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無印良品が海外でも絶大な人気を誇る理由を考えてみた

こんにちは。

長らくnoteから離れていました。コロナの影響でバタバタしていましたが、今日はフィンランドに訪れた時に見つけた無印良品について書いて行きたいと思います。

日本でも洗練されたシンプルな商品で人々を魅了し、絶大な人気を誇る無印良品。フィンランドの首都、ヘルシンキに行った際に「MUJI」の旗艦店(しかもヨーロッパ最大!!!)を見つけたので行ってみました!

フィンランド、ヘルシンキのMUJI

ムーミンの国、フィンランドの首都のヘルシンキにもありました。お馴染みの赤地に白のロゴの無印良品、MUJI。ヘルシンキ中央駅から徒歩5分ほどの抜群のロケーションに位置する、超中心地のKamppi Centerと呼ばれる大きなショッピングモールに入っています。

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そして特筆するべきはその大きさ。広大なショッピングモールの4階、ワンフロア丸々が無印良品になっているんです。ヨーロッパでも、無印良品の世界観はそのまま踏襲されており、食べ物から、ボールペン、ノート、家具、アロマ、美容など何から何まで、シンプルだけど嫌いにならないデザインの商品が販売されていました。

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日本から遠く離れた地で親しみのあるブランドを見かけられるのは安心感があります。しかし、正直アジアならまだしもヨーロッパにも大規模にMUJIが進出していたのは意外でした。そこで今日は、なぜ無印は海外展開に成功し、ここまで海外の人達に愛されているのか。日本の他のブランドとは何が違うのか、について考えてみました。

昨年、東大経済学部で行われている『流通と経営戦略』という授業の中で、無印良品の元会長である松井忠三氏の講演をお聞きする機会がありました。その時のお話の内容も参考にさせて頂きながら今回の記事は執筆しています。

① MUJIはライフスタイルをデザインしている

これは無印良品が海外進出を成功した理由というよりかは、場所を問わずそもそも無印が人々から愛されている理由です。

無印良品の一番の特徴は、私達のライフスタイルをトータルコーディネートしてくれている事ではないでしょうか。

無印に行けば、毎日使う寝具や食材、キッチン用品から、生活の質を上げてくれる加湿器をはじめとする生活雑貨、旅行グッズまで生活に必要なものが全部手に入ります。無印で買ったレトルト食品で朝ごはんを済まし、無印で買ったノートで授業に行き、無印で買ったキッチン用具で晩御飯を作り、無印で買った便利グッズで部屋を片付け、無印で買った布団で寝る。

これはただの小売店とは一線を画しているのではないでしょうか。

地元のスーパーで売ってる食材やキッチン用品、またダイソーで売られている筆記用具とは一味違うシンプルさと使い勝手の良さ。その世界観とブランドこそが人を惹きつけているのです。

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ライフスタイルから変えるという意味で無印と共通しているのがAppleでしょう。今、我々の多くはiPhoneを毎日の連絡やエンタメのツールとして使い、仕事や授業はMacを広げて生産性を上げ、Apple watchを腕につけてジョギングにいきます。そして、各デバイスから得られた私達の嗜好や日常生活のデータはiCloud上で同期され、私たちの生活をさらに便利にさせてくれています。Appleは今やスマートフォンハードウェアの製造会社としての域を超えて我々のライフスタイルを根底から支えています。

これと同じように、無印良品もそこに行けば、食材も生産性向上のツールも、実用的なものも、QOLを上げてくれるものも何でも揃っています。無印には私達のライフスタイル全体をアップグレードさせてくれる力がある。それが一番大きなMUJIの強みなのかと思います。

少し話が逸れますが、無印が自身のブランドを作りだせる秘訣が、SPA(specialty stores of private label apparel)です。
SPAとは製造小売業のことで、ZARAやユニクロなどアパレル業界から広がった企画・製造から販売まで一括に垂直統合させたハイリスクハイリターンなビジネスモデルのことです。

小売店が商品の流通のみを担当するのではなく、企画から同じ会社が携わるからこそ無印の様な唯一稀有なブランドが生まれるのです。また、中間流通業者を省くことでコストが抑えられ高い利益率で商品を販売することができます。また、顧客のニーズに合わせて生産を調整することも簡単になります。
ただ、このビジネスモデルは企画・製造のノウハウや技術を身につけるために投資する必要がある上、不良在庫を抱えるリスクも高くなってしまいます。

②ローカライゼーション能力の高さ

無印が海外でも愛される二つ目の理由はローカライゼーション能力の高さでしょう。

『流通と経営戦略』での元良品計画会長の松井氏のお話の中で、Global MUJI, Founded MUJI というキーワードがありました。グローバル展開する際にただ日本で上手くいった商品を日本と同じ方法で売っても上手くいきません。
もしMUJIが海外のどこかで生まれたらどうなっているかを考えるグローバルマインドが不可欠だそうです。

