プロには書けない 米津玄師2023ライブツアー「空想」横アリ6/29 超詳細レポ【中編】
まずはこちらの前編からどうぞ!↓
宇宙を浮遊するような8曲目「M八七」への大きな拍手が鳴り止むと、米津は開口一番、音割れしそうな大声でこう叫んだ。
MC2
「○▲※□〜×◎ッ!■*>!!!!」
はい?残念ながら私には何て言ったのかまったくわからなかった。
「どう?元気かい?」とかなんとか言いながらイヤモニを外し、楽しそうな笑顔で話し出した。
観客席のあちこちから「今っ!サイコー」「今ぁ〜ッ!」「今だよー」と声が上がる。が、自分から質問しておきながら、ボソッと「全然わかんねぇ、ホントわかんね」と塩対応。これは何のプレイなんでしょうか?
ニヤニヤしながら「楽しいことの話していいっすか?じゃちょっと」という前振りに”マインスイーパー漫談”を察知した観客が大歓声で応える。「あのねぇ〜この話、いつまでやるんだと思ってるかもしれないけど長いから注意しておいてね」と半笑い。
今さらかよ!と場内、大爆笑。
「知ってるよ、やったことあるよって人は??」の問いに多くの手が上がる。「うん、布教活動が実ってるのかな?手をあげなかった人はね、家に帰ったらマインスイーパーって検索してやってみてください、めっちゃくちゃ面白いから」
ここから先は多くのレポで出回ってるしっかりと作り込まれたトークが、身振り手振りを交え立板に水の如く繰り広げられる。ほんの息抜きのつもりだったマインスイーパーに取り憑かれ、次第に仕事そっちのけでジャンキー化していく件など、薬物依存のプロセスそのものだ。
トーク中、右側の袖口を何かと気にして触っていた。左右のビジョンに映る顔はうっすら汗ばんで紅潮し、濡れた髪が数本オデコに張り付いている。右頬に小さな吹き出物がある。やたらと瞬きが多い。(メモのまんま)
ツアー終盤ともなればSNSなどで、この話のオチや笑わせどころがバレている。そのせいか、そのポイントにくると自分が先に吹き出しちゃったり妙に早口になって、更なるに笑いを誘っていた。
「私、今、詰んでる状態でここに立ってるんです」という決まり文句にお約束の拍手。「詰んでる人間に送られる拍手って…w 憐みなのか慰めなのか?」までのいつもの流れに、突如「ガンバレー!」と男性客からのエール。想定外の事態に驚き「ブホヘッ・・!」と変な声が出ちゃった米津に爆笑が重なる。
「ほんっとに!面白いんですよっ!マインスイーパーっていうのは!!」とキレ気味に強調し、そのままコナンの爆弾処理エピソードに移っていくのだが、ここまでですでに1500字を超えてしまったので割愛させていただく。
なんだかんだで15分近くもしゃべり続け、いよいよオチへ。
この時、私は気がついた。米津玄師がライブMCの通しネタとしてマインスイーパーをチョイスしたのは、この場面に遭遇したからではないか?
Loser
爆笑MCから一気にボルテージをマックスに振り切り、「バーーーーーンッ!!!」と爆発音を発し激しくヘドバンすると、さっきまで座っていた観客が総立ちになり、踊り、ジャンプし、巨大な横アリが揺れる。
”ここはどうだ?楽園か?”と客席を指差す。”青い顔のスーパースターが”では右手で衣装の肩付近を掴み引っ張る。”行こうぜ、僕らの声”の後はファンが待ちに待った”Hoo!”のご唱和タイムだ。米津は大きく足を開き、思いっきり前屈みの姿勢から右手を高く突き上げ客を煽る。
花道で蠢くように踊っていた大勢のダンサーがステージににじり寄っていく。いつの間にかステージ後方には3階建てのトラスが2台屹立していた。鉄柱に仕込まれたライトが発光し近未来的な不気味さを放つ。センターの大型LEDパネルは折り畳める構造になっていたのかもしれない。
「ゥヒャッホゥーー!!」と叫ぶとダンサーを置き去りにし、歌いながら鉄骨の階段を登っていく米津。最上段に辿り着くと手すりから大胆に身を乗り出し会場を見渡す。その顔がサイドビジョンに映る。落ちてくる前髪を撫でるように左右に分けると挑むような強い視線が露わになる。”掴んで離すなっ!!”は旋律ガン無視で絶叫。
”Hoo!”のたびにフラッシュするバックライト。手すりにもたれてしゃがこみみ客席を見下ろす。最後の”聞こえてんなら声出して行こうぜ”は「もっと声出せっ!!」と言わんばかりの強烈なアジテーションが炸裂。オーディエンスの狂ったような雄叫びにかぶせ「ルーザァ!!」と米津が激しく呼応する。
アウトロでトラスから降りてきた米津はスタッフからギターを受け取り…
Nighthawks
Loserの興奮から一息つく間もなく、赤やオレンジのカラフルなライトの中、Nighthawksがイントロなしでいきなり始まる。ここから怒涛のアップチューンが続く。Bメロのドラムの疾走感がたまらなくかっこいい。
サビからバンドメンバーがサイドビジョンに現れる。ノリノリで手拍子を送る客席スタンドも鮮やかなライトに照らされると、ベースの須藤がさらなる手拍子を促す。
