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忍殺トリロジー感想/書籍第三部(2)『死神の帰還』(中)

◇注意◇

現行AoMシリーズからニンジャを読んだ人が、
旧三部作(トリロジー)に戻って色々読んだ感想記事です。
感想の中でAoMのお話もします。

こんばんは、望月もなかです!
雨風で、桜もすっかり散ってしまいました。今年の春はだいぶ駆け足です。時の流れは無情であります。

前回感想はこちら。

◇◇◇

今回読んだのはこちら。

ニンジャスレイヤー第3部 ♯2/死神の帰還(中)

混沌都市ネオサイタマは変化に貪欲な都市である。メガコーポは隆盛のち倒産、サイバネ技術は日進月歩、裏社会の支配者もまた移り変わっていく。ネオサイタマの十年は三世代の興亡に等しいと言われるゆえんである。

【ニュー・メッセンジャー・オブ・パスト・アンド・フューチャー】

青年スーサイドは、ヤモト・コキに負い目がある。かつて高校生だった頃、同級生だった彼女を、己の自暴自棄からニンジャ人生に巻き込んでしまったのだ。ソウカイヤの追手から身を挺してヤモトを逃がそうとしたスーサイドは、力及ばず倒れてしまうのだが……

ついにシマサーエピソードですね!
楽しみにしていました。
【ラスト・ガール・スタンディング】から【サツバツナイト・バイ・ナイト】までの間、スーサイドはどこでどうしていたのか。組織に属さない市井のニンジャから見た支配体制の移り変わりが語られます。

命を吸ってやる!……そして気づく……既に、それを、している。男がショーゴーの手を心臓部に当てているのだ

医療行為としてお触りさせてくるお兄さんは……だめでしょ。

フィルギアさん、最初お会いしたときは(うわっなにこの魔性の男!?怖い!!)という印象が強かったんですけど。AoMのシーズン3~4を経て、徐々に彼へ向ける眼差しが(彼はずっと人を愛し、見守ってきたんだな…)みたいな温かなものに変わってきてるんですよね。
おかげで多少は落ち着いて読むことができていますが、初手でこれを観測した方はいったいどんなご感想を抱かれるのでしょうか。気になります。

ただし彼の人となりを知ったところで「初対面の男の手を取り己のはだけた心臓部に押し当てる」登場シーンは開幕からフルスロットルえっちお兄さんで普通に怖いよね?という思いもある。

こわい。

「俺はどれだけこうしていた?(略)あいつ、無事なのか」「あいつ」フィルギアは笑った。

オッホホホホッホォ〜!!!!!!
※人間は感情の閾値を超えると笑いだすことがあります

自称他称ともに「スーサイド」が馴染んでも、ヤモトさんが関わるときだけは常にショーゴー・マグチの顔になるのめっちゃ良いなと……もちろんすべて幻覚だということはわかっておりますが……

「吸うかい……」フィルギアはショーゴーにタバコを差し出した。

もう嫌だ!  そうやって別のものも吸わせたりしてきたんでしょ!? 誘惑だけで一挙手一投足が構成されてるこの人なんなの!?

やがてスーサイドが切り出す。「アイツどうなった」

ア゛~~~ッ!!!! ずっと、ずっとずーっとヤモトさんの安否を気にして、この男……この男はさぁ!!!! 会わせてあげたいよ……!!(でも【サツバツ・ナイト・バイ・ナイト】の描写的には、どうやら居場所を知りながらも会わずに見守っていただけっぽい? 会えばいいじゃんよおお!!)

「とにかく、お前助けたきっかけはそんなさ。ちょっかいかけちまうんだ、俺……。気になった奴がいるとね。深い意味はないんだよ」

なるほどね。それでマスラダくんも気になっちゃった、と。
必死に今を生きている+何かに抗ってる+誰かのことを大切に想っている+若い子が…お好きなんですね……。今ではもうわかる、あなたの好みが……

なのにAoMで出てきた元カレ(推定)が好みと全然違うタイプだったのがなんとも生々しいですよね。若いころダメな男に引っかかってしまった黒歴史感のようなものがよりいっそう生々しく感じられる……でも得てしてそういう破綻した関係にこそ記憶素子はへばりついているものであり……何の話でしたっけ。

魔法使いのお兄さんの登場だ!
ソウカイヤを抜けてすぐの合流だったんですね。へー。
握手のくだり、初対面でちょっと痛めつけてやろうと思ったら、反撃された能力が己を救ってくれる福音めいたものだったシーンだったので興奮しました。 ヤバいですわ。

「やめとけ」「こっからが本番だろうが……!」「やめ。とけ」二度目の口調は強く厳しかった。アナイアレイターは鼻を鳴らし、鉄条網を引っ込めた。

……!!!

