虜になる循環の生理学⑥循環作動薬
最後の章になります。輸液や輸血以外の、いわゆる点滴薬を使った循環管理手法になります(本書でも、本項でも、内服薬については扱いません。とくにICUでは点滴薬が基本だからです)。
抗不整脈薬はすでに述べた記事が割り切りが良いのでそちらを参照ください!まず、本項で登場する薬剤グループを紹介しました。
循環管理において、心拍出量の調整が大切なことは繰り返し述べてきました。そしてその心拍出量(CO)は、
CO = HR(心拍数)× SV(一回拍出量)
でした。
まず、HR(心拍数)の調整について。不整脈薬への割り切り(ぶっちゃけ)具合でいうと、僕の記事の方が初心者向けで分かりやすいと思いますので、そちらも参照していただければと思います(一番下に2つの記事へのリンクを貼り付けておきました!)。
次に、SV(一回拍出量)を規定するのは、
① 前負荷
② 心収縮能
③ 後負荷
でしたね。簡単な順に見ていきましょう。
③の後負荷は収縮期血圧と考えると、血管収縮薬で上昇し、血管拡張薬で低下するのは分かると思います。血圧は循環でもっとも大事な要素でした(組織灌流)が、高すぎても心臓はパンクしてしまうので、高すぎず、低すぎずに調整しましょう。血管収縮薬の代表はノルアドレナリン(とバソプレシン)です。血管拡張薬の代表はニカルジピンやニトログリセリンです。本書では、動脈拡張薬としてニカルジピン、静脈拡張薬としてニトログリセリン(とカルペリチド)が紹介されていますが、厳密な使い分けはここでは述べません。慣れているものを使いましょう。
②の心収縮能は、強心薬でサポートすることができます。⑴なんらかの原因で心機能が低下してしまった場合、あるいは⑵もともと心臓が悪すぎて、重症疾患(全身が酸素需要を高めている状況)に見合うだけの余裕がないときに検討しましょう。不整脈リスクが高まるので、できるだけ低流量で注意しましょう。覚えておくべきはドブタミンとミルリノンです。
③の前負荷は、一番難しい項目でした。前負荷を増やすのは輸液でしたね。過剰輸液に注意しましょう。そして、前項でも述べたように前負荷は血管収縮薬(によるstressed volumeへのシフト)でも増やすことができるのでした。本書で最も僕が共感できたのは、「過剰補液にならないよう、少量でも良いから輸液のみに頼らずに血管収縮薬を併用した方が管理しやすいよ」ということです。逆に前負荷過剰によりうっ血が生じている場合(いわゆる心不全)には、逆のことをすれば良いですね。補液の反対といえば、利尿です。血管収縮の逆といえば、血管拡張です。分かりやすく図にまとめてみました(下図)。
利尿薬は点滴ではフロセミド一択です。本書ではカンレノ酸カリウムも紹介されていますが、あくまでもサブと割り切っています。サブという意味ではアセタゾラミドもサブです。つまり利尿薬はフロセミドを使いこなせれば十分です。何を使うか?よりも、むしろ前負荷過剰を見抜いて利尿薬を使うタイミングを見逃さないことの方が大事です。血管拡張薬は既に述べましたが、前負荷を減らすという目的では「静脈」拡張薬のニトログリセリンが好まれるかもしれません。
HR(心拍数)については、基本的に洞調律であれば、必要なHRに自動調整されます。HRが高すぎる(洞頻脈)のは、循環が不安定な証です。他の循環動態への因子をひとつずつチェックし介入していくことで落ち着いてくるはずです。問題は、不整脈の時に不適切な脈になってしまうことでしょう。
徐脈性不整脈に対しては基本的にペーシングです(ペーシングについては別項目で)。薬で粘るなら、ドパミンやイソプロテレノールがあります。
頻脈性不整脈については、以下の記事をどうぞ。
さて、だいぶ、本書の記載を端折りました。が、臨床での循環管理において大切だと常々感じていることと、本書の交わるところをあえて強調して連載できたと思います。もちろん深い生理学的なところは本書で確認してみてください!
この①〜⑥の連載で、頭の中が整理されたと感じていただければ、本書でさらにステップアップしていただけると思います。
また、すでに本書をお持ちの読者で、「まずざっくり理解できなくて困ってたんだよな」という方がいらっしゃれば、本連載を頭に入れてから改めて本書に挑戦していただければ、「サクサク読み進められる」と確信しています。循環については、いったんこの連載でお休みにしようと思います!!リクエストなどあればドシドシ連絡ください!ここまでおつかれさまでした!
具体的な輸液のプランを立てるのに役立つ輸液反応性(輸液を優先すべきかの判断に使う)の評価、そのために役立つ臨床デバイスの活用法が勉強したい方はこちらで分かりやすく学べます!具体的な戦略について学びたい方はこちらもどうぞ!
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