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WSET Level3:記述問題対策③(産地と自然要因)

今回は、記述問題のうち、「産地と自然要因」に関する、頻出問題の解き方と対策方法についてまとめます。自然要因に関する問題は、殆どが具体的な生産地域に関連して出題されます。

テキストには、自然要因の章(5.栽培環境、6.ブドウ畑の管理)もあるのですが、そこをやり込むだけでは不十分です。自然要因の章で原則を抑えた上で、生産地の章でその原則がどのように作用するかをまとめていきましょう。

以降、代表的な2パターンの問題と、対策方法をまとめていきます。

「産地と自然要因」に関する記述問題の出題パターン

パターン1.自然要因とスタイル

アルザス地方における主な自然要因を描写し、ワインのスタイルにどのような影響を与えるか説明せよ。

解答例

まず、問題文について解説します。「ワインのスタイル」についての解答を求められています。一般的には曖昧な指定に見えますが、WSET的には特別な意味があります。WSET試験で「スタイル」について記述する際は、ティスティングで評価する項目に絡めた描写を行います。

例えば、以下のような項目です。

  • ワインの種類(赤、白、スパークリング)

  • 甘み(辛口、オフドライ、半辛口、半甘口、甘口、極甘口)

  • 酸味(低い、やや低い、中程度、やや高い、高い)

  • タンニン(少ない、やや少ない、普通、やや高い、高い)

  • アルコール(弱い、中程度、強い)

  • ボディ(ライト、ミディアム-、ミディアム、ミディアム+フル)

  • 風味の強さ(弱い、やや弱い、中程度、やや強い、強い)

  • 後味の長さ(短い、やや短い、中程度、やや長い、長い)

解答は、原因(自然要因)と結果(スタイル)の構造で行います。今回は表形式なので失敗しずらいと思いますが、フリー記述でも原因と結果の構造を意識します。

解答内容のほとんどはアルザスの章に記載されている、「原因と結果」をまとめたものです。自然要因の章(5.栽培環境、6.ブドウ畑の管理)の記載でも、アルザス地方に当てはまるものは加点されます。(例えば、アルザス地方が高緯度であることに触れても得点になる可能性は高いです。)

配点は7~8点程度になるので、これほどの量の解答をする必要はないのですが、点数になりうるものは、時間が許す限り書くようにしましょう。(最後のライン川沿いの畑に関する記載は冗長かもしれません。)

例題はかなりオープンクエスチョンですが、実際の試験では、数の指定や、書いてほしい内容のヒントがあることも多いです。ヒントがないこのパターンが一番難しいのですが、これに慣れていれば、どのパターンが来ても対処できるようになります。

パターン2.自然要因と人的対応

アルザス地方は冷涼から温和な気候である。この地方で想定されるリスクを2つ特定し、栽培者がどのようにその問題に対処するかを説明しなさい。

解答例

  • 果実が十分に熟さないリスクがある。

  • そのため、日照量が多くなる東、または東南向きの斜面に畑を拓く。

  • 地面からの放射熱を得られるように、ブドウ樹を低く仕立てる

  • 霜害のリスクがある。

  • そのため、平地部分ではブドウ樹を高く仕立てる。

  • 霜害の時期に萌芽しない、萌芽の遅いリースリング種を栽培する

こちらの解答は、原因(自然要因)と対処の構造で行います。問われているリスクを挙げ、それに対する対処を記載するのです。

こちらの解答例も、ほとんどアルザスの章の記載から作成していますので、以降の対策方法でまとめを行うことで対策することができます。
リースリングの霜害耐性については、「上質ワイン用のブドウ品種」の項の記載を拾っているので、すこし応用編です。

「産地と自然要因」に関する記述問題の対策方法

解答例と解法は上記の通りですが、解法を上手に使うためには、アウトプットを見越したインプットを行う必要があります。

インプットのまとめ方は単純で、最終的な解答に合わせて、「自然要因×影響・対応×ワインの特徴」の形式でまとめると良いです。

例に「アルザス地方」をまとめるので、解答時の元ネタとして使いやすい形になっているかを確認してください。長いので、さっと上2行のみご覧ください。

【記載例】アルザス地方

(自然要因の①~は、影響・対応の①~に対応しています)

まとめのコツは、綺麗なノートを作ろうとしないことです。このまとめを行う目的は、あくまで記述問題への対策です。知識が記憶に刻まれ、試験ですらすらとアウトプットをできるようになるためにやっているのです。ノートの美しさより、自分に如何に染み込んだかが重要です。

やってみればわかりますが、細かな整合性を気にしだすと、繊細な調整と膨大な労力がかかります。例えば、「渇水が問題になる」ことは、ヴォージュ山が雨陰になることの「影響」ですが、あくまで「自然要因」です。ノートのどちらの項目に書くか迷うかもしれませんが、自分のしっくりくる方に書くのが正解です。筆者は、渇水への対応が書かれていないので、これ以上深掘りができないので「影響」の方に書くことにしました。

テキストは辞典ではないので、各産地ごとに「気温」、「気候」、「降水量」など、細かく要素を分類したデータベースを作成することはおすすめできません。私も一度トライしましたが、「The World Atlas of Wine」を読んでも埋まらない要素が多く、挫折しました。

まとめ用のテンプレート

まとめは、書き直しができるよう、Googleスプレッドシートなどで管理すると良いと思います。(ちょっとした時間でスマホからも確認できますし)テンプレートを共有しますので、使ってみてください。

まとめるべき産地

試験対策が必要な産地は、Specificationの「学習要項2 範囲 1:世界の主要な非発泡性ワインの生産地域 」の部分です。

Specificationに記載の産地の重要度には大きな違いがあります。上のまとめ用のテンプレートに、私の考える重要度を記載したので、参考に御覧ください。重要度S~Aは記述試験で出題される可能性が相当高いものです。Bも十分出る可能性がありますが、効率的ではなくなってきます。確実にDistinctionで受かりたいなら、やってもいいかもしれません。

補足

  • 上記例題は、テキスト記載の例題と、スクール講師の模範解答をベースにしています。

  • 過去の試験問題や採点基準は公表されていません。採点はロンドンの本部で行われ、講師にも明確な基準は開示されていません。よって、上の解答で満点が取れるかを保証することは出来ません。

  • 筆者は、一応Distinctionで合格しているので、解答例はそれなりに正しく、対策リストも妥当なものになっていると思います。

質問、コメントがある方へ

質問、コメント等がありましたら、質問箱に投稿頂ければと思います。どんなご相談でも大歓迎です。

※この記事は、「WSET Level3に効率よく合格する方法」の詳細解説記事です。1つ目の記事で、試験対策の全体像をまとめているので、そちらもあわせて御覧ください。

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