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小説【死時計シリーズ】あとがき

小説【死時計シリーズ】 ご覧いただきありがとうございます Mirror’s LoverS主宰 魅羅緒です。 難解なテーマなのに ファンタジーなので 好みが分かれると思いますが 未読の方は第1話だけでも のぞいてみて下さると嬉しいです。 【死時計シリーズ】は 実は朗読配信が始まりです。 【SHOWROOM】というアプリで 声優くんと組んで5作品 月1回の新作を発表していました。 「夏の夜空に月雫」は ライブハウスの朗読ライブ用に 書き下ろしました。 声優くんの諸事情で継

Epi;6 エピソード・ゼロ【死時計シリーズ】

「おにいちゃん、ねぇ、おに~ちゃ~ん?」 それは、まだ俺が人間だったころの話。藍羅が全寮制の中学校に入学する少し前のことだ。 「っもう、スヌーズ4回目だよ?」 「ん~」 「あ~またネトゲで夜更かし?せめて電源切りなよぅ」 タリラリ~、PCの電源が落ちる。 あれ、セーブ?オートセーブだったっけ? 「ね、おにいちゃんたら!今日は一緒に出掛けるって約束~」 頼むから布団はがさないでくれ、寒っ。 「ふふふ、おにいちゃんの胸元の光、きれいでぬくぬくするよね」 ガバッと、俺は飛び起きた。

Epi;5 10月の雨は終わらない【死時計シリーズ】

~introduction5~ 「シロ様!」 手毬が勢いよく庵に飛び込んできた。 珍しく怒っている。表情が鋭い。 彼がそんな顔をするときは大概、僕の事で何か追い詰められた考えに至っている。多分、あのことだろうと予測はついているが、すでにやらかした後なので、弁明もできない。 手当のあと、庵に直帰したので、『空虚』で後処理をしていた彼とすれ違いになったのも、ここまで怒りが膨らんだ理由だろう。 「すまない」 「シロ様はずるいです。そんな言い方されたら怒れないじゃないですか」 事態

Epi;4 夏の夜空に月雫【死時計シリーズ】

~introduction4~ 『死時計管理委員会』は『空居』という空間に存在している。 『空居』という空間は『天界』と『現界』の狭間にある。双方からは5次元の壁で隔てられているが、輪廻転生過程の魂を受け入れる関係で、重力に捕らわれ、有形の肉体を必要とする区域が多い。 「シロ様も手毬様も、肉の身体は重くはありませんか?」 『死時計管理委員会』は『玉人』と『天人』2人だけで運営しているので、手が足りないときは『回収課』からスタッフを借りることがある。よく手伝いに来てくれる紀綱

Epi;3 カルシウムと僕【死時計シリーズ】

~introduction3~ 「なぁ手毬」 「はい、シロ様」 「最近、やっつけ仕事のように『回収課』案件が増えている気がする」 最近、という表現は『現界』時代の概念の産物である。ここ『天界』では時間に際限がないので、敢えて時間を測る者もいないだろうし、永遠という時間軸の中でどこまでを最近と云わしめるのか、問われたとしても僕自身も明確な答えを持たない。 けれど、云わんとする意味は伝わったらしい。 「それはやむを得ぬのかもしれません。『回収課』の扱う案件がいよいよ50億を越し

Epi;2 桜咲く園薫る【死時計シリーズ】

~introduction2~ 朝露が葉の上で少しずつ集まって、一滴の雫を落とす。彼の歩く姿は、例えるならそんな感じだ。普段なら厳かに気配を運ぶ手毬が、珍しく小走りで大樹の下の庵を訪ねてきた。 「シロ様、その」 「どうした、手毬」 「お休みのところを申し訳ありません。『開く』案件を頼まれてしまいまして」 しばらく心痛む案件が続いたので休んでください、と4時間ほど前、僕を庵に押し込めた張本人が手毬だった。素直に従い深い眠りを貪ろうと、軒先で微笑む霞人に退散いただいたところだっ

Epi;1 スノー・バレンタイン【死時計シリーズ】

~Introduction~ 「おかえりなさいませ、シロ様」 手毬にその名で呼ばれるといつも、心がほころぶのを実感する。それに気づいているのだろう、手毬の表情がほんのりと輝きを増すのが判る。 「今回の介入はいかがでしたか?」 「そうだね、気の毒な境遇とは思ったけれど、これからはこういうケースが増えるのかもしれない」 思ったままを口にすると、手毬の綺麗な眉が外側にかすかにしなった。いつも心配をかけて申し訳ないと思う。僕の思惑を再び読み取ったか、手毬は諭すような上目遣いで僕をじ