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WSET Level3:記述問題対策⑩(スパークリング・酒精強化)

今回は、「スパークリング・酒精強化」に関する記述問題の解き方と対策方法をまとめます。テキストで約25ページの範囲ですが、4つある大問のうち、まるごと1問はこの範囲から出題されます。その他の3問が、約180ページから出題されることを考えると、結果に繋がりやすいセクションです。しっかり得点源にしてきましょう。

以降、代表的な問題とその対策方法をまとめていきます。

「スパークリング・酒精強化」の出題パターン

「スパークリング・酒精強化」とひとまとめていますが、出題されるワインのカテゴリーは以下の通りです。

  • スパークリングワイン(シャンパーニュ、プロセッコ、アスティ等)

  • シェリー

  • ポート

  • その他の酒精強化ワイン(ラザグレン、ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ)

ワインの生産地域も、製造方法も全く異なりますが、出題パターンはどれも同じです。出題パターンごとに例題を2つ出します。

例題1:醸造工程の描写と比較

発泡性ワインは、辛口から甘口まで様々な甘味レベルを持つ多様なスタイルで造ることが出来る。以下のそれぞれのワインについて、使用される生産方式を挙げ、ワイン醸造者がどのように甘味レベルを管理することが出来るのか説明しなさい。
 ①シャンパーニュ(7点)
 
②アスティDOCG(7点)

解答例

①シャンパーニュ(7点)

・伝統方式で醸造する。
・一次発酵でベースのワインを造る。この際、完全に発酵させ辛口のワインとにする。
・二次発酵を瓶内で行うが、この際も完全に発酵させ辛口のワインにする。
・リクール・デクスペディシオンを加え、甘味レベルの調整を行う。
・リクール・デクスペディシオンはワインと糖の混合物である。
・加える糖の量によって、辛口のブリュット・ナチュールから、甘口のドゥーまでのスタイルを造る事が出来る。
・この工程は、デゴルジュマン後の瓶詰めの段階で行われる。

②アスティDOCG(7点)

・アスティ方式で醸造する。
・加圧された密閉タンクで発酵を行う。発酵時に生じる二酸化炭素がワインに溶け込み、スパークリングワインとなる。
・発酵はアルコール度数が7%、4~5気圧になった時点で、ワインを冷やして発酵を止める。
・ワインは完全に発酵していないので、ブドウ由来の糖が残り、甘口のワインになる。
・糖の添加は行われず、発酵の停止タイミングで甘みレベルを管理する。
・アスティDOCGは、甘口のみを生産できる。(※)
・発酵後はワインを濾過し、酵母を取り除くことで再発酵を防ぎ、甘みレベルを安定させる。

※現在ではアスティ・セッコが存在するため、正確な記載ではない可能性がある。

解説

例題は、2種類のスパークリングワインの醸造に関する問題でした。単純な醸造工程の描写ではなく、対象的な2種類のコントラストを意識して解答する必要がありました。
この問題、実は記述試験対策の1つ目の記事と同じ問題です。やや癖のある質問文ですが、対策方法も書いているので、参考にご覧いただければと思います。

キーワードを入れ替えれば簡単に問題を作ることができるので、ちょっとイメージしてみてください。シャンパーニュとアスティでは、他にも「酵母の自己分解による香り」の違いや、「ブドウ品種」を焦点にした問題も容易に作成出来ます。つまり、重要なのは、各生産方式の醸造工程と、その違いを理解することです。(最後の対策でも触れます。)


例題2:カテゴリのスタイルの説明

オロロソとアモンティリャードは、似た特徴を持つシェリーである。2つのワインのスタイルの違いと、その違いを生む工程を説明せよ

解答例

・オロロソとアモンティリャードは、いずれも酸化熟成を経たシェリーである。
・アモンティリャードは、オロロソでは行われない、フロールによる生物学的熟成を経ており、アーモンド、パン、柑橘、ハーブの香りを持つ。
・アモンティリャードは、ワインが出来た後、15%に酒精強化され、ソレラ・システムの中のフロール下で熟成される。
・その後、再度17%に酒精強化され、酸化熟成用のソレラ・システムの中で酸化熟成される。

解説

例題は、シェリーのカテゴリの中でも類似性の高い、オロロソとアモンティリャードの違いを問う問題でした。スタイルの違いを明確にして、その後に工程の描写を行います。いずれもテキストそのままの記述で問題なく、比較的簡単な問題です。

「スパークリング・酒精強化」の対策方法

WSET試験の出題範囲である「Specification」を確認しましょう。スパークリングと酒精強化の部分は、殆どが醸造工程の関連のキーワードです。

以下、Spesificationより

これらの用語を効率的に抑えるには、テキストのフローチャートのページが役に立ちます。ただフローを眺めていても、それぞれの違いがわかりにくいので、各フローで生じる影響や、他の生産方式と何が違うのかを書き込んでいきましょう。以下に筆者の書き込みを載せておきます。参考にご覧いただければと思います。

【参考】筆者の書き込み

ポートはフローの記載もなく、スタイルごとの違いも分かりづらいです。私がまとめたスタイルごとの違いを共有しますので、参考にご覧ください。

フローについては、ヤマちゃんのワイン資格勉強ノートさんの図が参考になりました。イラストもあり、記憶に残りやすいです。

醸造工程の対策だけで大丈夫?

ここまで、醸造工程を軸に試験対策をしましょう、というお話をして来ました。しかし、Spesificationには自然要因に関する記載や、スパークリングワインの生産地域に関する用語も挙がっています。これをどう対策すべきかを最後に書いておきます。

Spesification記載の自然要因から、生産地域特有の自然要因に関する問題が出ることもあるかもしれませんが、可能性はあまり高くないと考えます。
なぜなら、自然要因からの影響や対応は、スティルワインと大して変わらないからです。わざわざスパークリング・酒精強化の大問を作って出題しているのだから、スティルワインとは大きく異なる醸造工程の方が優先して出題されることでしょう。

よって、対策の優先度は高くはなく、テキストをしっかり読み込むだけで対策は十分だと考えます。スティルワインの時のようにまとめを作ってもいいのですが、テキストの記述がコンパクトなので、整理しないと復習し辛いこともありません。頑張ってやっても、単純に「右から左の書き写し」になってしまうので、テキストを繰り返し読んで覚えたほうが効率的だと思います。

補足

  • 上記例題は、オリジナルのものです。実際の試験や、スクールでの練習問題と講師の模範解答などを参考に筆者が作成しています。

  • WSET試験では、過去の試験問題や、採点基準が公表されていません。採点はロンドンの本部で行われ、講師にも明確な基準は開示されていません。よって、解答例で満点が取れることを保証することは誰にもできません。

  • 筆者は、一応Distinctionで合格しているので、解答例はそれなりに正しく、出題ポイントも妥当なものになっていると思います。

質問、コメントがある方へ

質問、コメント等がありましたら、質問箱に投稿頂ければと思います。どんなご相談でも大歓迎です。

※この記事は、「WSET Level3に効率よく合格する方法」の詳細解説記事です。1つ目の記事で、試験対策の全体像をまとめているので、そちらもあわせて御覧ください。

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