わたくし思わず口に手を当てて起立してしまいましたわ。わたくしとしたことが。はしたないですわ。

「AAAAAAAAAARGH!」「うるッせえいびきだな」「ビョウキさ」ルイナーは低く言った。スーサイドは眉根を寄せる。「ビョウキだ?」「まあな」

つるんでたらまともな安眠すらかなわないような相手と、それでも昼夜ずっと一緒にいるルイナーくんの感情に思いを馳せてしまう。すごくない?

ニンジャになってから初めて普通の寝息を立てて眠る昔馴染み(ですよね、確か)の寝顔を見られて、スーサイドの背にひそやかな感謝の眼差しを向けるルイナーくんはいたと思う。

「うまくやってた店なんだよ」

ニンジャとしてうまくやれなかったこと、数えきれないほどたくさんあったんだろうなぁ…

「外の世界の流れはめまぐるしいんだ。俺はこうして棲家を守るので精一杯……」

棲家って表現もなかなかの重さと意味深さを以下略。

「俺らには関係の無い話……今の俺らには。いつまでもそういってられりゃ気楽だけど……」「関係ねえさ」スーサイドは階段を降りて行った。

この世話焼きさんめ!

彼の根本的な性質が、十年前からAoM時代に至るまで、ず~っと変わっていなかったのだとわかって嬉しいです。
「シトカの顔役」「みんなの兄貴」という今の地位は、天職(?)だったのかもしれませんね。ヤモトさん、いつかシトカに旅行に来てほしいです。『筋』で一緒にピザ食べてくれ…。

サークル・シマナガシの人気っぷりは、第一部を途中で離れた頃にもしばしば夫くんから聞いていましたが、なるほどこれが、なるほどね…とずっと顎をさすっていました。若い男たちが持て余した若いパワーをぶつけ合いながらダラダラとつるんでる集団なんてたまらない層にはあまりにもたまらないですよね、わ、わかる〜…。。


◇ちょっとAoMの話をします◇

それにしても、おそらくここから数年後?
シマナガシから、まず最初にフィルギアが去ったこと、おそらくそれをきっかけに皆が時計の針を進めて正気付いたように大人になっていってしまったの、やはりあくまでこのサークルの中心はフィルギアさんだったのだなと感じ、うわっシマサーの姫、怖……という思いでいっぱいです。
青春の永遠を錯覚させる時の止まった魔性の男、怖っ……。

だから、アナイアレイターさんがこの四人組を「シマナガシ」と名付け、リーダーを名乗っていたとしても、やはりサークル・シマナガシの中心にいたのはフィルギアさんだったのだなとも思いました。【エリミネイト・アナイアレイター】で登場した時から、実情を知らないままに「シマサーの姫」呼ばわりしていましたが、マジでシマサーの姫だったんじゃん……怖…


◆AoMシマサーの話ここまで◆

シトカに限らず、スーサイドさんがずっと世話焼き体質のままなところがわかってよかったです。裏腹な言葉ばかりを口にしながら、どうしたって善きものや護りたいものを見捨てられない。それで外れくじを引いてしまうこともあるけど、そういうところが好き。
今後のエピソードも楽しみです。

◇◇

【レプリカ・ミッシング・リンク】

疎遠だった父との再会以来、ユンコ・スズキの生活は一変した。サイバーゴス・カルチャーに染まった無軌道大学生にはおよそ似合わぬカネモチ生活。高級オイランドロイドは恭しく傅き、高級スシを差し出してくる。
……いつの間に、父はこんなに金持ちになったのだろう。なぜ、自分を呼び寄せたのだろう。ユンコの疑問が父に届くことはなかった。その晩、ニンジャが父を殺し、ユンコは父殺しの冤罪で指名手配犯となったからだ。

表紙に魚類がいるので読みたくないんですけど。

でも噂のユンコちゃんがいるから読みたい……ユンコちゃんには会いたい!

