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忍殺トリロジー感想/書籍第三部(2)『死神の帰還』(上)

◇注意◇

現行AoMシリーズからニンジャを読んだ人が、
旧三部作(トリロジー)に戻って色々読んだ感想記事です。
感想の中でAoMのお話もします。

こんばんは、望月もなかです!
3月の2週間ほどが『K2』に消えました。いやもうめちゃくちゃ面白いですね……40巻越えの長編ですがあまりの読みやすさとラブ・リスペクト・ラブにあふれた関係性の有難みに時間が溶ける溶ける。

5月末まで全話無料公開中です。

というわけで、第三部の物理書籍も二冊目です。
読書そのものに要した時間は少ないのですが、途中の展開に頭を押さえて1週間ほど現実逃避などもし(笑)、前回から1ヶ月以上の間が開きました。
【フー・キルド・ニンジャスレイヤー?】【レプリカ・ミッシング・リンク】【ノーホーマー・ノーサヴァイヴ】など有名どころのタイトルが多い本書。忍殺感想シリーズも長くやっているため、記事にした時の文字数は手書きノートの枚数からおおよそ見通しが立ちます。三分割で済ませたい……頑張りたい…というくらいの量があります。実際、ボリュームのある濃いエピソードが多かったですね。

前回感想はこちらです。

◇◇◇

今回読んだのはこちら。
表紙のタイトルとユンコちゃんだけが浮き上がるような加工がかっこよくて好き!

ニンジャスレイヤー第3部 ♯2/死神の帰還(上)

マルノウチ抗争を引き起こしたニンジャ組織は、ニンジャスレイヤーによって双方とも壊滅した。妻子の仇たるダークニンジャもまた、キョート城と共に消えた。人生の目的を見失ったニンジャスレイヤーの前に今ふたたび、恐るべき邪悪ニンジャ組織が立ちはだかる。

 【フー・キルド・ニンジャスレイヤー?】

ザイバツは滅びた。では復讐鬼として生きる必要のなくなったフジキド・ケンジは? 仕事もせず日がな一日酒を飲み、愛する妻子を失ったネオサイタマで、家族のための預金を取り崩しながら無目的に生きている。見る影もない彼の姿をエーリアスは気にかけるのだが……。そんな折、ネオサイタマの其処彼処に「ニンジャスレイヤー」を名乗る無差別殺戮者が現れる。

  ♯1

ソウカイヤ壊滅前夜のネオサイタマ。家族を殺された少年セイジは、己もまた命の危機にあったが、ニンジャスレイヤーと名乗る赤黒のニンジャによって九死に一生を得る。やがて時は流れ……

ガーランドさんもセイジ少年のような経験をしたのでしょうか。
想像するだけで情緒が乱れます。

赤黒の装束に身を包み、黒鋼のメンポには、装束と同じ血のような色で「忍」「殺」と書かれている。

ニンジャスレイヤー登場。
なんかメンポ違くない?

メンポは黒じゃなかったし、字も赤じゃなかった気が……だ、だめだ、思い出せない。人間の記憶、あてにならない。
もなかさんの記憶保存拡張子が画像じゃないからという要因もありそうですが。文字だったり画だったり映像だったり、記憶保存方法って人によるらしいですね。ちなみに私は圧縮データファイルです。

「助けてくれ!」「助けないのがニンジャスレイヤーだ!」チョップが振り下ろされる!「サヨナラ!」ポーラーベアは爆発四散!

言葉遣いが違う気がする。

びっくりするほど虚無なフジキドさん。おそらく無精ひげも生え、セントーにもたまにしか行っておらず、男のにおい(婉曲表現)がしていそうな…だがそこに、いい匂いの無防備な若い娘が!

ドアを引き開けると、瘦せた女がインターホンを押そうとしていたところだった。女は息を吞み、苦笑した。「足音でわかった? 心臓に悪いぜ」

荒んだ生活を送る虚無男きょむおのアパートに、様子を見にやってくる若い女。中の人は男性。

「チャが飲みたいのか」「あ……ああ、俺が淹れるよ」エーリアスはチャブ上のウォッカを一瞥し、台所に歩いた。

甲斐甲斐しく茶も入れてくれる。

へー。

これ絶対薄い本出てますよね?
調べてきていいですか?(ダメ)

そして彼が残った。亡き家族の為の……訪れることのなかった未来の為のカネを消費し、

ううぅ~~っ!涙

それはさておき、
この状況からはじまる
薄い本が出ていますよね?