その言葉通り、無印良品は海外に出店する際に「商社より情報を手に入れる」とうたっている様に徹底した現地の情報集めをしています。実際に無印良品の商品を買う人は、そこに住み生活をする完全なる新規顧客です。現地の人々のライフスタイルやニーズを徹底的に調べ、それに合う様に自社製品を改良していくマインドが、無印の成功の第二の理由でしょう。

例をあげると、僕が留学していたスウェーデンでは冬は非常に昼が短いです。1月ごろは朝の10時ぐらいに日が昇り、夕方の4時頃には真っ暗になります。太陽の光を浴びれず、冬になると鬱になる人が多いスウェーデンでは、長い夜の気分転換のためのアロマキャンドルが愛用されています。それに合わせ、ストックホルムのMUJIの店頭には、日本では見たこともなかった色とりどりに可愛く彩られたアロマキャンドルが冬の間は並んでいます。また、一人一人の家が広く一人部屋でも大きなベッドを使うという中東にMUJIが進出した際は、日本では売っていないキングサイズのベッドを開発したそうです。

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しかし、僕個人の意見では、MUJIはローカライゼーションだけではなく、ローカライゼーションとスタンダライゼーションの絶妙なバランスの取り方がうまいと思います。

現地に合わせた商品開発をしつつも、無印良品のシンプルでありつつ使いやすい、といったコアとなる世界観と価値は世界中どこにいっても崩れません。

また、無印良品の商品から感じられる独特の日本「らしさ」こそが海外にまっすぐ発信され、人気になっている様に僕は感じます。私達は、「外国人の好きな日本=アニメや漫画」と考えがちです。もちろん、アニメや漫画も海外に熱狂的な支持者がいますが、ヨーロッパ人が普遍的に愛している日本の価値観は違うところにあると思います。日本の禅やミニマリズムといった日本の伝統的な文化から生まれる日本人の精神性が、ヨーロッパでは高く評価されているのではないでしょうか。多くを求めすぎず、しかし使う相手には便利な「おもてなし」を提供しようという日本人の伝統的な粋とも言える精神が、無印の商品にも根付いている様に感じますし、それが人気の秘密なのかもしれません。

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上の写真は、フィンランドのMUJIの一角です。積極的に日本を押し出しているわけではありませんが、日本「らしさ」が伝わるコンセプトが感じられませんか?この様な積極的に語らないちょっとした日本「らしさ」が、海外で愛され私たちが過小評価しているものであり、ローカライズさせずに発信していくべき部分かもしれません。

③徹底した世界観の共有

無印の海外展開の成功の3つ目の理由は、徹底した世界観の共有です。海外展開する際に、元々のプロダクトのコアとなる世界観や文化をちゃんと伝えるのは、簡単そうに見えて思っている以上に難しいです。

上に述べた様に、海外で売り上げを伸ばすために地元に合わせて商品を改良していく過程の中で、知らず知らずのうちにプロダクトの世界観が失われているかもしれない。また、日本では当たり前だと思われていた価値観が海外では当たり前ではないかもしれません。

そこで、無印良品が世界観を伝えるためにやっていることの一つが、MUJIGRAMです。

MUJIGRAMとは、無印良品方式のマニュアルのことです。ただ普通のマニュアルと違うのは、ヴィジュアルメインの圧倒的にわかりやすいマニュアルであることと、棚の奥にしまわれてないことです。接客から店舗設計に到るまで全員が参照できるが明示されています。

「型破り」と「型なし」は違う。松井氏のお話の中で、一番印象に残った言葉です。しっかりした型無くして、型破りな新しいことは生まれてこない、というのです。

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また、無印の出店方法にも特徴があります。無印は、「少なく、大きく」出店しているのが特徴でしょう。首都などに一等地に、5.6店舗だすのではなく、一つの大きいお店を出店する。1店舗当たりの床面積が十分に大きくないとライフスタイルをトータルコーディネートできるほどの品揃えができません。また、旗艦店の様な大きいお店を開けることで、MUJIのブランドとしてのインパクトが大きくなります。

そしてMUJIが直営店にこだわり、現地パートナシップを行わないのも、徹底的に世界観を伝えることを主眼に置いたものでしょう。

さいごに

今回は、僕も愛用する無印良品が海外でも愛される理由について考えてみました。

"いいもの"をただ置けば商品は売れるわけではありません。どんなにいいものを作れても、やはりそれをいかに売り込むか、いかにマーケティングするかが大事になってくるんですね。(海外展開する時は特に)

また、無印が日本「らしさ」を取り込んでいるのではないか、ということも書きました。人口減少が進み、GDPの減少に伴う経済的プレゼンスはどうしても下がっていく日本において、いかに日本の文化的側面、日本「らしさ」を価値にできるかが、重要なのではないかと思っています。

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ちなみにこの記事の随所に挟んだ可愛らしい画像は、ヘルシンキの無印良品の売り場の一角にあった「Small Muji」というコーナーで撮った写真たちです。ヘルシンキのMUJIのオープンに即して作られた、MUJIの商品を使った可愛らしいミニチュアたちです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

Tsubasa

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