米津玄師がロエベのアンバサダーになった理由は何なのか?
米津玄師が「LOEWE」のメンズキャンペーンアンバサダーに起用され、2023AWの最新ルックに身を包んだゴージャスな広告ビジュアルが話題となっている。
アジア、特に日本で大人気のLOEWE
1846年、スペインで誕生したLOEWEは、1996年に世界最大級のコングロマリットLVMHの傘下となった。
クリエイティブディレクターに当時若干29歳だったジョナサン・アンダーソンを迎えた2014年シーズン以降、パズルバッグ、ハンモックバッグなどの革新的なヒット商品を連発。
最近では5万円程度で手に入る「アナグラム タンク」がインフルエンサーたちのSNSをきっかけにバズり、若年層にも広くLOEWE人気が爆発したと言われている。
THE LYST INDEXが四半期ごとに発表する世界で最もホットなブランドの最新ランキングでPRADAやGUCCIなどのビッグメゾンを抜いて1位に輝き、売上も2021年は前年比で38%、前々年比で32%増と大きく成長している。(FashionNetWorkより)
その内訳を見るとアジアでのシェアが47%にも達しており、全体の25%を占めているのは日本だ。クリエイティブディレクターのジョナサン・アンダーソン自身のシグネチャーブランド「JWアンダーソン」は2017年からずっとユニクロとコラボ商品を展開するなど日本とは馴染みが深い。
その日本にLOEWEが上陸して50周年となる今年、プロモーションに気合が入るのは当然だろう。「TOKYO1973」と題した限定バッグのキャンペーンには窪塚洋介などがフィーチャーされている。
さらに各国の様々な分野で活躍する人たちが多数起用された2023プレコレクションには日本人としては春夏に夏木マリ、秋冬には米津もファンだと公言している北野武が登場した。
LOEWEの徹底したタレント起用戦略
年配の富裕層だけでなく、一般の若年層にまでLOEWE人気を浸透させた一因は徹底したタレント起用にある。
6月にはInstagramフォロワーが1104万人を超える韓国の人気アイドル/ラッパーのテヨンがグローバルアンバサダーに就任し、来期2024年の春夏コレクションのランウェイを飾ることがアナウンスされた。
クリエイティブ ディレクター ジョナサン・アンダーソンのコメント
また、イギリス人俳優、アメリカ人ミュージシャンも2023AWメンズキャンペーンを彩っている。
ジェイミー・ドーナン(俳優:イギリス)
オマー・アポロ(ミュージシャン:アメリカ)
レディスも韓国のアイドルグループNMIXXやカナダ人俳優Taylor Russellなどがグローバルアンバサダーを務めている。
他にも書き出したらキリがないほどの芸能人、文化人、アスリートなどをLOEWEの広告塔として起用し、その影響力をフル活用しているのだ。そして、2023秋冬は米津玄師がメンズコレクションの顔としてキャンペーンを牽引する。
米津についてはLOEWE公式にはグローバルアンバサダーという記載はなく、おそらく今期キャンペーンの単発起用と思われるが、最重要市場であるアジアでの知名度、人気ともにトップクラスの米津に白羽の矢を当てたのは大正解だろう。
ハイブランドのアジア人タレント起用はLOEWEだけじゃない
例えば、CHANELは小松菜奈をアンバサダーとして迎え、2023-24AWプレタポルテコレクションの映像で大々的にお披露目した。
他にも多くの芸能人、アスリートが名だたるハイブランドのアンバサダーとして名を連ねている。(グローバルかローカルか?複数年契約かシーズン単発かなどの詳細は不明)
最近の主な日本人アンバサダー
これにBTSなどK-POPをはじめとする韓国人スター、中国の芸能人も加えたらアジア人だけでも相当な人数に及ぶ。
かつては欧米のスーパーモデルやハリウッドセレブの起用で富裕層の選民意識をくすぐっていたラグジュアリーブランドだが、近年は顧客の高齢化と若年層のブランド離れに危機感を持っているとも言われている。
そのため、ブランドの顔をターゲットに合わせて細分化し、イメージの鮮度を保ち、知名度を上げるために、人気タレントやインフルエンサーの影響力、拡散力に大いに期待をしているのかもしれない。
高価なオートクチュールやコレクションラインのウエアが売れなくても、財布などの小物が数多く売れてくれれば御の字という話もよく聞く。
米津玄師がLOEWEとコラボした理由
もはやアジアの目ぼしいスターたちはほぼ使い尽くされてしまったような状況で、名実ともにトップクラスのアーティストであり、188cmのモデル体型の米津玄師が今まで残っていたのが不思議なくらいだ。(2020年に各国のインフルエンサーが一斉にインスタ投稿をするGIVENCHYのキャンペーンには参加していたが)
オファーがなかったのか、断っていたのかは知るよしもないが、今回のオファーを米津が受けた理由はなんなのだろうか?
あくまでも個人的な偏見ではあるが、今までの服に関する米津の発言を鑑みるに、LOEWEなどのブランドが大好きなファッショニスタとは思えない。何よりも私が違和感を覚えたのは”音楽”が絡まない、”ビジュアル売り”であるという点だ。
以前の記事にも書いたが、米津が出演する広告は必ず自身の”音楽”とセットだったし、ファッション誌にハイブランドの服を纏って登場するにしても、”音楽”に関するインタビュー記事としてだった。
では、契約金やギャラ目当てか?それとも、クリエイティブコンセプトに共鳴したからか?そのどちらもあるかもしれないが、ジブリ美術館のスポンサーであり、2021年から3回に渡ってコラボ商品を展開しているLOEWEだからこそ受けたのではないだろうか?
米津にとって、ジブリ、そして長年に渡って私淑してきた宮崎駿監督という存在は途轍もなく大きなものに違いない。
そのジブリと縁深いLOEWEと米津の巡り合わせは、コマーシャリズムを超えた必然であり、深い愛情とリスペクトを感じずにはいられない。あの美しい広告ビジュアルの奥底から「地球儀」が聴こえてくるような気がするのは私だけだろうか?
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