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宇宙旅行系企業初、SPAC上場を遂げた「Virgin Galactic」について調べてみた。

今回取り上げるのは、先日宇宙旅行会社の創業者初となる宇宙飛行を達成した「Virgin Galactic」という会社です。

日本語で訳すとその名の通り、人類に対して「初めての宇宙」を提供する宇宙旅行ビジネスを行う会社です。
また、近年盛り上がりを見せている「SPAC上場」で上場を遂げた会社でもあります。

■企業概要

企業名:Virgin Galactic
サービス名:宇宙旅行
SNS: Twitter / 📸 Instagram / 📺 Youtube / Facebook
創業年:2004年
創業者: 
リチャード・ブランソン(GroupCEO)
Michael Colglazier(現CEO),
ジョージ・ホワイトサイド(前CEO 現Chife Space Officer)
本拠地:New Mexico, United States
累計資金調達額:$460M (約470億円)
従業員数:823名
上場:2019/10/18 ニューヨーク証券取引所(NYSE)

■サービスの特徴

Virgin Galacticとは、端的に言うとイーロンマスクが手がけているSpace Xのような民間向けの宇宙旅行を提供している会社になります。
元々、宇宙旅行の他に衛星などの打ち上げ事業も担っていましたが、当該事業については2017年を境目にグループ子会社のVirgin Orbit社へ分社化されました。(Virgin Orbit小型の人工衛星を打ち上げる会社。日本の大分ともコラボ

これを機に宇宙旅行事業への選択と集中が行えるようになり、2019年2月には自社の宇宙船「VSS Unity」での宇宙空間への到達を遂げ、同年10月には SPAC上場を用いて世界初の宇宙旅行関連の上場企業へと成長を遂げました。

また、上場後の経営体制を整えるためディズニーパークインターナショナルのCEOを務めた経験のある Michael Colglazierを迎え入れ、更なる成長を目指しています。

最近では、ZOZOの前澤さんやイーロンマスクなどにより、宇宙旅行への熱が高まっていると言えるでしょう。

そんな宇宙旅行群雄割拠の時代におけるVirgin Galacticの特徴をまとめてみました。

まず初めに、大きく異なるのが宇宙旅行の仕方が異なります。
宇宙旅行には、大きく分けて3つの方法があると言われています。

❶オービタル宇宙旅行
❷サブオービタル宇宙旅行
❸月旅行・火星旅行

と呼ばれるものに分かれます。

それぞれ詳しく述べていくと以下のように分けられます。

❶オービタル宇宙旅行
高度400KMほどまで飛行し地球を周回、数日〜1週間以上宇宙に滞在するものを指します。これまではロシアのソユーズ船を使用したISSへの飛行が行われており、現在SpaceX社などがこの領域に挑んでいる。
❷サブオービタル宇宙旅行
高度100kmまで飛行し、数分間〜数十分間宇宙に滞在するもの。Vergin Galactic社とBlue Origin社がサブオービタル宇宙旅行の提供を予定しています。

また、サブカテゴリーの中でも大きく分けてカテゴリーが異なります。

Vergin Galactic社は、有翼形の宇宙旅行機で宇宙へと向かうものであり、厳密にはVirgin Galacticは、飛行機(WhiteNightTwo)から宇宙旅行機であるSpaceShipが空中発射する形式を取っています。(以下図)

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一方、Blue Originでは、New Shepardというカプセルタイプの宇宙旅行機になっています。
ロケット型の輸送機の先端に搭載されたカプセル型宇宙旅行機(New Shepard)に宇宙旅行者は搭乗し、宇宙である高度100kmでカプセル内だけで無重力体験をして、地球へとパラシュートを活用しながら帰還するものであり、全く異なります。

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そして三つ目には、皆さんが宇宙旅行といえば想像するような方式です。

❸月旅行・火星旅行
文字通り、月や火星に行って帰ってくるもの。日本では、前澤友作氏がSpaceX社にて開発中のStarshipでの月旅行を2023年に実施することを発表し、8名の同乗クルーを募集中など話題になっている旅行方式です。

続いて、宇宙旅行会社で大きく異なるポイントは「料金」と考えられるでしょう。

月旅行などを行う「SpaceX社」は長期的な滞在になるため60億円からスタートし、大物著名人や富豪しか行けない価格となっています。
また、Vergin Galacticと同様にサブオービット旅行形式を取っているジェフ・ベゾスの「Blue Origin」は、旅行期間が月旅行やオービット旅行と比較して短く、コストがかからない点から約2200万円〜3300万円とかなり安くなっています
そして最後に、Vergin Galactic社は同じくサブオービット方式を取っているため、殆ど同額の約2200万円となっています。

