが参加者なのかどこからが提供者なのかすらも曖昧で、ただみんなでその場を作ろうとしているんです。
 
 
だからこそ価値がある。
 
 
 
普段自分が携わっている分野の中にだけいると、外にそんな資源があることももしかしたら知れないかもしれない。そして自分の分野の中に意図するしないは別として閉じこもってしまえばしまうほど、実は自分達の支援の可能性にも蓋をしてしまっているのかも知れない、と感じさせられるわけです。
 
 
繰り返しますが、もちろん各々の分野の中で磨かなきゃいけないものや議論しなきゃいけないものはたくさんあるので、軸足をきちんと置いておくことって大事なことなんです。
 
 
ただ、それが視野を狭めてしまうほどになってしまうと、それぞれの分野の中に閉じこもってしまって、結果そこに「分断」が起きてしまうんじゃないか、と思えてならないんですね。
 
 
自分達の分野だけでは叶えにくい手段や機会、自分達の分野だけじゃなかなか生まれない発想って、少しその枠を飛び越えて違う分野の方と掛け合わせてみるだけで解決することも少なくありません。
 
 
お互いの円と円をガッツリと重ねるというわけではなく、それこそ互いの円が重なる部分だけでいいので分野を越えて関わりを作ってみるとそこに新しい価値が生まれるかも知れません。
それは意外と自分達の可能性も広げる結果になることも少なくないんじゃないかと思うんです。
 
 
個人的には、ですが、福祉にはたくさんのスキマがあると思っています。
そしてそのスキマって、もちろん社会保障制度が追いついていない部分もあるんですが、おそらくは僕ら福祉のいろんな分野がそれぞれの中に籠もりすぎてしまうことで生まれている「分断」もあるような気がするんです。
 
 
なかなか普段日常の支援現場の中で手一杯になりがちなところもあるとは思うんだけど、少し分野を飛び越えてみると、意外と新しい何かが見つかることも少なくないんじゃないか、と思います。
 
 
当然そんなものやってみなきゃわからないことだらけなんですけどね。
 
 
分野を飛び越えて福祉の中でもいろんな掛け合わせが生まれてくることがある種の福祉の文化になったらいいな、と思いながら今はまず自分が飛び越えていくようにしてはいます。
 
 
少なくとも僕らが支えている方には本来いろんな支え方があるはずです。
いろんな分野の支援者が枠にとらわれずに力を持ち寄って誰かを支援できる、そんな福祉の未来が迎えられるといいな、と思っています。


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