もう3冊ほど読んだ気がしている(幻覚)。

いやしかし、何?
たまたまニンジャ人生ですれ違っただけの男の哀しみを案じて、生活を宝物のように扱ってくれるエーリアスさん何?

「(略)何かあったら来てくれッて言いに来たけど、あンたどうせ来ねえよな。また来る。誰か連れて」彼女は扉を引き開けた。「チャを忘れンなよ」

虚無男への扱いが手慣れすぎていて怖いんですけど。

自分自身も慣れない土地と肉体で困っているというのに、なぜ虚無った男の現状を見た途端シームレスに己を介護モードにチェンジできるんでしょうか。ヤバすぎ。人間性の塊。生まれついての精神治療者。どうなっとるんじゃ。

コーベインが散乱!「スッゾオラー? カネ!」オヤブンが狼狽!

カートゥーンコミックのゴリラがバナナ樽を爆破されて「ウホ? ウホウホ!!」って言わされてるのを見てる気分になってる。この親分って本当に人間なんですか?

と思ったらニンジャ相手に銃撃かましてるし、ちゃっかり生き残って金を拾っている。

「だが邪魔なニンジャ野郎は死んで、儲けたわい」

ネオサイタマ原産ゴリラたくましいな。

彼は「釜茶」のノレンをくぐった。

うわっ……フジキドさんがエーリアスさんに言われたとおりにちゃんとお茶買いに来てる~~~。こわ…

目的もなく生きる意味も見いだせずただ起きて寝て何かを腹に入れているだけだった虚無男が、「誰か客が来るんだから飲めるお茶を買っておけ」と叱られて、その怒りに対して特に意味や意義を感じることもできないが、行動はできる社会人男性なので、指示を受けたお人形のようにとりあえずお茶屋に来ており……ヒャー!!

この時のフジキドさん、「次来る時まで俺の着替えも買っておいてくれよ」って言われたら何も考えずに女性服売り場に買いに行きそうな危うさがあってハラハラします。

「ドーモ。ニンジャスレイヤーです。まるでゴキブリだな」ニンジャスレイヤーは侮蔑的に呟いた。

罵倒の語彙にまったくキレがないことから、このニンジャスレイヤーさんが明らかに偽物だと読者にはすぐわかるのですが、そんなところで本人かどうか判定されるフジキドさんもどうなんですか?という気持ちがあります。

フジキドさん、ただ罵倒してるだけじゃなくて、相手が傷つく言葉を的確に選んで、一番痛い場所にわざわざ深く刺していたんだな……(それもどうなんですか?)

「ドーモ、エーリアス=サン。私はね……ウミノ・スドといいます」

おいおいおいおいおいおいおい!?

えっウミノさんってウミノ先生ですよね!? フジオの恩師の!? でも普通の人間でしたよね? キョートのニンジャソウル大量流入の影響で彼もニンジャになってたってこと? めちゃくちゃびっくりした!!

フジキドは困惑した。「これは……私は」アガタは首を振った。「いいの。今は」「私は」「いいの」

……。

エッ……

フジキドの潜在意識の奥に……アガタさんがいるの……?

えええぇ~~~何もなくなった己を甘やかし怠惰に溺れることを赦してくれる偶像として夢にアガタさんが現れるの、ま、まじですかって気持ち。ひょっとして、ネオサイタマ炎上前夜、あの復讐前夜の僅かな時間、満身創痍で復讐に向かおうとしたフジキドの心の隙間の一番弱くて柔らかい部分に、もう死にたい、それまですべてを諦めてこのままアガタさんと溺れていたい、みたいな願望がコンマ0001くらいはあったのでしょうか。

フジキドが妻子のこともニンジャであることも忘れ、新たな生活を送るという選択肢を万が一にでも選び取った場合、無意識下で望むのが明日の見えないずるずるとしたアガタとフジキドの労りあいである可能性とも読めるわけで、はーとんでもねえスわ……やばたにえん麻婆春雨中辛口じゃん……フジキド・ケンジ、性欲あるんだな……

いえあくまでもフジキド・ケンジの無意識領域にいるアガタ・マリアは、その名の通り罪を赦してくれる聖母のような、ひとときの魂の休息に寄り添ってくれる存在なのではないかと冷静な私は理解しているんですが、それでもこのシーンを読んだ時真っ先に浮かんだ感想が(フジキド・ケンジ、性欲があるんだ……)だったので、なんか、もう、私がだめ。

・進まなくてはいけない(新しく買ってきたチャ)
・でもまだここから動きたくない(乾涸びかけたマンダリン)
直接的に描くことはなく、あくまで一歩引いたところからフジキドの心理描写を試みる表現、まさに第三部って感じの一幕だと思いました。

偽物の前ですら咄嗟にフジキドの現状を想って咄嗟に口を噤むエーリアスさんが優しすぎる。

と思ってたらガンドーさんが! ガンドーさんが出た!! ひょっとしてエーリアスさんかナンシーさんが呼んでくれたの!? かっこいい~~!!