最後に、主要な宇宙旅行会社を比較してまとめると以下の通りになります。

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■Virgin Galactic のこれまで


宇宙旅行関連企業としては、初の上場を遂げた会社ですが、ここまでの道のりはかなり厳しく、宇宙商業旅行許可を貰うまで、三度の実験を行い失敗しています。
始まりは2014年。初号機のSpaceShipTwoの試験中に空中で分解、その後墜落し、運転していたパイロット飛行士一名は敢えなく死亡してしまいました。

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この事故が起きた原因としては、自動ブレーキシステムが導入されていなかったためとされています。
その後、改良と実験を重ね 2019/2/22に初の乗客を乗せた状態での宇宙旅行を達成しました。(以下当時のTwitterの様子)

また、その頃5年越しの実験成功などの勢いもあり、SPAC上場へ向かいました。そしてついに 2019/10/18 ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を遂げる、会社として万全の準備が整いました。

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しかし、その成功の連続も続くことなく 2020/12に2回目の失敗(ロケットエンジンの点火の失敗)迎えてしまいました。
幸いなことに、セーフティ機能が起動し、大きな事故や犠牲者はいませんでしたが、これまでの上場・実験成功などで上がっていた株価が一時的に下がり、停滞期を迎えます。 

それでも諦めず、2021/5に再チャレンジし、見事成功をおさめ、株価上昇(20%)また、この実験は米連邦航空局(FAA)から商業用の再利用可能宇宙船のライセンスを取得するために必要なデータを集められる最終通告であり、宇宙旅行ビジネスの難しさが分かります。(当時の実験模様↓)

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そして、Virgin Galanticは今後さらに後3回のテスト計画しており、最終的には本拠地のニューメキシコ州のスペースポート・アメリカから年間400便打ち上げを予定しています。

■ビジネスモデル

Virgin Galantic のビジネスモデルは現状3つある。それぞれ以下で説明をしていきます。

❶民間向けの宇宙旅行を提供
先程の他者との比較にもあった様に、相場と比べるとかなり安いのがわかります。また、本格的に宇宙旅行が行われていないにも関わらず、プレエントリーでかなりの人数を集めています。
具体的には、2018年以前にすでに約600人が20万ドルを支払を済ましています。(2170万円×600)
その他にも、「One Small Step」プログラム(デポジット支払いを行うことで、予約ができるシステム)を利用し、400人の顧客が1000米ドル(11万)のデポジットを払い将来の宇宙旅行の候補者になっています。(11万×400)
しかし、それ以外の収益源は未だない状態で以前と厳しい状況は続いています。
研究開発費などは、投資機関や株の発行によってキャッシュを賄っていると考えられ、その他に同じグループ(VirginGroup)等での売り上げを補填しているとも考えられます。

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Virgin Groupのポートフォリオ(Groupについては下記で触れる)

また、民間向けとはうたっているが実際にどれだけ簡単に申し込み等のアクセスが行えるのか調べたところ、かなり簡単にコンタクトができることが分かります。

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↑HP上の申し込みページ(Virgin Galactic)

 また、上記で述べた同じ打ち上げ方式のBlueOrigin社もかなり簡単に申し込みができる様になっていました。

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↑HP上の申し込みページ(BlueOrigin

また、日本などでは代理店としてクラブツーリズムがVirginの宇宙旅行を販売していたりなど、一般人が購入することへのハードルは低いように思われます。

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❷超音速飛行移動ビジネス
宇宙旅行のみならず、その機能を生かし飛行機では叶えられなかった、今までに無いスピーディーな大陸横断を超音速飛行というビジネスで叶えようと計画しています。

このビジネスに関しては、NASAとの協定を結んでおり実用化はそう遠くない未来だと考えられます。
また、実際にどれだけスピーディーな飛行移動が実現できるのかと言うと、時速約4000KMで、太平洋横断が5時間以下・米国の大陸横断が90分以内で到着することが可能です。
このビジネスも一般人向けに実用化すれば、新たな収益源を確保することが見込まれます。(Virgin GP内に飛行機会社があり連携可能)

❸研究目的での打ち上げも行うように

旅行用のみならず、研究目的の宇宙への打ち上げも行われる様に近年なりました。
具体的には、International Institute for Astronautical Sciences(IIAS)の研究者、市民科学者、STEMインフルエンサーのKellie Gerardi(ケリー・ジェラルディ)氏が今年中に搭乗予定であることが分かっています。

