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ミシュラン一つ星にワインペアリング①

osteriaBACCO×Casamia

新潟市中央区にありますosteriaBACCO(オステリアバッコ)
2020年ミシュランガイド新潟特別版にて一つ星を獲得したイタリアンレストラン。一つ星を獲得したイタリアンは新潟版では2件しかなく、実力、人気ともに新潟を代表するイタリアンレストラン。

シェフの三善将則氏は東京のイタリアレストランで修業を始め、2005年イタリアへ渡り、1つ星レストランで約3年間。2008年に帰国。東京のレストランにてシェフを務めた後、2011年新潟へ帰郷し2011年11月1日新潟市中央区にosteriaBACCOをオープン。シェフのテーマは『シンプル』
新潟の季節の食材とイタリアの食材を使い、その持ち味を生かす料理に仕上げる。


新潟市の一つ星料理にペアリング

そんな三善シェフの料理にペアリングできる機会がやってきた。
今回は店舗の改装中という合間を縫って、ペアリングイベントを引き受けて下さった。
osteriaBACCOは三善シェフの妻である渚氏がソムリエで、ワインのペアリングを担当している。ですので、三善シェフの料理にペアリングできる機会は滅多になく、恐れ多いと同時にプレッシャーもなかなか。


ペアリングコースはワインの波をどうつくるか?

ワインショップの接客で求められる「なになに料理に合うワイン」ってあくまで一品との相性。そこで完結。ところがコース料理となるとメインまでの流れとフィニッシュをどうつくるか?ということが大事になってくる。
一皿完結ではなく、あくまでメインまでの流れが要求される。

メニュー。料理4品にワインペアリング

今回のコースで大事にしたのは各ワインの1杯の量。ペアリングのワインごとに量を変えた。特に最初の白ワインは他のワインの2倍以上の量を提供した。逆に一番少ないのがメイン前のパスタとのペアリングワイン。
メインは割りと多めに。量にメリハリをつけて、ワイン疲れしないように組み立てる。


梅雨入りの憂鬱を吹き飛ばすグレケットでエンジンをかける

一品目はウンブリアのグレケット。
酸がしっかりとしていて、柑橘系のアロマが強め。わずかな青いメロンのニュアンスをズッキーニの青さを合わせつつ豊富な酸で油分を中和。

花ズッキーニのフリット × ディフィリッポ グリケット


梅雨入り直後のジメジメした季節の1杯目ということもあり、提供温度もかなり下げて、グイッっとスッキリしてもらう意図。
油分に対して柑橘系の酸味で中和。フリットとの相性を楽しみつつ、量も多く出して参加者のキタイのエンジンを一気に点火させる。


実はここでウンブリアのワインをチョイスしたのはちょっとした隠れた演出があった。その話は最後に。


馬肉に合わせるワインが今回の難所

今回のペアリングで一番悩んだのが二皿目の赤身主体の馬肉。赤の軽めのワインであわせるか、ロゼのフリッツァンテか、ランブルスコのスティルも捨てがたい。馬肉を購入し想定の料理を試作し、当日の朝まで悩んだ。

赤身が主体の馬肉

熟考の末、選んだのはこちらのワイン。ヴィッラヨブのシリウス。品種はレフォスコ。

ヴィッラヨブはヴェネト州のワイナリー。
ウディネ近郊で造られるレフォスコはレフォスコ・ダル・ペドンコロッソと呼ばれ緑胡椒のスパイスのニュアンスが強い。加えてこのワインはタンニンも少なめで酸が高く軽快な味わい。



ヨモギ科のハーブが個性のヴィッラヨブ


そしてヴィッラヨブのワインに共通して現れるのがユーカリやミントのような爽快なハーブ感。このハーブが選定の決め手だ。

原料ブドウの生産現場は森に囲まれヨモギ科のハーブが群生している。そのハーブが味わいに加わっている。
実はワインの原料ブドウに生産地域の植物の香りがつくことは科学的にも証明されている。オーストラリアのユーカリが有名。ユーカリが植えられている近郊でとれたブドウから造るワインはユーカリのニュアンスがある。


二皿目は馬肉のカルネクルーダ
馬肉に大蒜やケイパー、オリーブオイルでマリネし、平皿にしいてチーズを削りかけた北イタリアの香り漂う一皿。今回はドライトマトのペーストも加わっている。

馬肉のカルネクルーダ × ヴィッラヨブ シリアス

馬肉のカルネクルーダを一口。
荒目の黒コショウがしっかりと口の中で弾ける。馬肉の赤身肉らしい旨味とケッパーの酸味、そしてドライトマトの旨味。

ワインは軽快さを出すために冷やして提供。
赤ワインの骨格がスリムになり、ヨモギ科植物由来の爽快なハーブ感が強調される。

口の中の黒胡椒とハーブの相性、レフォスコ種由来のコショウのアロマが混じり合う。咀嚼回数が増えるにつれ馬肉の味わいが血液っぽさに変化するが、そこでワインの程よいタンニンが中和する。
再びワインを少し口に入れると、ヨモギ科のハーブで爽快さが戻りリフレッシュされる。

冷やしたのは全体のバランスを整えたのもある。アルコール度数も低めなので、重すぎない。
この後のフィナーレへの準備に抜かりはなく、プリモピアットに続く。



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