見出し画像

米津玄師がロエベのアンバサダーになった理由は何なのか?

 米津玄師が「LOEWEロエベ」のメンズキャンペーンアンバサダーに起用され、2023AWの最新ルックに身を包んだゴージャスな広告ビジュアルが話題となっている。

六本木ヒルズ(ReissueRecords公式Xより)
渋谷大型ビジョン
LOEWE 公式Xより
広告掲出開始の8/7
”LOEW”E及び”ロエベ”を含むX(旧Twitter)ポスト数が急増

アジア、特に日本で大人気のLOEWE

 1846年、スペインで誕生したLOEWEは、1996年に世界最大級のコングロマリットLVMHの傘下となった。

 クリエイティブディレクターに当時若干29歳だったジョナサン・アンダーソンを迎えた2014年シーズン以降、パズルバッグ、ハンモックバッグなどの革新的なヒット商品を連発。


日本の折り紙から着想を得たと言われているパズルバッグ
LOEWE公式 ECサイトより


LOEWE公式 ECサイトより

 最近では5万円程度で手に入る「アナグラム タンク」がインフルエンサーたちのSNSをきっかけにバズり、若年層にも広くLOEWE人気が爆発したと言われている。

アナグラムタンク
LOEWE 公式ECサイトより

THE LYST INDEXが四半期ごとに発表する世界で最もホットなブランドの最新ランキングでPRADAやGUCCIなどのビッグメゾンを抜いて1位に輝き、売上も2021年は前年比で38%、前々年比で32%増と大きく成長している。(FashionNetWorkより

 その内訳を見るとアジアでのシェアが47%にも達しており、全体の25%を占めているのは日本だ。クリエイティブディレクターのジョナサン・アンダーソン自身のシグネチャーブランド「JWアンダーソン」は2017年からずっとユニクロとコラボ商品を展開するなど日本とは馴染みが深い。

FashionNetWorkのデータを元に筆者が作成した図

 その日本にLOEWEが上陸して50周年となる今年、プロモーションに気合が入るのは当然だろう。「TOKYO1973」と題した限定バッグのキャンペーンには窪塚洋介などがフィーチャーされている。

LOEWE TOKYO1973記念 限定バッグコレクションより

 さらに各国の様々な分野で活躍する人たちが多数起用された2023プレコレクションには日本人としては春夏に夏木マリ、秋冬には米津もファンだと公言している北野武が登場した。

LOEWE 2023プレSSキャンペーンより
LOEWE 2023プレAW キャンペーンより

LOEWEの徹底したタレント起用戦略

 年配の富裕層だけでなく、一般の若年層にまでLOEWE人気を浸透させた一因は徹底したタレント起用にある。

 6月にはInstagramフォロワーが1104万人を超える韓国の人気アイドル/ラッパーのテヨンがグローバルアンバサダーに就任し、来期2024年の春夏コレクションのランウェイを飾ることがアナウンスされた。

グローバルアンバサダー
LOEWE 2024SS ランウェイに登場予定

クリエイティブ ディレクター ジョナサン・アンダーソンのコメント

テヨンをロエベファミリーに迎えられることを嬉しく思います。彼は長い間ロエベに憧れを抱き、着用してきたというブランドとの特別なつながりがあり、私たちは彼の個性的なスタイルを愛しています。ソングライティング、パフォーマンス、ビジュアルクリエイションと、多くの才能を持つテヨンとのコラボレーションが何をもたらすのか、本当に楽しみです。

プレスリリースより

 また、イギリス人俳優、アメリカ人ミュージシャンも2023AWメンズキャンペーンを彩っている。

ジェイミー・ドーナン(俳優:イギリス)

LOEWE 2023SWキャンペーンより

オマー・アポロ(ミュージシャン:アメリカ)

LOEWE 2023SWキャンペーンより

 レディスも韓国のアイドルグループNMIXXやカナダ人俳優Taylor Russellなどがグローバルアンバサダーを務めている。

グローバルアンバサダーNMIXX
LOEWE 2023SS キャンペーンより
グローバルアンバサダーTaylor Russell
LOEWE 2023SSキャンペーンより

 他にも書き出したらキリがないほどの芸能人、文化人、アスリートなどをLOEWEの広告塔として起用し、その影響力をフル活用しているのだ。そして、2023秋冬は米津玄師がメンズコレクションの顔としてキャンペーンを牽引する。