そう思って本を開くと扉絵中央部に魚類がおり、スッと表紙を閉じてしまう。開く。閉じる。開く。閉じる!ユンコちゃんには会いたいが魚類には会いたくないんだ! だってすごく嫌な予感がするもん! そして経験上、この手の予感は……当たる!鹿とか!!

悩んでいたところ、『K2』が全話無料公開されました


一日中『K2』に囚われているもなかさんのイメージ図です

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・そして、10日の時が流れた・・・・


はっ。気がついたら無料公開分を読み終わっていた。
『K2』、なんて面白い漫画なんだ……!!!

さすがに頭も冷えたので、ニンジャに復帰しました。
心機一転、ユンコちゃんに会いに行きます!!

 1

雪のように白い肌、LANケーブルが入り混じったサイバーゴスヘア、お気に入りのサイバネ・アイ。鏡に映るのは無軌道大学生の自分。現実味のない父娘のカネモチ生活だったが、鏡に映る己は本物。そのはずだった…

いきなりお父さんが襲われてピンチに。お約束とはいえそんな!

「違う! 違う! 違う! ファック!」非常ボンボリ灯の明滅が、彼女の焦燥感をさらに煽る。

照明効果をうまく使って文章に緊迫感を出すところ、小説がうまいな~と感心しました。忍殺、こういう表現が本当に上手で勉強になります。

「……ニンジャソウル感知ドスエ」ナムアミダブツ! それは失われしオムラ・インダストリ社の特許技術では!?

そ、そんな。オムラは滅びたはずなのに! ウソだって言ってくれよ!

まあユンコちゃんを守ってくれるならオムラでもいいか…だがしかしオムラの社風を受け入れがたいという気持ちは、どうしても消せない……!

 2

ニンジャに殺された父を弔う事すら許されず、警官に追われながらユンコは逃走する。だが、逃走先に選んだ馴染みのクラブで彼女は、己が既に死んでいることを告げられる。

(((君……は…モーターユンコだ! 大……いな……るオムラの遺産!)))
「インダストリ!」ユンコの全身に、信じ難い力が満ちあふれる!

ヒッ
「インダストリ!」の叫びに本能的な恐怖を感じてしまい、だがしかしユンコちゃんのメカ起動描写はあまりにもクールで格好良いので戸惑う。俺は……俺はオムラを……オムラのことをどう受け止めればよいのか…わからないんだ……!(宙に浮いた手を見つめ、拳をつくる)

ジェットコースターめいて揺さぶられるユンコのUNIX視界には、無数の『重点』ロックオン照準が点滅し、熱光源スキャン、得体の知れないインジケータ群、IRCコマンドログなどが脈打つ。

UNIX視界の描写めちゃくちゃカッケー!
撃破マークといい追尾システムといい助言AIといい、メカへの浪漫がギッチギチに詰められた描写の数々に手に汗握って震えてしまいます! カエルAIってカイル君みたいなやつですよね。

「おのれ……何奴!」とか「そ、そのメンポ……まさか……貴様は!」とか、フジキドを前にしたターボアサシンさんのセリフがいちいち笑えます。ノリがいいね。
 

 3

万事休すかと思われた時、ユンコのニューロンに見知らぬ電波が届いた。次の瞬間、胸の中でモーターが熱く回転し、サイバネ・アイに『戦闘用』の文字が浮かび上がる。ユンコは生身ではなかったのだ! 殺人光線が、ミサイルが、カラテが、クローンヤクザを蹴散らす。だが……!

