物語る私 #もしもGiant Stepsのギターソロを即興で弾けたなら

第二・第四水曜日は、じろさんのギターレッスン日。

先週末、調子を少し取り戻したじろさんは、早めに夕飯を済ますとそそくさと書斎にこもる。

スカイプ経由(おそらく)のレッスンで本来1時間なのだが、先生がとても熱心な方のようで、じろさんが質問したり話題が盛り上がると大いに脱線し、結局毎回90分ほど籠っている。

じろさんは元々ギターが上手なのだが、去年3月にJakob Broの来日公演を一緒に見に行った頃から何か企んでいる風で、6月に東京までビル・フリーゼルのライブを見に行った直後、気がつけばきちんとしたジャズギターのレッスンを受けるようになっていた。元々、毎日の基礎練習も欠かさない。

私たちはお互い趣味で個々に全然音楽性の違うバンドを組んでいるのだけれど、じろさんのバンドはジャズ・ソウル寄りのインストバンドで、初めてじろさんに誘われてライブに足を運んだ時は「色気のあるギター弾けるんだなあ」と感心したものである。(それまでじろさんのことを舎弟みたいに扱っていたので、ちょっとドキッとしたのであった。)

当面は、ジャズ奏者の練習教材としてはおなじみ、コルトレーンのGiant Stepsでアドリブソロのバリエーションを増やすのが本人の中での目標。


じろさんは、小学校の途中からアトピーの悪化をきっかけに不登校となり大学に入学するまで学校に通っていない。

けれど自分で大検を取って現役と同じ年齢で国立大に入学し、院まで卒業して今の研究職に就いているので、付き合いは長かったのに交際を申し込まれた時に打ち明けられるまで私もそれについては全然知らなかった。

お家で過ごす時夢中になったのは、ギターとラジオだったという話を聞いたことがある。

特にギターにはずっと夢中で、その頃存命だったおばあちゃんがテレビで相撲を見ている横で、大好きだったメタルやハードロックの早弾きソロを無心で弾くものだから、おばあちゃんはずっと怪訝そうな顔をしていたらしい。想像するとちょっと微笑ましい。


じろさんにはひそかな夢がある。
おじいちゃんなって会社員をやめるときがきたらギター教室をしたいというものである。

そのためにじろさんは日々練習を続け、私は生徒さんに出すお菓子を作るをしなきゃ〜なんてふざけながら、こっそりお金のシュミレーションをして準備の準備をしている。


レッスン後、じろさんはいつもより少し得意な顔で書斎から出てくる。

「ためになった?」と私が聞くと「ためになったねぇ~。ためになったよぉ~。」と、もう中のモノマネで返してくれる。


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<物語る私>
妻。紀伊の国出身。三姉妹の長女。最近の趣味は、アルゼンチン音楽手帖で紹介されている音楽を端から聴くこと、shufoo!アプリでスーパーのチラシチェック、漫画アプリ徘徊。スタジオの日が近づかないとベースを練習しないので怒られる。得意料理はナスの揚げ浸しとゴーヤチャンプル。転職が決まってドキドキ中。喜怒哀楽がおおげさ。ペンギンマニア。

<じろさん>
夫。東海地方出身。3人兄弟の末っ子。最近の趣味はジャズギターレッスン、フリマアプリでエフェクターチェック、ハライチとかオードリーのラジオ。本人曰くフィジカルが大事なので毎日無窮動などでギター練習してる。得意料理はローストビーフ。現在うつ病と戦闘中で、慣らし復職中。研究職。いつもニコニコ優しい。音楽に対しては評価が厳しい。ラッコが好き。私より2歳年下なのでたまに敬語。




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