 米津についてはLOEWE公式にはグローバルアンバサダーという記載はなく、おそらく今期キャンペーンの単発起用と思われるが、最重要市場であるアジアでの知名度、人気ともにトップクラスの米津に白羽の矢を当てたのは大正解だろう。

ナタリーより

ハイブランドのアジア人タレント起用はLOEWEだけじゃない

 例えば、CHANELは小松菜奈をアンバサダーとして迎え、2023-24AWプレタポルテコレクションの映像で大々的にお披露目した。

CHANEL 公式インスタグラムより

 他にも多くの芸能人、アスリートが名だたるハイブランドのアンバサダーとして名を連ねている。(グローバルかローカルか?複数年契約かシーズン単発かなどの詳細は不明)

最近の主な日本人アンバサダー

 これにBTSなどK-POPをはじめとする韓国人スター、中国の芸能人も加えたらアジア人だけでも相当な人数に及ぶ。

BTSメンバーがアンバサダーとなっているブランド

 かつては欧米のスーパーモデルやハリウッドセレブの起用で富裕層の選民意識をくすぐっていたラグジュアリーブランドだが、近年は顧客の高齢化と若年層のブランド離れに危機感を持っているとも言われている。

 そのため、ブランドの顔をターゲットに合わせて細分化し、イメージの鮮度を保ち、知名度を上げるために、人気タレントやインフルエンサーの影響力、拡散力に大いに期待をしているのかもしれない。

 高価なオートクチュールやコレクションラインのウエアが売れなくても、財布などの小物が数多く売れてくれれば御の字という話もよく聞く。

米津玄師がLOEWEとコラボした理由

 もはやアジアの目ぼしいスターたちはほぼ使い尽くされてしまったような状況で、名実ともにトップクラスのアーティストであり、188cmのモデル体型の米津玄師が今まで残っていたのが不思議なくらいだ。(2020年に各国のインフルエンサーが一斉にインスタ投稿をするGIVENCHYのキャンペーンには参加していたが)

 オファーがなかったのか、断っていたのかは知るよしもないが、今回のオファーを米津が受けた理由はなんなのだろうか?

 あくまでも個人的な偏見ではあるが、今までの服に関する米津の発言を鑑みるに、LOEWEなどのブランドが大好きなファッショニスタとは思えない。何よりも私が違和感を覚えたのは”音楽”が絡まない、”ビジュアル売り”であるという点だ。

 以前の記事にも書いたが、米津が出演する広告は必ず自身の”音楽”とセットだったし、ファッション誌にハイブランドの服を纏って登場するにしても、”音楽”に関するインタビュー記事としてだった。

 では、契約金やギャラ目当てか?それとも、クリエイティブコンセプトに共鳴したからか?そのどちらもあるかもしれないが、ジブリ美術館のスポンサーであり、2021年から3回に渡ってコラボ商品を展開しているLOEWEだからこそ受けたのではないだろうか?

LOEWE公式サイトより
ELLE ON LINEより

 米津にとって、ジブリ、そして長年に渡って私淑してきた宮崎駿監督という存在は途轍もなく大きなものに違いない。

師匠のような存在として宮﨑駿さんを求めていたのかもしれない。偉大な師匠として、もっと言うと、父親のような存在として。

2023ナタリーインタビューより

“光栄である”と感じることは、もうこれ以上ないだろうなと思うんですよね。(略)この曲を作れた現状は、これ以上ない光栄だと思っています。

GINZAインタビューより

 そのジブリと縁深いLOEWEと米津の巡り合わせは、コマーシャリズムを超えた必然であり、深い愛情とリスペクトを感じずにはいられない。あの美しい広告ビジュアルの奥底から「地球儀」が聴こえてくるような気がするのは私だけだろうか?

最後まで読んでいただきありがとうございます。
もしよかったらスキ・フォロー・シェアをしてね

米津玄師を深堀りした濃厚マガジンはこちらです。↓

*文中敬称略
*Twitter、noteからのシェアは大歓迎ですが、記事の無断転載はご遠慮ください。

*X(旧Twitter)アカウント
@puyoko29

*インスタグラムアカウント
@puyotabi

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?