ユンコのUNIX視界に大写しで飛び込んできたのは、トレンチコートにハンチング帽の男の顔だった。男の両目は殺人マグロめいて暗く深く、喜怒哀楽の哀怒以外が欠落しているかのようだった。

殺人マグロなんて生き物は知らないので(知りたくもないです!)、フジキドさんの深い瞳をそんな意味不明な生き物に例えるのはやめていただけますか? 「喜怒哀楽の怒哀以外が欠落している」という表現がすごくいいです。すごくいいのに……はぁ……。同じ文章でも前半と後半への感情が違うの混乱するから今後は殺人マグロに例えるのマジでやめていただきたいが…

「ウウウウウ……ウマーイ……」

コトブキちゃんがやってたやつだ! なるほどこっちが初出なんですね。

ユンコは訳の解らぬ驚きと、幸運の喜びと、見知らぬ男にスシをめぐまれる恥辱の中にいた。

お、おう。
やはり忍殺における「スシ」、我々の知っているそれに加えて、明らかに「尊厳のメタファー」という機能を有している。

だからネチネチスシ拷問が成立するんですよね。その人に属するべきスシ(=尊厳)を、横取りして目の前で食べる(=凌辱する)という拷問なわけです。本来なら自分自身に属するはずの尊厳を、見知らぬ男の手によってようやく取り戻せているという恥辱…そういう解釈でおおよそ合うかな。

こういう考察をするたび(しばしばタキに頼んでスシとらせてるマスラダくんってつまり……)と考え込んでしまうの、もなかさんの悪い癖です。タキに命を預けてるというメタファーじゃないの?

チューした! ユンコちゃんが! フジキドさんにチューした!!!

マグロのトロ部位には、脳神経をテクノ活性化させる希少な化学成分が含有されているのだ。

は? そんなわけないですが。今そういうのいいから。

色鮮やかなモザイク。ショウギ・ボードの目の如く正確に分割されたモザイク。一枚一枚の色がパラパラと変化する。それぞれのモザイクが四分の一に分割される。(略)徐々に夢の解像度が上がる。

夢の解像度の表現おもしろい!!!!
すごいなーすごいなー。スマホのアルバムをタッチパネルで操作しているかのような映像表現! すごく刺激的です!

「アイ! アイエエエエエエ!」ホームの端では違法乗車を試みて警備員に捕獲された下層労働者が、エレクトリックはりつけトリイにかけられて電流を浴びせられている。コワイ。

エレクトリック磔トリイって何?
(知りたくはない)

「……レールが破壊されれば、孤立した開拓地は全滅するかもしれない。バイオパンダの群れや強盗団に襲われて、実際何度も壊され、失敗し、そのたびに作り直されてきた」

強盗団と並列してはいけない何かがそこに書かれてある! 言っとくけど私はまだバイオパンダのこと認めてませんからね!

「大丈夫、私たちあなたを売り飛ばしたりしないから。たまにハッキングとか……ちょっと非合法なことはするけど……非道行為はしない主義よ。

はい。
まあ非常識なことは常にフルスロットルで行っておりますが……。

 4

ニンジャスレイヤーは、機能停止したユンコにスシを与えて介抱し、ナンシーのもとに連れ来る。ユンコは襲撃者たちの言葉を反芻する。アマクダリの狙いはユンコの父が編み出した「スズキ・マトリクス理論」ではないか? ……では、「スズキ・マトリクス理論」とは一体何なのだろうか?

肉体的前後関係と同列に語られるLAN直結の描写を読むたびに(マスラダとタキの疑似無線LAN直結…)って思いを馳せるのやめたい(〇回目)。

また出てきたシャドウドラゴンもといウィーヴくん、本当になんでこんなところにいるんだろ。アマクダリ向いてないと思うけど。

メカ機構をバリバリに展開しながら上へ下へとダイナミックに移動し、謎の矢印に向かうユンコちゃんの手に汗握る逃亡劇を読みながら、バイクに乗った瞬間ふと、(そういえば表紙にもバイク出てたな…)と出来心でページを戻り、表紙絵を見てみました。

その日 人類は思い出した


……。
まだ魚類が登場してないことに気づいてしまい絶望した。
まだ出てないということは、これから出るということ。AならばB。

『ハイ、そう思いますドスエ』『ゴボボボボ……』水槽の中では、その瞳に知性の光を宿した大マグロが、瞬きしない目でソナーレーダーを見つ

ハ?