「はるばる俺が来たのは、アイツに関するタレコミ……出張費は出たが、さすがにこんな事態にゃ備えてねえぞ」

うわあうわあ! つまりフジキドさんが暴走したのかもと思って、人間性の護り手としての役割を担うためにはるばるキョートから来てくれたってことですか!? そうですよねそれしかないですよね!! あぁぁぁあ……!ガンドーさん!好き!!!!

  ♯2

ウミノを拾ったエーリアスと、キョートから駆け付けたディテクティヴは「ニンジャスレイヤー」を名乗るニンジャに襲われた。恐るべき炎熱を駆使する自称「ニンジャスレイヤー」は、亡きニンジャスレイヤーに成り代わり正義を執行すると嘯くのだが……

下水路の一角のマーカーが光る。『サヴァイヴァー・ドージョー。イカレ野郎の集まりですよ。モンスターみたいな奴らだ(略)』

うわっサヴァイヴァー・ドージョー!?
安易に手を突っ込まないほうがいいと思いますけど……

彼のニューロンをある寓話が行き過ぎた。(略)この話を聞かされたのは、いつの事だったか……雲間から一瞬だけ太陽が顔を出し、また隠れた。啓示的な瞬間であった。

ぼかァねえ!!!!(勢いよく氷の入ったウィスキーグラスを置く)
こうやってねえ(グイっと飲む)、ガンドーさんの「取り留めない話」に支えられているフジキドさんの姿を見るとぼかぁねえ!  ぼかぁ泣いてしまうんだなァ!!!!(拳でカウンターを打ち付ける)

スパルタカスさん、既視感のあるお名前だったので合本版検索をかけてみたのですがここが初出でした。おかしいな。受動喫煙だったのかも。

「見ているか? イクサを通し、俺は無限に強くなる。嫉妬するがいい。既に俺はお前以上にニンジャスレイヤーだ!」

「俺はニンジャスレイヤーというものを完全理解している。再現し切っている。なのに、こんな事はおかしいぞ!」

十年前の青年ガーランドさんに、このセイジさんのことをニンジャスレイヤー同担ガチ勢としてどのように思うか聞いてみたいものです。推しに迷惑をかけるな? そうですね

「何でもねえ」エーリアスは首を振った。「アイツは……アイツを巻き込んじまったら、ダメだ」独り言めいて呟いた。「俺らでどうにかするんだ」

どっちかというと発端は過去にやらかしまくったニンジャスレイヤーさんの方であり、エーリアスさんたちの方が巻き込まれている状況なのに、それでも守ろうとしてしまうんですね……こんなマッポ―の世でそんな善性にあふれていたら命がいくつあっても足りないよ(実際それで肉体を失いまくってるわけですが)。

「もう無理して戦わなくてもいい」「日常に戻りたいならその選択肢を残しておいてあげたい」と思っているのでしょうが、それはニンジャの考え方ではなく、どこまでも「人」としての優しさなんですよね。ゲンドーソー先生がかつてフジキドに説き、しかし受け入れられることのなかった「イクサから離れ、堅実に、日々を生きるのだ。それがお前の最善の選択だ」という思想を自然体で体現している魂、それがシルバーキー氏なのかなと思います。フジキドさんの目に映るシルバーキー氏、どれだけ眩しい存在なのでしょうね。

「蛮神信仰者! 罰がくだる!」浮浪者が物陰から飛び出し、エーリアスに打擲棒を振り上げた。「よそものに罰!」

なにこれ?

# ns_gokuhi : ycnan : で、何から始める?

ナンシーさんクールすぎる。最高。

チャ(他人との交流)を土台に、マンダリン(愛おしい過去)を乾涸びたものから瑞々しいものへ置きなおし、スシ(尊厳/生のエネルギー)を己の意志で己の内側に取り込み、再び立ち上がるニンジャスレイヤー。小道具の用い方が非常に丁寧で、小説が巧いな……と唸る一方で、明らかに第三部で描写の距離感を変えてきてるな……と感心もしました。

  ♯3

偽ニンジャスレイヤーは、マルノウチ・スゴイタカイビルの爆破テロを企んでいた! フジキドを巻き込みたくないエーリアスは、ガンドー・シバカリとともに阻止しようと奔走する。

