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WSET Level3 | 効率よく対策する勉強方法

先日、WSET Level3試験にDistinctionで合格しました。筆者はJSAワインエキスパートを持っていましたが、この試験を通じて、ワインに対する理解が大きく深まり、やってよかったと感じています。

WSET Level3では、ワインの特徴が、どのような人的・自然的要因によるものかを体系的に学ぶことが出来ました。テクニカルシートを見た際に、味わいの予想が立てやすくなり、ワイン選びにも非常に役立っています。ソムリエ資格を持つ人などにもオススメしたい試験です。

試験勉強も面白いのですが、試験範囲が広く、結構苦労しました。試行錯誤しながらも、最終的には上手く整理して対応することが出来たと思うので、その時の対策方法を残しておこうと思います。今後の受験者の参考になれば幸いです。

ちなみに、WSET Level2資格は持っておらず、今回が初めてのWSET試験でした。

WSET Level3:試験対策の手順

そもそもですが、WSET Level3は、講義と試験がセットになっています。認定スクールで全16回の講義を受け、その後試験に臨む形式です。よって、最も基本的な勉強は、「講義を受講すること」になります。

受講時に最も大切なのは、事前にどんな問題が出るかを把握し、それを意識して話を聞くことです。 漠然と授業を聞いていても理解は深まりますが、試験でアウトプット出来るかは別問題です。後で説明するために聞いた話は定着力が変わってきます。

さらに、どんな問題が出るかを知っておくと、逆に「出ないポイント」もわかるようにもなります。試験範囲は多岐にわたるので、集中すべきポイントを見極めるのにも役立ちます。

よって、試験対策は以下のステップで進めるのがオススメです。

オススメの試験対策手順


  1. 試験内容と注意すべきポイントの把握

  2. 講義の受講(全16回)※任意で予習、復習

  3. 試験対策(主に記述問題とティスティング)


今回は主に「1」の概略について解説します。

WSET Level3:試験範囲

WSET Level3試験は、記述式の問題が中心になっています。覚えることの量は多くないのですが、重要産地や用語について、記述式でイチから説明出来るレベルの理解度が求められます。重要産地や用語とは、Specification(試験要項)に記載されている用語の単位です。

WSET Level3 Specification(醸造工程の部分を抜粋)

WSET Level3:試験内容と対策

WSET Level3試験は、以下のセクション(配点)で構成されます。


  1. マークシート問題(50点)

  2. 記述問題(100点)

  3. ティスティング(41点)


1.マークシート問題(50点)の対策

例題:マークシート問題

マークシート問題は、正直かなり簡単です。4択の選択問題が主で、同じ形式のソムリエ試験よりも問題が簡単です。あまりに簡単なので、記述問題の対策さえをしっかりしていれば、自然と解けるようになっているでしょう。高得点を目指す場合は、マークシートにしか出ない問題があるので、個別対策が必要になります。

2.記述問題(100点)の対策

記述問題のイメージ(WSET Level3 スタディーガイドより)
例題:記述問題

記述問題は、配点も難易度も高く、WSET試験の最大の要所です。苦手意識を持つ人も多いのですが、それも無理はありません。正直、WSETの記述問題は質問文がアバウトで、何を書けば加点になるのかが分かりにくいです。「出題者の意図の読み取り」が得意な人でも戸惑うことがあると思いますので、まずは、記述問題を解く上での原則論を知りましょう。以下の記事を御覧ください。

原則論を抑えた後は各論です。

記述問題ので問われるのは、Specification(試験要項)のキーワードです。念入りに対策する人は、全キーワードの回答準備をするらしいのですが、私の胆力では難しかったです。幸い、出題傾向はある程度決まっており、頻出パターンを押さえると、大抵の問題に対応できるようになります

頻出パターン毎に、「解答例」と「勉強方法」をまとめた記事を9本作成しましたので、以下のリンクの記事をご覧ください。

記述問題の頻出パターン

3.ティスティング試験(41点)の対策

ティスティング試験で供出されるワインは赤、白の2種です。スパークリングワインや、酒精強化ワインは出題されませんが、甘口ワインは出題されることがあります。出題されたワインを実際にティスティングし、主に「香り」と、「味覚」を回答します。

「香り」について

「香り」の得点の大半を占めるのは、「香りの特徴」のコメントです。加点式で5点が上限となっており、よく使われるSATのワイン語彙を抑えておけば、取りこぼすことはほとんどありません。

