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5年間の眠りからさめたマグカップが感じた時代の変化と私の仕事


このマグカップは妻が2016年にANAの飛行機に乗った時、たまたま機内販売で売っていたもので、私が好きそうなデザインだと思って、買ってくれたものです。ANAとKinto (atelier tete)のコラボ商品ということですが、今は入手できないレアなアイテムになっています。

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カップはコースターとセットになっています。楓の木から作られたそのコースターには、世界地図が描かれています。世界地図は小学生の頃から大好きだったので、このコースターはとても気にいりました。

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実はこれ、ずっと使わずにしまってあったのを、コロナ禍のステイホーム中に妻が思い出して、出してくれたものです。5年間も眠っていたのですが、この5年の間、世界はとんでもない振り幅で大きく変わっていました。

2020年の初頭から中国で発生したコロナがあれよあれよという間に世界中に広がり、世界的なパンデミックになり、未だ世界中で大変な状況になっています。この変化は世界の歴史を大きく変える出来事として記録されることでしょう。

海外渡航が制限され、多くの国のビジネスが感染の影響を受けて経済が落ち込み、観光産業や、航空業界は打撃を受け、デリバリーやEコマースやZOOMなどのステイホーム需要が増えました。仕事のやり方も、在宅勤務がスタンダードとなり、これまで長い間あたりまえだと思っていた、会社のあり方、組織のあり方、会議の仕方などが一気に変わりました。学校での勉強の仕方も、家庭での生活の仕方もすっかり変わりました。

これは、グローバルな変化で、世界中、どこの国でも、言語や文化、宗教や政治的な考え方を超えて、人類が共通に受け入れざるを得なかった変化です。どんなにお金を持っている資産家でも、どんなに貧しい人々でも、共通してこの困難に身を任せざるを得ませんでした。

この5年の間にあった世界的な変化といえば、アメリカのドナルド・トランプが2016年の大統領選挙を経て、2017年1月から2021年1月まで合衆国大統領を務め、その後、バイデン政権が誕生しました。合衆国連邦議会議事堂襲撃事件なども起こりました。

英国では、2016年の国民投票でEU離脱を選択。何度か延期されましたが、2020年に正式に離脱、2020年12月末をもって、移行期間が終了しました。香港は中国化が進み、ミャンマーはクーデター後大変な混乱に陥っています。

日本は2019年5月1日、平成から令和に変わっていました。2012年から続いていた第2次安倍政権は2020年9月に菅政権に移行しました。2020年に予定されていた東京五輪は、2021年に延期されました。

SDGsという言葉や、ESG経営 (Environment, Society, Governance)、「脱炭素社会」、「ダイバーシティ」、「インクルージョン」、「アニマルウェルフェア」、「DX」という言葉が一般化しました。

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天文的に言うと、2020年の12月22日に木星と土星が20年ぶりに会合するグレート・コンジャンクションが起き、さらに、200年ほど続いた「土の時代」から、「風の時代」に変わったと言われています。知性、情報共有、個性、自由などがキーワードとなり、これまでのルールが変わるということです。この5年間のとくに後半の時代の流れを見ていくと、これも事実のように思えてきます。

私は、2016年から東京の海外向け広告代理店のシンガポール現地法人の責任者として、当地で仕事を始めていて、インドの現地法人立ち上げのためにほぼ毎月インドに出張したり、東京の役員会のために二ヶ月に一回くらいは出張していました。2020年1月、そのシンガポールの現地法人が、撤退するというので、私はその会社を退職し、自分の会社をシンガポールで登記することにしました。その時は、コロナで世界がこんな状況になるとは全く想像だにしていませんでした。

自分で会社を始めた途端に、コロナとなり、シンガポールもサーキット・ブレーカーとなり、しばらくは飲食店や、商業設備、映画館、プール、ジム、展示会場などは軒並み閉鎖されることになります。決まっていた仕事も、すべて無期延期になり、先の見えない日々が始まりました。

それまで、ほぼ毎月一回は乗っていた飛行機も乗れなくなり、シンガポールのそれも家の周辺に留まるという毎日になりました。運動不足解消のために、近所のウォーキングはほぼ毎日行うようになりましたが、一つの国にこんなに長いこと滞在するというのは何十年ぶりかの経験でした。

このカップのデザインは、飛行機の窓から見える雲海の上を飛行機が飛んでいるのが描かれています。この薄い空色がなんともいえない味わいのある色で、コーヒーや紅茶が一層美味しくなる気がします。

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じつは、2020年の1月にシンガポールで登記した会社の名前は、Wings2Flyというものでした。「ウィングズ・トゥー・フライ」、つまり飛ぶための翼です。たとえクライアントがあまりよく知らない場所でも、クライアントの代わりに私が翼になって海外のマーケティングを行います、という思いが込められていました。ちなみに「翼をください」という赤い鳥というフォークグループの曲がありますが、これの英語曲名は「Wings To Fly」でした。かのスーザン・ボイルなどもカバーしています。

