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アフターコロナで日本経済回復中!? 旅行業界の新興スタートアップと投資担当者たちが語る、WASIMILの魅力

コロナの終焉が見え始め、コロナ前を上回る旅行需要が喚起される昨今。旅行業界の市場拡大への期待も高まっています。そんな苦しい時間を乗り越えたともいえるのが、株式会社AZOO。ホテル向けの予約からCRMまで包括したオールインワンSaaSを提供しており、W inc.は2021年から支援をしています。そんなAZOO社が、ALL STAR SAAS FUNDというSaaS特化のファンドにご参加頂き、新規増資を実行! そこで、株式会社AZOO 代表取締役社長 横田氏、ALL STAR SAAS FUND  パートナー 神前(こうざき)氏、W inc. インベスメントマネジャー 高津による鼎談を実施。AZOO社が見据える、観光立国・日本における事業の展望を語っていただきました。

ホテル業界に革命を起こすべく「起業」!

高津:W inc.インベスメントマネジャーの高津秀也です。トラベル領域など含め、エンターテイメント系の生活を彩るようなスタートアップ様を主軸にした投資をしています。

横田:株式会社AZOOの共同代表・横田裕子です。私たちは2020年1月に立ち上げた京都にあるスタートアップで、観光業、宿泊業向けのソリューションを提供している会社です。

神前:ALL STAR SAAS FUNDパートナー 神前達哉です。私達はSaaSに特化した投資をしているファンドで、シードからシリーズBやCまでリードしております。

高津:横田さん、最初にAZOO社の事業についてご説明いただけますか?

横田:ホテルシステムのSaaSである、WASIMIL(ワシミル)がメインの事業です。WASIMILはBtoBとBtoCの両側面がありまして、前者はオールインワン型のホテルDXシステム。ホテルマンに向けた、一体型で業務をひとつのシステムでカバーできるシステムです。例えば、旅行者の予約管理、部屋割、チェックイン・チェックアウトの対応、ホテル滞在中にサービスを売ったらその会計処理、請求書の発行というようなホテルを運営するための業務面での機能が一体型で揃っているというものになっています。後者、toCに向けたサービスとしては、ホテルのお客様、要は旅行者のデータを集積し、それを元にサービスを作ったり、料金を作ったり、予約をとったり、マーケティングをしたりというCS的に活用してもらうシステムです。

高津:toBで言うと、どのようなホテルが対象なのでしょうか?

横田:私たちのアーリーアダプターは、スモールミディアムのラグジュアリー系やライフスタイルホテルと呼ばれるような、非日常の宿泊体験を深めるサービスの提供を考えているホテルですね。

高津: WASIMILが目指しているのは、どのような未来でしょうか?

横田:ひとつはホテルマンの業務効率化です。今は人手不足ですし、そもそも宿泊業は労働生産性がとても低い業界で離職率が高い、いわゆるハードワークの業界。ですから、ホテルマン一人一人の業務の効率化を進めて、ゲストサービスへ集中できる環境を作ることを目指しています。ホテルマンのやりがいである「ありがとう」を「ゲストから得られるサポートを追求することで、ウェルビーイングを手助けできれば、と思っています。もうひとつは、ホテルを利用する旅行者側への価値提供ですね。旅行者の非日常をどう演出していくか、それぞれの体験を深めていくか、その実現のために、機械学習を含めた新しいテクノロジーも入れながら価値を増大化していくことを見据えています。

マラソンができる経営者に投資したい!

高津: W inc.はtoCというイメージがとても強いと思うのですが、必ずしもマネタイズ手段がtoCでなければならない、というわけでありません。コンシューマーサービスとして、コンシューマーの生活を彩れるようなところを下支えするようなサービスにもしっかりと投資をしていきたいなと思っています。しかしながら、toCに強みを持っている我々としてはAZOOさんのようなSaaSビジネスへの投資は、チャレンジングな側面もありました(笑)。

横田:ええ、そうですよね。

高津:僕らが投資したのは2021年の2月。コロナ禍の真っ只中で、世の中は緊迫していました。人と人との触れ合いそのものが敬遠されるような時期です。その中で旅行業に投資するのは、色々とハードルがありました。しかし、この状況だからこそ、横田さんと共同経営者のトーマスさんの2人の経営チームに賭けたいなと思ったところがあったんです。

横田:どのあたりですか?