今、私は、本をぶん投げたい気持ちと、「本は投げてはいけません」という道徳心のはざまで熱く激しく葛藤しています。

知性が……何だって?  もう一度読むか、読み違いかもしれないし。

『ゴボボボボ……』水槽の中では、その瞳に知性の光を宿した大マグロが、瞬きしな

ア゛?(怒りのド低音)

な~~~~~~~~~~~~にが知性の光を宿した……名詞すら続けたくない! 魚類!! 絶許!!!!!!!!!!!!!!!!

寝る寝るもう寝る! 今日のニンジャは終了でーす!!!!!!


2023ねん 3がつ 20にち →「ふてねする」


<2023年 3月 21日>

おはようございます。
魚類には会いたくないが、続きは気になる。
だがもう二度と魚類には会いたくない。

現実から逃げたくなって、小学館NEOの図鑑『魚』P.166の「マグロ」項目を調べるなどしましたが、特に何の解決にもなりませんでした。スズキ目サバ科だそうです。だからなんだよ。

とりあえず今日は出会いたくない。回遊魚に会いたくない。
目から光が消え、解体を待つだけの状態になっているのであれば受け入れられなくもない……目に知性の光? クソッ何が知性だ!!!!!うるせえ!!!今日は貴様には会いに行かない!!!!!

昨年末から遅々として読み進められずにいたこの本の出番だ!!
出でよ! 日本三大推理奇書! 『ドグラ・マグラ』!!

ずっと積んでた全集なんですけど、さすがに崩したくて2022年12月くらいからゆっくりと読んでいました。が、奇書と名高いその難解さや奇矯さ、ネオサイタマ並に目まぐるしく提示される参考資料が移り変わっていく異常さによって中々読み進められずにいたのです。

回遊魚vs奇書、奇書の勝ち。

(5日後)

……読み終わっちゃった………。

はぁ。仕方ない。戻るか、ネオサイタマに……。


ハー・・・(ためいき)

 5

ニューロンに響く謎の電子存在が示した矢印。そこに辿り着けばきっと、父の残した理論の謎も、自分の身体の謎も解ける。ユンコはニンジャに追われながらも駆け、跳び、ひたすら目的地を目指す。

(((あの夜、私はハイウェイで……死んだ? それを確かめるために ”味方” のところに向かってる?……私はそんな事のために私は戦ってるの……?)))「……ファック・ノー! 死んだ理由なんか今はどうでもいい! 生きてる理由が欲しいんだ!」

ここ好き!

 (((……近づいて……いるな……いいぞ! モーターユンコ!)))

何もよくないが!!!??

「何者だ!?」ターボアサシンは背筋が凍るような恐怖を覚え、ユンコを小脇に抱えて振り返った! それは、1330CCのインテリジェント重モーターサイクル、アイアンオトメ! その上に跨がるのは、満身創痍の殺忍装置!

満身創痍の殺忍装置www
装置て。そうだけれども。

ところで両腕破壊後のメカ露出ユンコに性癖を植え付けられ/目覚めさせられた人、いるのでは?

 6

右腕は失われ、左腕は半壊した。右膝も砕けている。血は出ない。火花が散るだけだ。重金属酸性雨に打たれ、足を引きずりながら目的地に向かうユンコの耳に響いたのはモーターサイクルの轟音であった。

『全ての発端は、オムラ・メディテック社が十数年前に開発した、脳記憶情報の高密度圧縮バイオニューロンチップ化テクノロジー』(略)高密度バイオニューロンチップへの記憶情報移植は、脳神経細胞に不可逆的なダメージを及ぼすため、生命活動を停止した個人に対して遺族が行う保険適用外手術であった。

うわっ。まさにシキベさんのチップ化技術ド真ん中じゃないですか。グランド・オモシロイ号の事件が数年前ということは、本当にあの時点での実現可能性はゼロに近かったんですね。

雷が上空で閃き、凄まじいフラッシュが影絵を投げ落とした。それは死者を弔う十字架、あるいは巨大なトリイの形か……半ば崩壊した立体駐車場のフレームによって作られたシンボリック影絵が、バイクにまたがる二人に烙印のごとく投げ落とされた。

文章が上手い……。
素晴らしいですね。素晴らしい。

「ひとりで行けるか」ニンジャスレイヤーは精神統一を行いながら問うた。(略)「もし無理だったら、また、助けてくれるかな?」その後は、誰にも聞こえぬように小さく言った。(((……父さん)))

ギーーーーーーーーッ!!!!!!
※人間には感情の閾値を超えると歯軋り濁音で叫ぶ個体がいます

フジキドに「父さん」を重ねるの……こんな…グギーーーーーッ!!