そして、コーポレートカラーを、ターコイズ・ブルーにしました。海を越えて、国境を越えていくというイメージでした。全くの偶然ですが、このカップの飛行機のデザインといい、色といい、なんか2020年に自分が作る会社を予言していたかのようです。

私は、東京の麹町にあった広告代理店に勤め出した時から、日本企業の海外向けの広告や販促の仕事をしていました。英語や様々な言語の広告を作ったり、カタログを作ったりしていました。撮影や、打ち合わせなどで海外出張することも多くありました。

コロナでこんな状況になってしまいましたが、今年になってからも、インド向けのビジネスマン向けのデジタル広告や、ビジネス雑誌のオンラインサイトを使っての記事広告(アドバトリアル)などの仕事をしたり、バングラデシュの独立記念日に、バングラデシュの英字紙を使って新聞広告を出稿したりしました。

渡航はできなくても、広告メディアのブッキングや管理、クリエイティブの制作などは、できてしまいました。バングラデシュ用の広告のクリエイティブの制作は、シンガポールでのホテル隔離期間中にホテルの部屋からクライアントとオンラインで打ち合わせし、シンガポールの制作会社にブリーフィングしていました。その時は、どこにいても、どんな状況であっても、仕向地がどこであっても、適切なネットワークさえあれば仕事はできてしまうんだと我ながら驚いたものです。

ネットワークというのは、インターネットとかの物理的なネットワークもそうですが、何年、何十年の間に積み上げてきた人的ネットワークというのも大きいです。体力とか、感性とか、デジタルの対応力という点では若い人にはかなわないですが、長い時間を使って作ってきたネットワークは、簡単には作ることができず、そういう部分は年寄りのアドバンテージだと思っております。

シンガポールからはアジア各国の広告メディアの手配が比較的簡単にできます。新聞、雑誌、テレビ、屋外看板、デジタルなどいろいろ可能です。アジアだけではなく、主要メディアでしたらオセアニアでも欧米でも可能です。実際に各国に行けるわけではないのですが、ネットワークの地の利を活かして、日本の広告主の皆さん、広告代理店の皆さんにもっとお役にたてるんじゃないかと思っています。日本からやろうとすると難しいのですが、シンガポールだと簡単です。

バングラデシュ用の広告を作った時、バングラデシュの国語であるベンガル語のコピーも入れたいということになりました。テキストはクライアント側で用意してもらったのですが、メールでもらったベンガル語のテキストをイラストレーターのレイアウトに入れて、アウトライン化してみると、文字化けしてしまうということを今回学びました。

プリント広告を入稿する際は高解像度のPDFが普通なのですが、文字はすべてアウトライン化するのがルールです。文字化けする可能性が高いからです。また文字をアウトライン化した場合、PDFでは縦棒が太ってみえてしまうというようなことも過去の経験で知っていたので、そういう知識も役立ちました。

マイクロソフトのソフトでは、ワードでも、パワーポイントでもきちんと表示されるベンガル語のテキストが、アドビのソフトではそのまま貼り付けただけでは、適合性がなく、イラストレーター側で調整する必要がありました。ちょっとヒヤヒヤしましたが、国際都市のシンガポールなので、なんとか対応できました。

3月26日はバングラデシュ独立50周年でしたが、この日にどのような広告が出ていたのかを検証するために、現地から当日の新聞を取り寄せ、日本のクライアントに送りました。こちらがバングラデシュから取り寄せた新聞の一部です。

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また4月には、シンガポール国内でのスチル写真のロケ撮影がありました。日本の会社からの依頼だったのですが、海外からのシンガポールへの渡航は厳しく制限されており、国民か長期ビザ所有者以外は渡航できないので、日本からの出張は不可能でした。

私は前の会社で、スチル写真やムービー撮影のロケ立会いは山ほど経験していたので、現地のスチルカメラマンの手配、ロケ場所の手配、撮影立会いなどを、日本の会社に代わって代行しました。ロケ手配は、食事や、移動などの細々した手配も必要なので、いろいろと大変でしたが、なんとか対応することができました。

シンガポールでは、スチルカメラマンや、ムービーのスタッフなどいろいろとネットワークがありますので、出張ができなくてもリモートで撮影を行うことができます。ムービーなどは編集、録音、テロップ対応なども可能です。CG作業なども対応できますね。

リソースとしてはいろんなことができるので、是非いろいろと活用していただきたいと思っております。

5年間眠っていたマグカップで、ゆっくりと紅茶を飲みながら、いろいろと思いをめぐらせてみました。パンデミックで国際的な渡航は停滞しているのですが、世界のビジネスは決して停滞していないのです。時間が止まっているわけではありません。渡航できない向こう側では、知らず知らずのうちにアフターコロナを目指してビジネスが進展しているのです。

国際ビジネスの現場で、お役にたてたらいいなと思っております。

ちなみにこちらが会社のフェイスブックページです。もしご興味があればご覧になってください。

https://www.facebook.com/wings2fly.co

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