WSET レベル 3 系統的テースティング・アプローチシートより

「香りの特徴」は、ワインの個性を表す大切な要素ですが、試験対策上はある程度割り切ることも重要です。例えば、「サンセール」に特徴的な「エルダーフラワー」の香りを正確に取れなくても、果実の熟度感を正しく表現するだけでも、十分満点を獲得することができます。

例えば、「サンセール」のような比較的シンプルなワインでも、オーソドックスな果実の表現だけで満点が取れます。

【参考例】「サンセール」の香りの特徴(最大5つまで加点)
リンゴ、セイヨウスグリ、洋梨、グレープフルーツ、レモン、芝、アスパラガス、黒スグリの葉、エルダーフラワー、火打石

さらに、減点式ではないので、上の例に「ライム」を書いても減点されることはありません。可能性のある用語を数多く挙げることが有効です。

また、樽を使用したワインであれば、樽関連の用語でも得点が取りやすくなります。そのため、試験対策としては、主要な用語を覚えて使えるようになることが大切です。

「味覚」について

反面、「味覚」のコメントは、5段階の「程度」をぴったり当てる必要があります。これは意外とシビアです。例えば、白ワインの酸味が「やや高い」なのか、「高い」なのかは、かなり微妙なラインにあることが多いです。

WSET レベル 3 系統的テースティング・アプローチシートより

さらに難しいことに、味覚の感覚は個人によっても異なります。当たり前のことですが、試験では主観的な評価でなく、客観的にな評価が求められます。
客観的な評価は、スクール講師から学びましょう。
ティスティングの授業では、同じワインを飲んだ講師が、そのワインをどう評したかを確実にメモし、特に「味覚」の程度の感覚を合わせることに注力してください。最初のうちは、自分の感覚的に程度を判断するのではなく、「講師なら、なんと言うだろうか?」と考えるのがコツです。

なお、スクールごとに微妙に評価基準が違ったりするので、ネットの情報等より、通っているスクールの情報を重視した方が良いです。

注意すべき「シンプル」なワイン

出題されるワインの大半は、有名産地の比較的ランクも高いものです。品種特性もしっかり出ており、品種まで想像がつくことも多いです。(試験的には品種を答える必要はありませんが)

しかし、たまに1,000円そこそこの「シンプルなワイン」が出題されるのですが、これが非常に厄介で特別な対策が必須です。

この価格帯のワインは、文字通りシンプルで、捉えどころがありません。ワインが好きな人ほど飲んでいない価格のワインのため、いざ出てくると焦ってしまうものです。また、たまたま好みに合い、高い評価をしてしまうと大事故になります。こういった「妥当」な品質のワインは、上質なワインとは別の評価をする必要があり、それを誤ると大幅に減点されてしまいます。

対策は、地道にシンプルなワインを飲み、「上質なワインと言うにはもの足りない要素を見極める練習」をすることです。シンプルなワインは、文字通り要素が少ないので、初めは美味しいと感じても、もの足りないところが見えるようになります。
具体的には、講義でティスティングしたシンプルなワインを自分で買って、1本丸ごと飲んでみると良いです。手元の講師のコメントのメモを見ながら「もの足りなさ」の感覚を合わせていきましょう。

ちなみに、私の講義で出てきたのは以下のワインです。

サルトーリ ムラーリ バルドリーノ
ノシオ・テッレ・デル・ノーチェ・ピノ・グリージョ

なお、WSET的に「シンプル」なワインとされるものは、スーパーで売っている「コノスル」や「アルパカ」のことではありません。あれらのワインはオークチップなどで複雑味を加えられており、シンプルとはいえないケースが多いので注意してください。

WSET Level3試験の合格点数

試験の合格点は、最低でも得点率55%以上です。それ以上の得点率を出せると、以下表の通りPassの等級が上がります。

記述とティスティング、どちらもそれぞれのグレードに達している必要があります。記述で90%取っても、ティスティングで54%だと不合格になります。合格するための勉強は、どの成績を目指す場合でも変わりなく、やりこみの差がグレードになってくると思います。

この記事のまとめ

ずいぶん長くなったので、最後に記事のポイントをまとめます。


  • 事前に出る問題を知り、それを意識して講義を受ける事が重要

  • 最重要の記述試験の対策は、頻出パターンで押さえる

  • ティスティングは、「味覚」を意識して講師と感覚を合わせる事が重要


次回以降は、主に「記述試験対策」について記事にしていきたいと思います。気になる方は、フォローして更新をお待ちいただければ幸いです。

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