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【Forget-it-not】最終話「この街に温かい風が吹きますように」
人を愛すること、夢を見ること、幸せになること、それはとても難しい。
この街ではすべてが綺麗事として片づけられ、やがて欲望にすり変えられるから。そうして人は愛をもてあそび、夢を失って、だれかを憎み、なにかを踏みにじる。
わたしたちは強くあらねばならない。欲望に負けないように、人を許せるように、諦めないように生きなければいけない。
それはやはり難しい。
けれど、そう思う人がひとり、またひとりと増えていけば、きっといつの日か、空にはおおきな雲ができ、雨が降り、あとには美しい森ができるだろう。
そこではみんなが手を取りあい、励ましあい、愛しあうのだ。
小鳥のさえずりが聞こえる。草花の脈動を感じる。新鮮な空気を身体いっぱいに取りこんだ子どもたちが、蝶や蜜蜂が舞い、兎と蛙の跳ねる森を駆けていく。愛らしい笑い声がとよめき、それを大人たちが見まもっている。となりに愛する人たちがいて、今日も頑ばろうと思える。
わたしはいま、そんな夢を見ている。
そしてこれからも見つづけるだろう。
この街に温かい風が吹くその日まで。
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