「脅かさないでよ……」ユンコは孤立無援の小型深海探査艇めいて、大型スシ・レストランの廃墟の奥へと進んでいった。

いやだ!!!!!

寿司屋のコーナーの奥!!嫌だ!!そっち嫌だよお父さん!!行きたくない!!!

『……ゴボボボ……。ついにモーターユンコがここへ……あと少しだ……彼女を守るのだ…』

黙れよ知性マグ(名詞を口にするのも嫌だ!!)(認めないから!)

『モーター回路が彼女をここへと導いてくれた。全てはサイオー・ホースというやつだ』マグロはコトワザを使った。

魚類がことわざを使うな!!!!!!!

『ごめんなさいね、坊や』ヤバイ級ハッカーの挑発的な声が回線に割り込んだ。

こ……これは……。めっっっっっっちゃ興奮しますね…………はー…。
ナンシーさん、罪な女……。

自分を案内したオイランドロイドが死地で踏ん張っているのを見ながら昇降機にのるユンコちゃんが「命綱をまたひとつ失ったような感覚」を覚えるくだりがとても良かったです。

こんないいシーンなのに待ち受けてるのが大型イケス・プールなの許せないよ……

「あなたは……誰?」『ゴボボボボ……僕は、君の父親だ』

やめろ。最悪のファインディング・ダースベイダーを今すぐやめろ。

「父さん……? トコロ……スズキ……!?」ユンコは呆然とした顔で言った。『僕がトコロ=サンとともに、君を作った』

あ、よかった、トコロ・スズキさんではないのか(何も良くないが!!!??)

マグロは修理メカ・アームを操作しながら嘆いた。『君はあの男に騙されている!(略)奴はオムラの不倶戴天の敵だ! だが今なら殺せる! アマクダリと戦っている隙をつき、全員まとめて殺すのだ!』

マグロの言うことなんて無視すればいいと思います。
ハッ。しょせん回遊すらできない回遊魚。死んだも同然のトロ肉よ。

 7

辿り着いた地下施設の奥で待っていたのは、父の共同研究者であった。ニンジャスレイヤーに恨みを持つ人間じゃないボディの共同研究者野郎は、ユンコを助けてくれた彼も含めてニンジャを皆殺しにしろと命じる。それが、ユンコに与えられたボディの意味だというのだ。その前に貴様のボディの説明がいるだろうが。もなかは激怒した。

シャドウドラゴンの投げたクナイが影に突きささる。だが機械にシャドウピン・ジツは通用しない!

あっそうなんだ!?(ところでシャドウピン・ジツってもう紛うことなき100%ウィーヴくんじゃないですか)
じゃあコトブキちゃんやユンコちゃんにも効かないってこと? 自我があれば効くんでしょうか。どうなんだろう。

アマクダリ・アクシスとニンジャスレイヤーのイクサの場は、立体駐車場から廃墟スシ・レストラン店内、レジカウンター前へと移動していた。清算の時が迫る!

うまいこといったつもりですか?

「ちょっと待って、勝手に話を進めないで! ……ああ、ファック! 私はこれっぽっちも納得してない!」『納得!? 何を言い出すんだ!? 僕は君の生まれた理由と、戦う理由を教えてやった。何が足りないというんだ!?』

まず陸に上がったらいいんじゃないですか。
話はその後にしましょうか。

ユンコの精神は目を見開き、反抗的に拳を握る! 最初からこのボディこそが答えだった! 必要なのはただ、自分の判断を信じる勇気だけだった! 従順な兵器に作り替えたいだけならば、父がこのようなボディを遺すはずはなかった!(略)異論など聞く気はない! 彼女はそうありたいと願ったのだ!

いい……! 最高……ッ!!!!