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この様なパラボリック・リサーチ・フライト(宇宙空間の無重力環境を模擬した高高度の航空機飛行)というフライトもこれからビジネスモデルとして組み込まれていくことは間違いない様です。

■市場性

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宇宙ビジネスの世界規模での市場規模は2010年に約27兆円だったのが、2019年で約40兆円まで成長しており、このペースで進めば2040年代には約100兆円以上に達すると言われています。

また、宇宙産業はこれまで、携帯電話・ネットワークの普及の恩恵にあづかった衛星サービス事業などを除くと設立当初から多くの資金が流れ、ビジネスを手がけてきたが、エグジットを模索してきたがなかなか次のフェーズへと移行する機会に恵まれていませんでした。

そんな中、伝統的なIPOによる上場による高いハードルを回避できる策であること、投資家のSPAC投資の関心の高まり、そして著名な経営者や大手投資銀行などのSPACへ積極的な関わりが徐々にSPACに対するイメージが改善されてきて、SPAC上場というエグジット策を宇宙産業においても行われる様になりました。

■創業者

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・リチャード・ブランソン(GroupCEO)
ロンドンの郊外に生まれ、幼い頃から失語症などに悩まされ、17歳の時には高校を中退。
その後、趣味で始めたレコードの通信販売で成功を収め、1973には「Virgin record」というイギリスを代表するレコードレーベルまで成長させた。
また、1984年に航空会社を立ち上げ「Virgin Atlantic」世界初のエコノミークラスへのシート内蔵テレビの導入や機内でのマッサージサービス、完全に背もたれが倒れるビジネスクラスの導入など、斬新なサービスを次々と導入する身軽さを売り物にし大成功。
その後それを元手に、携帯電話事業・飲料水事業・映画館事業・鉄道・金融事業まで次々と参入を行った。
その結果22カ国で約25000人の従業員を擁するまでになった。
そして、イーロンマスクやジェフベゾフ同様、宇宙旅行事業にも2004年に参入し今に至る。

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・マイケル・コグラジエ(現CEO)
インディアナ出身、1989年にスタンフォード大学を卒業し、ハーバード大学経営学研究科で修士号を取得するまで、企業戦略のアナリストおよびプロジェクトマネージャーとしてディズニーに採用。過去10年間、彼はアニマルキングダムの副社長、ディズニーランドリゾートの社長、ディズニーパークスインターナショナルの社長兼マネージングディレクターを務め、ディズニーランドパリ、香港ディズニーランド、上海ディズニーリゾート、東京ディズニーリゾートの運営と開発を指揮してきました。 

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・ジョージ・ホワイトサイド(前CEO 現Chief Space Officer)
スペースシップ・カンパニーのCEO。CSO(Chief Space Officer)であり、ヴァージン・ギャラクティックの長年のCEOであった。現在もヴァージン・ギャラクティック諮問委員会のメンバーを務めている。ホワイトサイドは以前、アメリカ航空宇宙局の参謀長を務めており、オバマ政権時代にNASA移行チームに所属した後、指名された。

■ファイナンス

 価格 4億5000万ドルでM&A成立
Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏のSocial Capital Hedosophi(ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィ)によって立ち上げられたSPACによって買収された。今年で4社目のSPACを立ち上げました。

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■個人的な感想

宇宙旅行は誰もが幼い頃は夢見るものだと思います。
また、技術の発展により宇宙飛行士以外の人間も宇宙に行ける日がやってくることは間違いないし、この盛り上がりは素晴らしいものであると思います。
また、宇宙産業はなかなか他のビジネスと比較すると、収益が上がり辛く金持ちの道楽的なイメージで捉えられてしまう事が多かった様に感じます。
しかし、時代が追いつきSPACによる上場と言う手段により、正当に宇宙産業の努力と将来性を評価する手法がやってきたと言っても過言ではないと思います。
これを機に、更なる宇宙ビジネスが発展していくことを期待しています。

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執筆:W ventures associate Nobuaki Komiya
簡単に以下自己紹介です。

小宮暢朗
各種SNS:TwitterFacebook
立教大学4年生( 99年生まれ)
<やっていること>
W ventures associate:コンシューマー向けVC(ベンチャーキャピタル)
Co-Studio株式会社:大企業向けの新規事業の伴走支援を行う会社(スタートアップスタジオ)

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