高津:まず、グローバルのチーム体制をしっかりと作れていて、かつコストをかけずにいいプロダクトを作っているなと思いました。開発の速度自体も順調。オンラインでのやり取りも多いので、マネジメントは難しい部分もあったと思いますが、しっかりと開発を進めていける体制が見てとれたので、安心感につながりました。チームがとても優秀だと感じたんです。それ以外にも、中小企業が多数を占めるホテル宿泊業において、市場にマッチしているプロダクトだなと感じたところも大きい。もうひとつ、ホテル自体がかつての「夜、寝るところで、どんちゃん騒ぎできればいい」みたいな存在から、それ自体が楽しまれる「コンテンツ」として成熟化していっていると感じていました。それに対して、WASIMILのCRM的な機能が、ホテルに来る旅行者にとっても、より魅力的な体験を届ける力になると確信して投資させていただきました。そして今回、コロナ禍をようやく抜け、ここからどんどん邁進していく姿が見られるだろうなと期待している中で、SaaSビジネスに対し経験豊富ななファンドであるALL STAR SAAS FUNDさんにご出資いただくという、僕としてはとても綺麗な流れを見ることができました。

神前:横田さんとの出会いは、私が書いているnoteがきっかけでしたよね。

横田:ええ、そうですね。

神前:私のnoteを横田さんがご覧になって、TwitterのDMで「事業のご相談がしたい」と言っていただいたのがきっかけです。最初はnoteを読んでもらっている嬉しさもあって、一度お話ししようと。その過程でホームページ拝見したら、WASIMILが持っているプロダクトの力、マーケットのポテンシャルをすごく高く評価する声が社内でも多く上がって。すぐに「前向きに投資を検討した方がいいのでは?」と投資チームの中で盛り上がりました。

高津:どのような観点でAZOOさんを見てらっしゃったのですか?

神前:3点ありますね。ひとつが「市場のポテンシャル」。旅行業界はコロナによってガクンと落ち込みました。産業の担い手が一時的に少なくなり、効率化やデジタルトランスフォーメーションのニーズが潜在的に強いだろうという状況下なので、SaaSを導入していく機運があります。また、インバウンド需要もコロナで一時的に減ったとはいえ、今後、絶対伸び続けていくだろうなと。産業的なポテンシャルはすごくインパクトがあるし、市場の広がりを感じたというのが重要なポイントでした。
2つ目は、プロダクトの成熟度がめちゃくちゃ高かった点。デモ版を拝見したのですが、ローンチ前にもかかわらずお客様がしっかり使ってくれそうなイメージが反映されたUIで、その作り込み具合は同じフェーズの会社と比較しても、ずば抜けて高かった。高い開発力、プロダクトのディレクション力があるのだろうなと感じました。
3つ目は、横田さん達の経営者としての姿勢です。バーティカルSaaS(業界・業種に特化したSaaSのこと)は、もともとは、普通に業務が回っていたところに、新しいシステムを導入していく提案をするので、結構、難しい勝負なのです。けれども、そこを着実に淡々とお客様の声を聞いて、やりきっていける持久戦に強い経営者かどうかという点が、私は大事だと常々思っていて。横田さんとランチした際に、ご本人がマラソンをずっとやっていたという話を聞いたのです。その時に、「トップをとったことはないけれども、着実にやりきる力があるのかな」と感じました。そういう経営者としてのパーソナリティーはバーティカルSaaSと相性がいいのではないか、このチームには賭けてもいい、その思いで投資させていただきました。

横田:お2人からの言葉を胸に秘めて、非常に頑張れそうです。本当にありがとうございます!

AIと旅行・観光業界の未来

高津:AZOO社としては、WASIMILをどんな風に大きなビジネスにしていこうと考えていますか?

横田:私たちのようにバーティカルSaaSで、コンパウンドにやっていくスタートアップというのは、ひとつのデータを核にして色んな機能を構築していくというのがキーだと思っています。AZOOは初期から旅行者のデータを基準に機能を構築していて、うちのシステムを使えば使うほどホテルに滞在する人の属性、特徴、趣向性などのデータがとれるように作ってきました。ですから、このデータをべースに「未来」を考えています。
例えば、ホテルに何回か来ていらっしゃるようなロイヤリティの高い旅行者がいたとします。そういう方を判別して、おもてなしのワインを1杯出すといったことをすると、サービス業としての価値は高まりますし、蓄積されたデータに基づいて機械が判別するわけですから、人間がやるよりも素早くできるし、業務がより効率化されていきます。

