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WSET Level3:記述問題対策⑤(高級銘柄)

今回は、記述問題のうち「高級銘柄」に関する、頻出問題の解き方と対策方法についてまとめます。高級銘柄問題は、WSET Level3の学習範囲のすべての知識を総動員して解く必要があり、最も応用力が試される問題になります。出題頻度も非常に高く、受験経験者に聞くとほとんど必ず1問出題されている問題形式です。

以降、代表的な問題と、その対策方法をまとめていきます。

「高級銘柄」に関する記述問題の出題パターン

例題1:高値の理由

このワインは非常に高値で取引される。それは何故か。

解答例

  • このワインは、フランス・ボルドー地方、AOCマルゴーのクリュ・クラッセ最高等級の「シャトー・マルゴー(2000年ヴィンテージ)」である。★

  • AOCマルゴーであるため、カベルネ・ソーヴィニヨンが主体のブレンドされた赤ワインである★

  • この地域は、温和な海洋性気候であり、このワインの主体となるカベルネ・ソーヴィニヨンの完熟に苦労する。 カベルネ・ソーヴィニヨンの完熟ができる地域は、砂利質土壌に限られており、生産量が少なくなる。マルゴーはそこに当たる。

  • 雨が多い地域のため、病害の対応のために適切な農薬の散布や、キャノピーマネジメントを行う必要があり、コストがかかる。

  • 未熟果や腐敗果のリスクがあるため、それが入らないよう、念入りな選果が必要でコストがかかる。

  • 選果により、ファーストラベルに見合わない粒は取り除かれるため、更に生産量が下がる

  • 新樽による長い熟成を行うため、新樽の購入費用や、樽熟成のためのスペースを要した

  • ヴィンテージから、長期熟成したワインであり、瓶熟成のための保管コストを要した

  • グラン・クリュクラッセ制度の最高等級であるため、人気があり、生産量に対して需要が大きく、取引価格が上がる

解説

非常に長い回答例になりましたが、本番ではここまで書かなくても満点に達するので、時間の節約のため、点数上限分の記載に留めましょう。

ここからは、詳細の解説です。

銘柄問題のセオリーとして、まず最初に「このワインが何であるか」を描写します。今回は具体的な生産者名が入っていますが、AOC(マルゴー)やGIが書ければ十分です。今回はテキストにも記載のある生産者なので、生産者名まで書いています。解答例の★部分は必ず書いてください。その銘柄が何であるかを示さないことには、その理由が書けたことになりません。

銘柄を特定したら、あとは理由を記載していきます。ワインの取引価格が高くなるのは、詰まるところ、「生産自体にコストがかかり、生産量が少なく、その上人気があるため」です。これは、どの地域でもほとんど変わりません。

高級化する要因

  • 生産にコストがかかる(人件費が高い(機械化できない、作業頻度が多いなど)、材料費が高い(新樽、設備投資など))

  • 生産量が少ない(産地が狭い・険しい、天災のリスクがある)

  • 人気がある(有名なAOC)

実際、シャトー・マルゴーはじめとした高級銘柄が高い理由は、99%以上需給バランスの問題ですが、試験的にはそれだけを書けばいいわけではありません。テキストから拾える、価格上昇につながる要因全てをバランスよく挙げましょう。

また、2000年はグレートヴィンテージで、取引価格を大きく引き上げる要因になります。しかし、テキストにヴィンテージと価格の記載がないので、点数になるかはわかりません。確実に点数になる、テキスト記載の要因のみを書くようにしましょう。

例題2:高級銘柄のスタイル

このワインに想定されるスタイルと、品質レベルについて説明せよ。

解答例

  • このワインは、フランス・ボルドー地方、AOCマルゴーのクリュ・クラッセ最高等級の「シャトー・マルゴー(2000年ヴィンテージ)」である。

  • AOCマルゴーであるため、カベルネ・ソーヴィニヨンが主体の赤ワインである

  • 香りの強さはやや強い 、黒スグリ、ブラックベリー、キイチゴ、ブラックチェリー、レッドチェリー、ミント トースト、ナツメグ、クローヴ、スギ、燻製 調理したブラックベリー、土、タール、コーヒー、皮革の香りと風味、発達中のワイン

