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ぴかぴか光る靴

朝、ぴかぴかと光るそれが目に入った。

ようやく歩けるようになったぐらいの男の子が履いていた靴だ。歩くたびに、恐らく振動で靴の側面がぴかぴか光る。それが嬉しくてたまらないのか男の子は「うきゃきゃきゃ!」と笑って、余計に足踏みをした。

そういえば、私もそういう靴が好きだった。

ぴぷぴぷ、と情けない音が鳴る靴も好きだったし、小学生にあがると踵にローラーがついている靴も好きだった。履きやすいように太く大きいマジックテープになっている子ども靴。そのマジックテープを剥がす、ばりばりばりという音も好きだった。

子ども向けに作られた商品はほんとうにすごいなと思う。

靴を光らせようなんて誰が考えたんだろう。ローラーをつけちゃおうなんて誰が考えたんだろう。そんなの、歩くのが、二足歩行ができるのが、楽しくて仕方なくなるじゃないか。

電車内で見かけた彼は、降りる駅がくるまでずっと同じことを繰り返していた。

たたたた、と可愛らしい足踏みをして、それに合わせてぴかぴかぴかと靴が光る。そして彼が「うきゃきゃきゃ!」と笑う。

ぜひとも、この光景を光る靴を開発した人に見て欲しいなあと思った。あなたの発明を楽しんでいる子がここにいますよ。あなたの発明のおかげで、一歩を踏み出すことが楽しくてしょうがない子がここにいますよって。

男の子の姿から側に立つお母さんにちらりと目を向けると、お母さんもすごく嬉しそうな顔をしていた。

どきっとした。

ぴかぴか光る靴がもたらす光景は、男の子だけではない。お母さんも幸せそうに「ふふふ」と笑っている。

そうか。歩く喜びを感じるのは、歩けた本人だけじゃない。その成長をそばで見守るお母さんだって嬉しいのだ。ぴかぴか光る靴だって、お母さんが彼に履かせたからこそ今ここで光っている。

そこでまた私は、同じことを思った。

この光景を、開発者にぜひとも見て欲しいなあ。朝のたった数分、駅にして2駅分ぐらい。そこでぴかぴか光る靴と光景が私の心にじわじわ広がった。



”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。