高津:このデータの活用は、業界の人手不足に大きく貢献しますよね。

横田:ええ、そうなのです。さらにもう一段階、収益のアッパーを上げていくためには、旅行者がホテルに対して出す金額を上げていくことも重要になります。そこでも旅行者のデータがキーになってくると思っています。今、いろんなホテルが“コト消費”を提供していますよね。例えば、京都のホテルに泊まるだけではなくて、そのホテル、ひいては京都での全体験を一緒に提供するようなサービスをパッケージにして売って価値を上げるといったことです。ここにも旅行者のデータを活用できると考えています。将来を見ると、機械学習とかジェネレイティブAIが世の中に浸透すれば、一人一人の可処分時間が増えてくると思うので、旅行体験を含むエンタメ、ウェルビーイングに近いところをどう深めていくかというのが課題になってくるのではないかなと。今は宿泊業という箱の中にいますが、徐々にウェルビーイングの方向に事業としては伸びていくのではないかという未来を想像しています。

高津:キーワード的にも、ジェネレイティブAIは、ものすごくバズっていますよね。WASIMILとして旅行業におけるAIの使い方は考えていたりしますか?

横田:R&Dはしています。うちのCRMに機械学習をかけて、例えば「30代の男性という旅行者がホテルにとってロイヤリティが高い」という情報を自動で提言してくれて、そこに合うマーケティングのテンプレなどを自動でレコメンデーションしていく。そういうシステムを考えています。他にも、ロイヤリティを測る「RFM分析」と呼ばれるものを機械学習で行い、ロイヤリティが高い人から順にタグ付けをしていき、顧客の見える化をしていく、みたいなことをやっていたりもします。顧客サービスの方面では、いろんな使い方があるのではないかなと模索しています。

高津: とてもワクワクするようなお話ですね。AIは、表情を見ながら機微を読み取ってということはまだまだできない状況ですから、そこで重要になってくるのが顧客データです。データをもとに、「この人はこういう状況なので、この措置を、こんなコミュニケーションでとろう」みたいなことをプログラミングすることで、人間に劣らないサービスが出てくることもあるかもしれません。

神前:私もジェネレイティブAIについては、SaaSとの融合に可能性を感じています。という感じを受けていますね。ポイントは、データを持っている会社が独自でローカルにLLMを立てられるっていうところかなと思っています。WASIMILが蓄積し続けているデータは、その唯一無二の部分に今後なっていくだろうなと。バーティカルのデータベースと業界に特化された独自のデータベース、さらにジェネレイティブAIが掛け合わされることによるポテンシャルは、すごい価値のあるものになるのではないかな、とかなり楽しみにしているポイントです。逆に言うと、それがないと競争優位性が失われる時代にもなるかなと思っています。

高津:確かに。WASIMILの初期設計理念としてあった、お客さんの行動データをホテル運営の真ん中におきましょうという考え方は、参入障壁的な意味でも、より良いサービスを作るという意味でもとても期待できる思考ですね。

日本から「世界の視野を広げる」ことに挑戦中!

高津:横田さんとしては、AZOO社の強みは何だと捉えていますか?

横田:今、日本が掲げているのが2030年までにインバウンドだけで旅行消費額15兆円、日本旅行者を合わせると20兆円という観光立国推進計画です。そこが私たちの狙っている市場です。特に宿泊業はそのうち1/3以上が宿泊費なので、市場としても非常に成長性がある中で事業をやっています。さらには、旅行者データを使っていくAI、SaaS化といったR&Dも含めて事業をやっている点が、自分たちの事業としての核であり大きな強みかなと思っています。

高津:強みを活かすためには、人材も必要ですよね。

横田:はい、世界から優秀な人材を集めてくるという思考でやっているので、日本の市場に向けて、もしくは日本から世界の市場に向けて大きく成長していけるようなスタートアップにしていければと思っています。

高津:AZOOで働くことの魅力は何でしょうか?

横田: 最近、会社のビジョンを整理して、「世界の視野を広げる」と掲げました。観光や旅行の領域を通じていろんな国の人たちがいろんな文化体験をすることで、新しい価値を見出し、一人一人がやりがいや生きがい、モチベーション、非日常の体験といった新しい自分と出会い、視野を広げていき、ウェルビーイングな世界を作っていくことを目指してやっています。そのために、まずは宿泊業を裏支えする事業を推進したいと思っていますので、自分の視野を広げたり世界を広げたりという、個々の人生の体験を豊かにしていく事業に共感していただける方は、是非一緒に働いていただければと思っています。ご興味がある方はこちらからご連絡ください。

高津:今日はとても貴重なお話ができました。お二方、ありがとうございました。

構成・編集 株式会社TEA.M




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