そう、このボディこそが答え。父は確かに自分を愛し慈しんでくれていた、鏡に映った自分が答え! 最高ですよ!!!

『ゴボボーッ!?』狼狽する知性マグロ!「くたばれ!」

いけーーーーーーーーーーーーっ!!!!魚類よ今こそサバキ裁きの時だ! しょせんは魚類、人間とは脚の本数が違うのよ!!!

モーターユンコの左腕からエネルギー光線が最高出力で発射され、目の前の強化イケスを破壊!

ヤッターーーーーー!!!!!!!!!
(タオルを振り回し絶叫する観客のGIF画像!)

「お前は信用できない! 私が決めた! AIも洗脳もプログラムも電波もデータも……誰の意見も関係ない! 今、私が、そう決めた!」

いや~ほんと素晴らしい。忍殺のこういうところが本当に好きです。侮辱するな。敬意を払え。私は自分で自分を決める。私が決めた愛が真実。世界中へ形を変え媒体を変え叫ばれ続けてきた魂の咆哮が全肯定される、この一連のシーン、すごくいいです。このエピソードが愛されている理由がわかります。

『この出来損ないめ! 言うことを! 聞け! 機械が反抗していいと思ってるのか!』

それをいうなら魚類のくせにことわざを使ってもいいと思ってるのか。許さないが? 私は許さない。私が決めた。

家庭用オイランドロイドは表情も変えず、ただ黙々と、トロ・サシミの切り出し作業を行った。そしてブロックを一口大に切って丁寧に並べた。

わ、わぁ……マジで裁いて、もとい捌いてしまった……ダブルミーニング的なただの冗談だったのに……しかもこれ父殺しの文脈が乗ってません? こ、怖い。マグロのくせに急にすごい文脈のせてくるな。

 8

「マグロは死んだよ。」「さばかれたよ。」「マグロは死んでしまつたよ……。」「さばかれたよ。」「それならなぜさばかれた。」「知らない。」

端麗なる若き暴君の顔が、たちまち屈辱に引きつって歪んだ。「スズキ・マトリクスの論文データが……特許権放棄の状態で……IRCに流出だと……?」

あ~! こういうの何ていうんでしたっけ。データをみんなでフリーソフトみたいに共有できるやつですね。オープンソースソフトウェア。なるほど、AoMシーズン1【ウィア・スラッツ~】でコトブキちゃんたちがやろうとしてたことにも近いのかな。面白いですね。

猛烈な火柱の間を、巧みなスラローム走行とバイク跳躍で突破してくる! 正気の沙汰ではない! 一瞬でも操縦を誤れば、即、死に繋がる!「……ニンジャ、殺すべし!!」
「バカナー!」パンデモニウムは絶句した。

かわいそう。
狂人を相手にしたばかりに、パンデモニウムさん。

 9

ユンコは自動ロックオンを否定した。ニンジャスレイヤーは憎悪を制御し、モーターサイクル上から手を差し伸べた。背後に迫りくる爆炎から逃れた先に、メガロ・ハイウェイの遥か先に、ユンコの新しい人生が待っている。

「ボディは記憶チップから再生されたドロイドで、しかもハッカーだなんて……かなりカワイイじゃないかな?」メンテ代、スシ代、その他諸々を賄わねば、彼女は生きてはゆけないのだ。

ユンコちゃんといいブレイズちゃんといい、身寄りも後ろ盾もなく足元すら覚束ないのに、すぐ「どうやって働いて生きていこうか」に考えを巡らせて実行していく地に足の着いたところ、たくましいし、すごく素敵だなって思います。

姉妹のようで、どこか母娘にも似たナンシーさんとの関係が素敵です。
はぁ~、面白かった! 魚もいなくなったし……ハッピーエンドですごく良かった! 最高でした!!

今回はここまでにします。

何でしょうか、この文字数は???
長くてすみません。区切るべきだったかもしれない……もうエピソードごとに区切った方が良くないですか? でもそれはそれで記事の体裁を整えるのが大変だし……悩ましいです。
ともあれ次で終わりにしたいです!
それではまた次回の感想記事でお会いいたしましょう。

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次の感想はこちら。

【感想目次】



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