  • 辛口、酸味は高く、タンニンは多い、アルコールは強く、ミディアム+ボディの発達したワイン。風味は強く、後味は長い。

  • 素晴らしい品質のワイン

解説

銘柄問題の鉄則で、まず最初に、このワインが何であるかを描写します。例題1と同様です。銘柄を特定したら、スタイルについて描写します。

「スタイル」とは、一般的には曖昧な指定に見えますが、WSET的には特別な意味があります。WSET試験で「スタイル」について記述する際は、ティスティングで評価するSATの項目に従って描写を行います。

例えば、以下のような項目です。

  • ワインの種類(赤、白、スパークリング)

  • 甘み(辛口、オフドライ、半辛口、半甘口、甘口、極甘口)

  • 酸味(低い、やや低い、中程度、やや高い、高い)

  • タンニン(少ない、やや少ない、普通、やや高い、高い)

  • アルコール(弱い、中程度、強い)

  • ボディ(ライト、ミディアム-、ミディアム、ミディアム+フル)

  • 風味の強さ(弱い、やや弱い、中程度、やや強い、強い)

  • 後味の長さ(短い、やや短い、中程度、やや長い、長い)

今回の例題ほどの記載量が求められる問題は、実際の試験には出ないと思います。しかし、どこも問われる可能性があり、今回は対策に全量を網羅した例題にしました。実際の試験では、より限定的に「香りと風味の表現について描写せよ」みたいに、限定が入ることが多いです。

「高級銘柄」に関する記述問題の対策方法

解答例と解法は、上記の通りですが、解法を上手に使うためには、アウトプットを見越したインプットを行う必要があります。

前回まで、「産地と自然要因の問題対策のまとめ方について書いてきました。高級銘柄問題も、同じやり方である程度対応はできるのですが、ぶっつけで知識を応用しながら解くことになるので、対応力に自信がある人向けになります。狙われやすい高級銘柄は限られているので、個別の対策を行うことおすすめします。

対策は極めてシンプルで、問われうる銘柄について、事前に解答準備をしておくことです。後に、狙われやすいと思われる銘柄を挙げますが、何個かやれば感覚がつかめるかもしれません。時間見合いでどこまで対策するかを決めると良いと思います。

例に「ボルドー(格付けシャトー)」をまとめるので、解答時の元ネタとして使いやすい形になっているかを確認してください。

【記載例】ボルドー(格付けシャトー)

まとめ用のテンプレート

まとめは、書き直しができるよう、Googleスプレッドシートなどで管理すると良いと思います。(ちょっとした時間でスマホからも確認できますし)テンプレートを共有しますので、使ってみてください。

まとめるべき銘柄

まとめるべき銘柄は、上の「まとめ用のテンプレート」に記載しています。私の見立てでは、ニューワールドのワインが高級化するのは、その産地の良さよりも、生産者個人の畑の良さや、醸造技術によるところが多く、問題が作りにくく、出題される可能性は低いと考えています。

よって、以下のようなオールドワールドの高級銘柄の産地をまとめておくと良いでしょう。

ボルドー
ソーテルヌ
ブルゴーニュGC赤、ブルゴーニュGC白
サヴニエール
コート・ロティ
シャトー・ヌフ・デュ・パプ
ラインガウTBA、ラインガウGG
トカイ・アスー
バローロ
ブルネッロ
リオハリベラ・デル・ドゥエロ
プリオラート

補足

  • 上記例題は、テキスト記載の例題と、スクール講師の模範解答をベースにしています。

  • 過去の試験問題や採点基準は公表されていません。採点はロンドンの本部で行われ、講師にも明確な基準は開示されていません。よって、上の解答で満点が取れるかを保証することは出来ません。

  • 筆者は、一応Distinctionで合格しているので、解答例はそれなりに正しく、対策リストも妥当なものになっていると思います。

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