Cメロ手前にギターの中島がBUMP OF CHICKEN「天体観測」のリフを挟み込み、”懐かしい音楽が〜”の歌詞へと続く。小学生だった米津にとって音楽の原体験とも言えるヒット曲。音源にも入れたかったのにアプルーバルが間に合わなかった。それを今、ライブで演奏しているのは幼馴染みのギタリスト。エモいにもほどがある。
”手の鳴る方へ”直後のブレイクで暗転。強烈なバックライトとともにラスサビへ。
まさにその伸ばされた手に向かって銀テープが勢いよく発射される。キラキラと輝きながらゆっくりと落下する”思い出”たちの争奪戦。バンドメンバーも米津も楽しげにノッている。
”もしもこのまんま明日”がこなくても、今この瞬間はみんな笑っていた。
ひまわり
音源にはない水泡が上昇するような高揚感のあるSEに続き、ひまわりのギターリフがイエローの照明と混ざる。サイドスクリーンの縁取りも黄色く光っている。
フレーズごとのビブラートが慟哭のようなシャウト。荒々しく歌えば歌うほど深い悲しみに襲われる。それを蹴散らすように吐き捨てるブレスアウト。
幼い頃の憧れがBUMPなら、ボカロP時代の憧れであった彼への想いもまた、自分の原点を曝け出すこのライブでは必須だったのかもしれない。間奏でひとつずつ灯っていくライトが天国からのレスポンスのように見える。
音源より長いアウトロで真っ赤なライトを浴びギターを掻きむしる米津。残響がそのまま続きトラス越しに真っ白な閃光が迸った。
ゴーゴー幽霊船
「横浜ぁ!ノってかっーーーーッ!!!」
ウォーーーーッ!!!ギャァ〜ーーー!!
ワイルドなバンドサウンドから一転。ピコピコポンポンと跳ねるような「ゴーゴー幽霊船」へとなだれ込む。気合の入った「ワン・トゥー・スリーッ!」に否が応でも盛り上がる場内。スモークが吹き上がる。
ライトが目まぐるしく点滅し、白いムービングライトが乱舞。”あんまり急に笑うのでぇえぇぇ〜”ではステージがパープルに染まる。中島と須藤が演奏しながら前に出てくる。
観客の手拍子がリズム隊を凌駕するほどの大きなうねりとなり、米津の”全部忘れてぇ↑”に続き、”わぁわぁわぁわぁ”と声を張り上げる。物凄い一体感に「ホゥフッ!!」と高い声で応える米津。
”1・2・3・4・5・6・7・8”の時はステージ天井側の照明を兼ねているLEDビジョンにデジタルナンバーが明滅。”さっ・さっ・さっ・さっ3千年の〜”からの大合唱にオーディエンスのリミッターは完全に破壊された。
KICK BACK
そこに空かさずトドメのKICK BACKだ。そろそろ失神者が出てもおかしくない。吹き上がる炎が真っ赤なステージを熱く燃え上がらせる。トラスの1マスに1人ずつ囚われた12人のダンサーたちが、キレッキレの振り付けで踊り出す。
声にエフェクトがかかっているせいか、ミキシングボリュームのせいかわからないが、かなり音が割れてて聴きづらい。だが、ギラギラとした欲望丸出しの本能的なパフォーマンスにはこんな荒ぶるサウンドがマッチしている。「変身」でもやっていた胸を揉みしだく仕草や理性がぶっ飛んだイカれた目もKICK BACKそのものだ。
"笑ってくれマイハニー"の後に繰り返す”努力・未来・A BEAUTIFUL STAR”の3回目を客に歌わせるコール&レスポンス。
Cメロはブルーのレーザー光線がオーロラのように低く客席を覆い、雲海のような美しい光景が広がった。
そして2コーラス目、米津がおもむろに小型ムービーカメラを撮り出した。いつの間にかトラスが消え、再び現れたバックスクリーンに米津が撮る映像が大映しになる。ステージに降りてきたダンサー、バンドメンバー、そして本人の自撮り。
ドアップで挑発的に舌を出し不敵な笑いを浮かべて歌う。最後の”努力・未来・A BEAUTIFUL STAR”の3回目は”超・超・超・超いい感じ!!”とアレンジ。これはサンプリングを許可してくれたつんくへのリスペクトか?
こうして、Loserから一気呵成に駆け抜けた5曲が終わった。ちょっとした有酸素エクササイズだ。500gくらい痩せたかもしれない。
MC3(前編)
あっちぃーーっい!!
そうだろ、そうだろ、あれだけのパフォーマンスをやりきったのだから。
勢い込んで話す米津に「サイコー」「大好きー」と声援が飛ぶ。
「それ何ー?」という声をスルーして、チューチューとストローを吸う。「フッw みんな飲んでよね、お水をね」と場内飲食禁止の会場で言う。
「愛してんぞおー!」「愛してる」「愛してるよー」のこれまたお約束のラブコールには「あ”ーどーもありがとうございます!」早口の大声で返す。嫌がってると言うよりおちょくってる感じ。
と、ここからまたしても長い長いトークが始まった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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