見出し画像

カナダの映画館で魔女の宅急便を観た

少し年末の話に戻るのだけど、大晦日、トロントの映画館Revue Cinemaで魔女の宅急便を見た。ジブリの中でも大好きな作品の一つで何度も観ている映画だけれど、初めてスクリーンで観ることが出来た。一緒に行った友人はイタリア系移民のカナディアンで、覚えている限り初めてジブリを観るようだった。

私たちは近所に住んでいるので、同じ停留所でストリートカーに乗り、約1時間ほどコトコト揺られて映画館に向かった。映画は1時からだったのだが、ストリートカーがなかなか進まず、二人で広告がやっているように祈りながら10分ほど遅刻して着いた。入口は決して大きくはない。だけれど奥に広がる映画館は思ったよりもずっと大きく、日本で単館のこじんまりした映画館が好きだった私の好みにピタリとはまった。幸い、映画はまだ始まっておらずキャンペーンの映像が流れている。

ポップコーンなどは買わずに、半分くらい埋まった席を眺めながら前に進む。前の方に真ん中が空いている席を発見して座ると程なくして映画が始まった。今回の魔女の宅急便は、TOON HOLIDAYというキャンペーンの一環で子供が見やすいようにか吹き替え版だった。

ラジオから始まる慣れ親しんだ魔女の宅急便が始まる。程なくしてジジが出てくる。ジジが話し出すと友人は、「I knew it!」と言った。映画館では静かにする文化で育った私はどうしたらいいのかわからず曖昧な笑いだけを返した。カナダ(やその他の地域でジブリがある地域)にお住まいの方はNetflixでぜひ確認してほしいのだけれど、英語版のジジはおじさんだ。

私の後ろには小さな子どもが座っていて、映画のシーンで気になることがあると様々なコメントをしていた。お母さんも静かにと叱ったりはしない。みんな好きな場面で笑い、ジジが近所の白猫と仲良くなる場面では劇場に「Aww」が響く。

トンボがキキに話しかけ、無視される場面で、トンボの友人たちはナンパに失敗しているトンボを笑うのだが、その場面で後ろの子どもはお母さんに「Why are they laughing?」と聞いた。小さな子どもにはナンパに失敗しているという発想がなくて、無視される可哀想なトンボを笑う友達が理解できなかったのだろう。新鮮な気づきだったし、その純粋なままでいてくれたらいいのにと何かしら親のような気持ちになった。

筋も大体のセリフも覚えてしまっているこの映画で、途中何度か私は泣いた。驚いたのは、お父さんがキキとの別れを惜しむ場面で、キキではなくお父さんに感情移入をしていたこと。思えば、13歳のキキよりそのお父さんの方がよっぽど年齢が近いので当たり前といえば当たり前なのだが、自分も年を重ねているんだなと改めて思った。

何度も観ている大好きな映画でこんなに新鮮な気持ちになれるなんて思わなかった。大きなスクリーンとスピーカーそして周りの観客の存在。映画館は本当にいいところだ。帰りのストリートカーで、初めてジブリを見た友人は、とても楽しんでくれたようで、ジブリ全部見なきゃと言いながらIMDbを見たりしていた。楽しんでもらえて本当によかったし、想像以上に自分が楽しんだジブリ鑑賞だった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?