なぜブランディングでは、ペルソナを重要視するのか?
私たちがブランディングをする上で、必ずお客様と一緒に作り上げるのがペルソナです。 自社の商品やサービスを使ってくれるお客様を、細かな部分まで詳細に検討し、人物像として描きます。ペルソナは、お客様の「心の動き」や「行動の特性」など、自社のブランドとの接点を継続的に生み出していくために、とてもわかりやすく役に立つものです。
しかし導入に際しては、「一人の人物像を描くことが、どのように商品やサービスの販売につながっていくのかイメージできない。」「一人の人物像に絞り込むことは、その他のお客様に対する制限になってしまい、マイナスになるのではないか」等、作成することに抵抗感を抱かれる方も多いのも事実です。
そこで今回はどのようにペルソナを活用していくと、自社のブランド戦略において効果を発揮できるのかを、わかりやすくお伝えしたいと思います。
■ペルソナとは
そもそもペルソナとは何かということについて説明します。ペルソナとは自社ブランドの商品・サービスを、最も活用してほしい架空の人物像です。ペルソナ(persona)は、ギリシャ語の顔や仮面(prosopon)が語源とされています。またラテン語(persona)では、演劇や実社会における役柄・登場人物、主体としての人・人格を意味します。
ブランディングにおけるペルソナの定義としては、ブランドの価値を一番求めている「顧客像」として捉えると理解しやすいと思います。
■ターゲットとペルソナの違い
マーケティング活動の精度を高めるためには、自社の顧客を理解する必要があります。その代表的な方法としては、ターゲット(target)とペルソナ(persona)がありますが、この2つを比較していきましょう。
まず、ターゲット(target)は、
といった具合に、主に商品・サービスを求めている属性を書き出し、ターゲットとして設定します。上記であればターゲットは市場に多数存在し、商品を購入してもらえる機会や接点を増やすために、どの様な広告宣伝やキャンペーンを展開するべきかを検討していきます。
続いて、ペルソナ(persona)は、
といった具合に、商品サービスを求めているお客様のリアルな生活や心の動きを描くことで、自社の顧客として存在していそうな人物像を設定します。
※実際のブランディングでは、さらに詳細なレベルまで描いていきます。
■ペルソナを作る7つのポイント
ターゲットとペルソナを比較しながら、ペルソナを作成する7つのポイントについて解説します。
①ペルソナは「的」ではなく、心を持っている「人物」
一般的に、ターゲットは「的(まと)」であり、ペルソナは「人物」を表現する言葉です。つまりターゲットは狙うべき対象(的)を整理するという考え方であるのに対して、ペルソナはどんな人物が自社の商品・サービスを選んでくれるのかを明確化するという考え方になります。
ここで重要なことは、人の意思決定には「心」が影響しているという点です。人の心は知覚、認知、記憶、判断、決定、感情、意志、動機付けなどを担っていると言われています。よってペルソナを策定する際には、どの様に自社のブランドが知覚され、記憶され、判断されるのか・・など、「心の動き」を出来るだけ深く詳細に設定していきます。
②商品・サービスは「消費してもらう」ではなく「活用してもらう」
そもそもブランディングとは、顧客に対して商品・サービスの価値を理解してもらい、ブランドロイヤリティ(信頼)を高めることで、長期的に良好な関係を構築する活動です。ターゲットの場合は、商品を販売する対象を整理したものという感覚が強いので、そこには継続的で良好な関係性を重視した取り組みというよりも、どのように買ってもらうか、もしくは消費してもらうかという考えになります。
一方、ペルソナの場合はその人物のリアルな生活の中で、自社の商品やサービスをいかに継続的に活用してもらえるかを重視します。ターゲットに商品・サービスを買ってもらうという姿勢から、ペルソナの生活や環境を良くするために商品・サービスを活用してもらうという姿勢に切り替えることが重要です。
③「データ」ではなく「顧客像」の共有で、社内認識の統一を
ブランディングに取り組む際には、世代も、性別も、価値観も違う社員全員の協力が不可欠です。しかし社員一人ひとりのブランドに対する認識が共通でないままブランディングを進めてしまうと、自社の強みや顧客のニーズが理解できていないため、取り組みへの姿勢にバラツキが出てしまい、結果的にブランド価値を下げてしまうことがあります。
複数の社員が一緒にペルソナ(人物像)を作成する経験や、チームがペルソナをもとに、顧客が抱えているニーズについて話し合う機会を設けるなど、社内認識を統一する取り組みがブランド力を高める第一歩となります。
④自社とペルソナとの「1対1の関係性」を意識する
従来のターゲットは、年齢や性別・居住エリア・家族構成といった属性によって、商品・サービスを提供するマーケットを絞り込み、セールスやキャンペーンにおける情報提供の効率化を重視してきました。関係としては、「企業」対「多数の消費者」というように、企業側からの一方通行なコミュニケーションと言えます。
しかしブランディングでは、企業と顧客(ペルソナ)との1対1の関わりの中から生まれる「信頼関係」を大切にします。そのために企業はペルソナを通じて顧客のことを深く理解し、顧客がブランド体験を通じて企業の想いや存在意義を理解でき、共感で選ばれるための双方向のコミュニケーションを築いていきます。
⑤ペルソナの活用は、商品開発から販売戦略まで
ペルソナの最も重要な役割は、商品開発から販売戦略まで一貫したブランドを構築するための判断基準にできるということです。ターゲットは販売戦略における判断基準になりますが、商品開発の判断基準にするにはざっくりとし過ぎています。ペルソナはプロダクト(商品開発)とコミュニケーション(販売戦略)といった2つの経営戦略を統合する判断基準として活用いただけます。
⑥業務の意思決定は、ペルソナをものさしに
ブランディングでは、ネーミングから、イメージカラー、表現トーン、コピー、PRツールの仕様、広告媒体の選定、キャンペーンの企画など、様々な業務の意思決定が必要になります。
ターゲット(属性データ)しか無い場合、関わる人たちがそれぞれ微妙に違うターゲット像をイメージしていて、全体としてちぐはぐなブランドになりがちです。(こう行った場合は全体を調整してまとめられる決定者が必要となります。)このような事態を防ぐため、ペルソナをプロジェクトのメンバー全員が共有し、意思決定のものさしとすることでブランドの統一性や一貫性を担保します。また共通のペルソナをものさしとすることで、他部門との調整のためのすり合わせもやりやすくなります。
⑦一人のペルソナが、自社の独自性を生み出してくれる
商品開発で重要なことは「ニーズ」を理解するということです。自社の商品・サービスによって顧客のニーズ(望みや悩み)を解決すると、信頼の獲得につながります。
ターゲットは出来るだけ幅広く対象を設定しますので、「ニーズ」も同様に幅広く、トレンドを追いかけた当たり前のものになりがちです。よって結局は競合他社と同じ土俵で戦うことになってしまいます。
一方、ペルソナのように人物像を描いた場合、競合他社と全く同じになることはまずありません。その人物の性格や育ってきた環境、ライフステージや家族構成などが要因となり、生活の中にニーズが生まれます。その絞り込まれたニーズ、特にまだ顧客も気づいていないが、何かのきっかけで顕在化する「潜在的なニーズ」を発見することが出来れば、競合他社とは違った独自の「市場」を見つけることにつながっていきます。
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