ムカデベインのオヤブンには、ニンジャから命を救ってやった貸しがある。血の一滴まで搾り尽くすつもりだ。

ムカデベインって誰だっけ?と思ったらあれですか、ネオサイタマ原産ゴリラのクランですか。なるほどね。

執着が行き過ぎて偶像破壊にまで手を染めようとしているセイジくんのくだりを読んでいると、ガーランド青年のオーディオコメンタリーが欲しくなります。ガーランドさんどう思う? こういう厄介ファンが一番困るんだよね。推しに迷惑かけないでほしいよね。(まあ推しと同姓同名の別人を監禁拷問するガーランドさんも大概ですが……)

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは足元に倒れたエーリアスを抱え、跳んだ!

ヒャーーーーーーーー!!!!

「だけど、どうしてこの件を。俺ら、あンたには関わらせまいと……」「交差点で何か言おうとしておったろう」

ヒャーーーーーーーーーーー!!!!!!

(シルバーキー氏にはいつでもスパダリみたいに察しがいいのにどうしてマスラダくんにはいつもポンコツ親父コミュニケーションになっちゃうんでしょうね!?)

「否。私が、私の問題にオヌシらを巻き込んだのだ。なかんずく、このビルの市民たちをも」ニンジャスレイヤーは低く言った。その表情は窺い知れない。エーリアスは何とも言えぬ目で彼を見た。

自責癖のある男を責めるような労わるような情のこもった目で見つめる(※幻覚)エリキーさん……何を読まされているんだ……

冷静に考えるとフユコ/アガタ/エーリアスみたいな段階を踏んでフジキドさんが外に出てきたのも、なんか……なんでもありません

当初甘かったニンジャスレイヤーの動きが、攻撃の中で急速に精彩を取り戻しつつある。ニンジャスレイヤーはそのさなか、ずっと呟き続けていた。「右拳……左手甲」「イヤーッ!」「右脚……左手」

復讐が終わったからって復習から始めるな

戦いながら復習するフジキドスレイヤーさんこわすぎるんですよ、時間を与えると呼吸で回復するしブランクがあったらブツブツ復習しながら埋めたブランクの上にどんどん足場を積み上げていくしもうやだこのおじさん。絶対敵に回したくない!!

シバカリさんメチャクチャかっこいいですね。
これがトリロジー読者にとっての「テンサイ・ハッカー」の基準なのだとしたら、AoM初期にタキさんが「テンサイ」を名乗ったところで信用されなかったのも頷けます。なるほどね。

「イクサを怖れ、蛆と蛞蝓のフートンに伏せ暮らす腑抜け物めが、この期に及んでこの地に何を試みに参った」

セイジくんの未熟な罵倒を散々読まされたあとでぶん投げられるナラクちゃんの罵倒がキレッキレすぎて笑ってしまいました。レベルが違う! 年季が違う!

「明日朝にはキョートに戻る事になっちまったからよ。とんぼ返りもいいとこだ」「すまなかった」「お前が詫びる事でもねえさ……いや違うな。貸しにしておくとする」

ここでさあ!! 不問に処さずに敢えて「貸し」にすることで未来への約束を残しておくガンドーさんのそういう……そういうところがさあ! (泣) ヘンゼルとグレーテルが森に落とした光る小石めいて、放っておくとどこまでも行こうとしがちなフジキド・ケンジという男の人間性に帰り道を残してくれてるんでしょおおお!?!?

「昔の話、覚えてるか」とガンドー。「セキバハラで俺がよ……」「探偵の件だな」「おう。それだよ。何だって……?」

うううぅう゛……覚えてるんだフジキドさん……ガンドーさんが「おろそかにしちゃいけねえ」と灯をかざして護ってくれていたフジキド・ケンジの人間性は、確かに彼を再び生の世界に呼び戻してくれたんですね。ガンドーざん゛な゛んでぞんな゛にやざじい゛の゛涙涙涙!!!

フジキドは言った。「何?」「考えておく」「そいつは……いい話だ」ガンドーは言った。「マジに、いい話だ」

掛け値なしに感動的で大好きなシーンでありマジにすごくいい話なのに物理書籍で読むと見開きで真横にヤクザキッチン表紙があるのさあ……

ヘラを持つクローンヤクザと「いい話」を同じ視界に入れたくない

あと探偵の件を憶えているだけであれば本当にいい話だったのに、なぜかフジキドさんの内部でねじ曲がって「暗黒非合法探偵」として出力されてしまったの、あまりにもブラックボックス人問題だと思うんですよね……どうして……。

わかりません



◇◇

【ナイス・クッキング・アット・ザ・ヤクザ・キッチン】

その夜は何もかもうまくいかなかった。昔の女は殺された。賞金稼ぎから逃げ回り、ようやく落ち着いたバーはクローンヤクザのボッタクリ・バー。極めつけに彼は出会ってしまう。裏社会の支配者・アマクダリ・セクトの邪悪ニンジャに――!

