【歴史小話】運命の日【超短編】
6月22日。
ヨーロッパの歴史において、特にロシアにおいて、この日は特別な意味をもつ。
1812年6月22日。
とある皇帝が率いる約60万もの大軍がロシアの地で戦いを始めた。
とある皇帝とは、即ちナポレオン1世である。
後に、ロシア遠征と呼ばれるこの戦いはナポレオン軍の敗北に終わる。
敗因となった要因は様々挙げられるが、その中でも大きな理由の一つが雪である。
6月22日に始まった戦いはナポレオンの想定以上に長引いた。
そして、冬が来てしまった。
ロシアの冬は厳しい。
生きとし生けるものの命を容赦なく奪い、その死を雪で覆ってしまう。
十分な防寒装備を整えていなかったナポレオン軍は、ロシアの冬の厳しさの前に破れ去った。
その、129年後。
1941年6月22日。
とある総統が率いる約400万もの大軍がロシアの地で戦いを始めた。
とある総統とは、即ちアドルフ・ヒトラーである。
後に、独ソ戦争と呼ばれるこの戦いはドイツ軍の敗北に終わる。
敗因となった要因は様々挙げられるが、その中でも大きな理由の一つが雪である。
6月22日に始まった戦いはヒトラーの想定以上に長引いた。
そして、冬が来てしまった。
以下の流れは上記と同じである。
ドイツ軍も冬の到来を予期した戦略は立てていた。
しかし、北アフリカにおける同盟国イタリアの苦戦に、ドイツは手を貸さざるをえなかった。
故に、ロシアへの侵攻が遅くなってしまったのだ。
そして、奇しくもナポレオンと同じく、6月22日にロシアへ攻め込むこととなってしまったのだ。
また、何百年後という月日の後、6月22日にロシアの地へ踏み込む軍勢があったなら敗北を喫することだろう。
2度あることは3度あるし、歴史は繰り返すものだ。
(終わり)
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