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お腹いっぱいの幸せは、どうして長く続かないんだろう

お腹が空いて空いてどうしようもなかったあとに食べた定食が美味しくて、満足感と満腹感が同時に満たされたときのあの幸福って、どうしてああも一過性のものなのだろうか。あの幸福感ってたまらなく幸せなのに、シャボン玉のように脆く、すぐにパチンとなくなってしまう。ちょっと動けばまたお腹が空くし、またぐうぐうお腹が鳴りだす。お腹が空いた、お腹が空いた。自分が幸福感の足りない、卑しい亡者になったような気分になる。

だからたぶん、私はすぐに食を疎かにしてしまうのかもしれない。

嫌なこと、悲しいことがあったときのストレス解消法には、よく「美味しいものをお腹いっぱい食べよう」と書いてあるのを見かける。好きな音楽を聴きましょう、お香やアロマを楽しみましょう、あったかいお風呂に入りましょう、あったかい布団で8時間以上寝ましょう、そして、美味しいものをお腹いっぱい食べましょう。空腹感は人を悲しくさせるし、食欲がなくなることは、人間の三大欲求のうちの一つを失うことですよ、と。

だけれども。好きなものをお腹いっぱい食べたって、その幸福感はそのときだけのものだ。ああ満足、ああお腹いっぱい、よく寝れそう。そうやってそのときだけ満足して、朝起きたらまた「朝だ」と思う。同じことが頭の中でぐるぐるして、昨日感じたあの満たされた感じはどこにもない。それがいっとう悲しい。また、私はお腹を満たさないといけないのか、と義務になる。そうするための料理もめんどくさくて、キッチンに立つことが億劫で、フライパンを使ったらフライパンを洗わなきゃいけないことが嫌で、今綺麗な状態のシンクがあるならそのままにしておきたくて、それで。

そんな感じで、かつての私はすぐに食を疎かにした。その経験からわかるけど、食べることを疎かにするって、めっちゃ簡単なんだよね。だんだん口を開けることすらめんどくさくなるっていう末期状態。

だから、満腹感とともに得られるあの幸せがずっと続いたらいいのに。そしたらきっと、人類がいがみ合うことすらなくなるんじゃないかと思うんだよね。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。