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ソムリエの頭の中-2021年7月SAKEラインナップのセレクト編-

お酒のリストにはソムリエの意図がふんだんに込められています。それを今回5つほど御紹介いたします。

北仙台『和酒バル 二喬/NIKYO』のSAKEラインナップ(1グラスにてサーヴ)の大前提として

①宮城県の新澤醸造店さんと長野県の小布施ワイナリーさんのアイテムを必ずオンリストする

②ワイングラスを用いるのを基本とする

③Barスタイルのお酒がメインの飲食店である

これらを挙げておきます。




1.DATE SEVENまでの道のり

宮城県の、地酒ブランドとしても既に知名度も高かった7つの酒蔵が、更なる酒造技術向上と時代を見据えた情報発信プロジェクトとしてユニットを組んで年に一度だけ共同で醸造してSAKEを限定リリースする「DATE SEVEN」。2015年にスタートしたその取り組みは今年2021年で一巡する事で最終章を迎えました。地元であります宮城県仙台市の飲食店では「DATE SEVEN」の盛り上がりは年々すざましいものがありまして、個人的に今年のその時をどのように迎えようか昨年から考えていました。今までリリースされました7作(実は密かにオレンジ色のアディショナルアイテムが過去にも存在しましたけどもメインストリームとしてカウントされていないので五年前に早々にサーヴし切ってしまいました)は全て冷蔵管理にて熟成させていましたので、2021年7月7日に一堂に会させて開栓オープンする事は可能だったのですけども、御時勢を鑑みて御客様が一堂に会するのが時期的に難しいだろうという予想と、実は2015年のファーストリリースの時点で次作を担当するホスト蔵の「伯楽星」「あたごのまつ」醸造元の新澤醸造店・新澤巌夫さんに

ウチは全くスペックを変える

とお聞きしていましたので、ソムリエ的判断でいわゆる垂直テイスティング(同じアイテムを醸造年度別で飲む)が意味を成さないと思いまして当時から7作を一堂に会させるつもりがありませんでした。ところが、たまたま、正に偶々、2018年にそれまでの過去のアイテムが状態良く仕入れる事が可能だったので、せっかくなのであと三年間は全て冷蔵管理しようとするか、と相成りました。それでも、一堂に会させるのはロマンがありつつもソムリエのサービスとしては違和感がありました。

なので、2021年7月までの一か月ずつで過去にリリースされたアイテムを毎月オンリストしていく事で、御客様の関心を最終章に向けて高めていこうと思い当たりました。御陰様で過去の作品をお楽しみくださる御客様も多くいらっしゃいました、、、けれども宮城県仙台市青葉区の酒類取り扱いの飲食店に対して度々営業時間短縮要請が発令されてしまいまして思い描いたようには行かず、人生の難しさを痛感する機会ともなりました。

最終章のボトルはとても素敵なデザインになっていましたので、それと映える和菓子を御用意しまして、一緒にサーヴする事で御客様に素敵なフォトを撮っていただくのをサービスしました。

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2.夏酒の季節

業界の営為と活動で、2000年代前半に登場してすっかりジャンルとして確立しました夏酒も、そろそろ「功」「罪」を大小なりに精査する事も必要な時代になってくる気がしてはいます・・・。

さて、夏酒に関しましては福岡県「三井の事」の一択でした。偏愛しております。幾つかの蔵元さん達からは夏にごり的なコンセプトのアイテムはリリースされていますけども、そこに加えて高リンゴ酸生成酵母で仕込んだ「三井の寿」はシンプルに魅力に溢れています。話が前後しますけども、にごり酒というのは、どことなく俳句の夏の季語であります甘酒をイメージさせてくれまして、古来より人間がそれを夏に嗜む事で嗜好性と機能性を兼ねていたのだろうと、思いを巡らせる上でとても美しいのです。またラベルがメタリックグリーンなセミでキャッチ-です。素晴らしいアイテムだと思っています。

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また、夏酒と謳わなくても、夏酒テイストないわゆる辛口のアイテムを用意していました。一つはにごりの辛口である新潟県「山城屋」、もう一つは生原酒の辛口「富久長 新橋の男達の酒」です。SAKEをスッキリと楽しみたい御仁にお奨めです。


3.ラグジュアリータイム

SAKEにおいて最も歴史があります全国新酒鑑評会の結果発表が5月下旬にありまして、その時期からおおよそ一か月間ほど各酒蔵が技術の粋をもって醸した出品酒、または結果を受けての最高賞である金賞受賞酒などが続々とリリースされます。SAKEの品質上の一つの頂点ですので、より多くの方々におかれましてはSAKEの技術ひいては歴史を体感するのに最も近道なツールだと思っていますので是非ゼヒお楽しみいただきたいところであります。品質としましても、私見ではありますけどもピュアな品質をそのまま体感するには早めの方が良い俊敏性が要されるアイテムです。持久力はあまり求められていません。何故ならその鑑評会の審査の際にピークを設定して醸造されていますから。もちろん熟成させても、高品質なSAKEには間違いありませんから良いです。その際は冒険には付き物のリスクとロマンをお楽しみくださいませ。当店では、八年連続金賞受賞の栄誉に輝いた「文佳人」を御用意しています。

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さて、ここからは正に裏側のトークです。

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