重サイバネでタフな不法滞在外国人、ラッキー・ジェイクさんが初登場。

といってもAoMでは何度かお会いしているのでちょっと不思議な感覚ですね。一番出てたのは【クルセイド・ワラキア】かな? 

ピザタキにも来てましたね。コトブキちゃんに言及された途端に警戒モードになるタキさんが好きすぎるんですよねえ!ヒーッヒッヒッヒ!

それにしても表紙絵の位置エネルギーみたいなものが強すぎる。
クローンヤクザ、大多数との戦闘も気持ちよく書けるし絵的には何をやらせても目を惹くパウァがあるし、すごいボンモーの発明だと思うんですよね。

「死んでください! 貴方! 前後している! 庶子!」口元を簡易ガスマスクで覆ったジェイクは、叫びながらLAN直結拳銃の論理トリガを引いた。

これが噂の翻訳機のアレですか笑
Kill! You! FUCKING! BUSTARD!! かな?

翻訳機がスラングの解読をできない設定すごく面白いですね。
タフな男の不運な一夜というシリアスな設定に、うまく風を通してくれてるといいますか…悲惨になりすぎなくていいんですよね。忍殺ってこういうバランスのとり方がとってもうまいと思う。

カウンターの向こうでは、神経ガス吸引卒倒したクローンヤクザ三人が鉄板の上に頭から倒れこんで顔を焼かれている。ナイスクッキング!

やると思ったよ!!!
どうせ焼き加減はミディアム・レアなんでしょ!?

シリアスになりすぎなくていいとは言いましたがナイスクッキングしてもいいとは言っていないぞ!

「(略)ここは我らアマクダリがネオサイタマ各所に隠し持つ、クローンヤクザ・アウトポスト……通称ヤクザ・キッチンのひとつ。」

は?

この声は、入り口付近で整列待機する三人のクローンヤクザの中から発せられた。しかし、このジゴクめいた声は……明らかにクローンヤクザのそれではない。何者か、異質な存在が紛れこんでいる……!

クローンヤクザに偽装していた……って何? サングラスとヤクザコートをつけただけの……雑な偽装で……一糸乱れぬ同じ容姿の中に紛れ込んで……それで誰も気が付かなかったなんてありえるんですか?!? そんなわけなくないですか!?

いえそのガバガバ変装が通じたからそのまま入店してきたんだろうとは思うんですが…ここまでタフなジェイクのシリアスな大ピンチを手に汗握りながら読んできたので、急にガバガバになった世界観に心がついていけないぞ。

それはニンジャスレイヤーが潜入工作のためにフックロープで吊り上げたクローンヤクザの死体であった。

本当に必要な工程なんですか!? その、フックロープで吊り上げるというところは……?! もう何も信じられないよ!!

重いブーツが金属板を踏み鳴らし、それも雨音に吸われてゆく。今夜はとりわけ雨が酷く、辺りに人気はない。巨大なUNIXをバラして基板内部を覗き込み、その中を歩いているような気分だった。

ここの文章めちゃくちゃいいですね
素晴らしい

上記に限らず、ジェイクがヤクザキッチンから逃げ出したあとの無限遠迷宮めいた雨のネオン都市群の空中回廊描写、筆が冴えわたっており最高です。いい文章を読むと健康になります。

フックロープとカンバンを駆使した空中カラテ。(略)死神の鋭いチョップ突きがブラックシープの心臓を貫いた。「サヨナラ!」ナイスクッキング!

クッキングもう関係ないだろ!!!!!!!!

空っぽになった女スラッシャーの死体はまだ流体ネオン・タトゥーで青く光り、流れ出た血は冷たい重金属酸性雨に混じって、薄汚い下界へと滴っていた。

いい……。

いやー文章があまりにも上手すぎる。
ほんとうに勉強になります。

こんなヤバい立場にありながらシレッと生き延びて10年後にはピザタキに現れるんだから、ラッキー・ジェイクってタフなんですね。
今はタキに偽造させた違法パスポートでオキナワにいるんでしたっけ。AoMオキナワ編も読んでみたいです。

というわけで、今回はここまで。
それではまた、次回の感想でお会いいたしましょう。

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次の感想はこちら。

【感想目次】



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