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縁の不思議(悪い縁?)先生編①

私が今やっている仕事には「先生」がいた。
10歳年上の女性の先生だ。
地域のカルチャースクールでレザークラフト教室に通い始めた。
教え方は優しいが、先生の製作する作品は申し訳ないけど雑。縫い目もガタガタ。しかも毎回遅刻してきて、教室の仲間から「また遅刻!1000円じゃなかったら絶対に教わらないよね」と、陰口を叩かれていた。
1年ほどで通わなくなり、私は自分で勉強し、技術を上げ、毎日作り、やがてネットショップで売り始めると少しずつお客さんが購入してくれる様になった。
数年後に、再び先生に会う機会があり、それ以降、先生と生徒という関係性ではなく、年の離れた友人として食事に行く様になった。仲良くなるにつれ、ビックリする様なエピソードが沢山あった。

先生は、レザークラフトの「先生」なのに、革を大切にしていない。革は折れるとシワになるので、購入するとクルクルと巻いて送られてくる。先生はその革を持ち歩く時、信じられない事に、大きな革を大きなカバンにぎゅうぎゅうに詰め込んでいた。しかもファスナーを閉めたいらしく、折れ曲がり、詰め込まれた革はシワシワだ。
その光景に唖然とした。そのシワシワの革で作ったシワシワの長財布を私に自慢げに見せた。
革に敬意が無いのか…。先生にとって革はお金を稼ぐ道具でしかない。

ある日、久しぶりにレザークラフトの教室に先生の助手として足を運んだ。初心者の生徒さんがお財布のファスナーの付け方に苦戦していた。これにはコツがある。
そのコツは、先生に教わったのではなく、いつもレザー用品を購入している店長に教えてもらった。
そのノウハウを教えていたのが気に食わなかったのか、教室終了後の雑談で、その生徒さんが私が製作したバッグを褒めてくださっていた時に、「でもココが曲がっているよね」っと言い出した。そこは取っ手の部分で革を丸くすると曲がっている様に見えただけで、実際には曲がっていない。
私はまた唖然とした。
これは妬みなんだろうか??

先生もネットショップをやっているが、シワシワの長財布は売れていない。型紙がまがっているのか、お財布自体が曲がっている。普通は染色する場合、色を塗ってから縫うが、先生は縫ってから塗る。だから、白い糸がまだらに染まる。
売れるはずもない。
だが、「売れない!なんで、どうやってるの?なんで売れるの?」と、連日電話がかかってくる。
だけど、10歳も上の先生に「雑だからだよ!」とは言えない。
「私、レザーだけで生きていきたいんだよね!だからどうしても売れたいの!」
先生はレザークラフトだけでは生活出来ず、バイトしている。本当にレザーが好きならバイトが終わってからでも時間を惜しんで製作するばず。
だけど先生は「やろうと思ったんだけど〜寝ちゃった〜」っと。もはや唖然を通り越して、愛すべきキャラクターにさえ見えてきたw。

つづく

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