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ただとにかく汚いものにはしたくないのだ、あの頃の記憶を。だからこんな風なのか。

 人の感情に気付きたい、だから最初にまず自分の感情を整理していた。
 1年間、大切にし、大切にされた友達に言われた言葉がある。

「あのさ、発言した時の感情って覚えているもの?」
 という投げかけだった。
 私はそれに対して、「どうだろう」と返した。私はそれぞれがどんな気分だったか覚えているのか。

 そもそもこの投げかけられた言葉、確か私が何か「あんなにいろいろ言われたの!それで泣いたことも覚えてるし、腹が立って仕方なくなることがある。ずっといい子だったでしょうが。あなたの前で。」という主張に対するもの。間伸びさせすぎた怒りをずっと引きずって、構い倒されるまで構ってもらった。

 うえのやりとりからもう3ヶ月。私はいまだにそのことを覚えていて、親に聞いてみる。
 すると、「変化するものはあるだろうな」という。

 友達は、私の親よりは年下で、私よりは年上だった。遥かに。
 その部分について張り合おうとするほど、笑われた。
 しっかりしっかり覚えている、あなたはそうじゃないのだろうか。

 忘れてしまえる。
 それはとてもあっさりした生き方だなあ。
 素敵なのだろうか、現状はあなたも”地獄だ”と自他ともに認めるように、大変そうだけれど…。だから黙りこくって、うんともいいえともつかない答えを残した。彼女は笑っている。”ここは地獄だ”と言いながら。
 私は彼女の地獄が重たいものにならないように彼女がどうにでも投げ上げた世界を、そのまま置き去りにすることにした。

 どうしても重たかった。愛情は失われていなかった。でも必死になるのは馬鹿らしかった。辛かった、私は何度も言ったのだ、「それは正しいと言えるのか」と、無意識に、彼女にずっと投げつけていた、態度で。

具体性がまるでないのを、許していただきたいような気持ちだ…。
私は私が大切でも、できるだけ開示できる部分は確かに開示しているし、開示できない部分は確かに開示しない。騙したいわけではなくただ一言、

 
…多分お互いに絶対に迷惑をかけない方法を模索したんだ。…私のためにそこまでする必要なかったじゃない、…。

 私が直接迷惑を実際にかけたのは”眠れない夜を過ごした結果、遅刻に遅刻を重ねたせいでルーチンが狂った職場”だった。あれはめちゃくちゃ迷惑だった。それでいてものすごく動悸が激しい日々を過ごした(しかも無責任にもそれを彼女は羨ましがっているようにさえ見えた)。

 それ以外には…というかそこに迷惑をかけたことこそ猛省すべきなんだ。
本当にごめんなさい。本当にごめんなさい。本当に、ごめんなさい。土下座したって返ってこないんだよ。職場の、私に対する、白眼視は。「この不手際に関する処置が如何様なものであっても、それを受け止める」と、何十ぺん書いたことか。でもこんなの全く彼女のどこにも響かないだろうから。
 確か一度は言ったけど。

 ああ、もう、地球規模の戦争じゃないのに、私はいつまで怒っているんだろう???

 全然関係がなかった人に謝罪の言葉を流しそうになったり、目に入ってくる人の全てが私のせいで不幸になっているようなおかしな妄想。それを、「その場にいない人が家に帰った後でどうしているか心配するなんていうのは仕事しすぎです」という呟きのRTを人が回してきて、
 自分勝手にも(この人優しいな)と思ったりし、
(関わってほしいと一言も言って居ないし、大事な人には全く触れてもらえなかったし、そもそもそれが私のためだと思うことすら自意識過剰だ)と思い、
挙句に その友人(多分本当に一瞬だけでも友人だった)に絶縁と言ってくれと願って怒らせ、絶縁させた。
 誰にも関わりたくなかった。私のせいで。だから優しい人に酷い態度を送りつけた。ん?ここで他人にとやかく言われたくて懺悔してるの?いや、よくわからない。反省はしてる。改善も、もうした(半年経った)。

 あちらは。私は。もうつながりの一つもないままで、
 私のことが風化するほど忙しい毎日を送るだろう。

 私もそういう毎日を送ろう。

 果てしもなく。不毛な日々に私がさせてしまったんだ。
 心が浮き沈みするの、当たり前なのに、あれほど隠させたのに。
 私も隠し続けたのに。


 今もまだ、ないている。(この感情は怒りなんだ)と思いたくなくて、ないている。愛情だったと思いたくて、泣いている。私が信じ、付き合っていた人が、彼女のいう通り”彼女が悪人だった”とさえ思いたくなかったのに、やっているのは感情のレイプだったとどうしても私の口がそう言おうとする。
 奪われたくないと必死で止めようとするたびに、全然違う方向でぶつかっている私の感情が、呆れ果てた顔で否定された。時に私は居合わせなかった。
 目の前でそうなら、より辛かったろうか。

 隠されているのは庇護の中だったのか?彼らにとってはそういうことなんだろう。あの人のことを好きな私がずっと固定していたらよかったのに。私はあの人が友人を増やそうとするとき、あれほどにまで言葉や重さに気をつけながら歩を進めるのを認めようとしなかった。
 嬉しいくせに、ありがとうと言わなかった。私のせいで面倒なことになっているのを認めたがらなかったのに違いない。挙句、親友が二人で笑い合っている中に、身を置くのが
 心が死んでゆく軋む音を聞いてしまって、ダメだった。

 あんたたち、どっかいけ。と。


 私は彼女に続く電子端末で、ずっと前に漫画の一説を口にしたことがあったと思う。「地獄とは、地上の獄なのですよ。」この時に言った地獄という言葉は、当時非常にポジティブなものとしてお届けしたつもりだった。地上は地獄となんら変わらない。見えないものを恐る必要はない。そのような言葉。
 私の大好きな漫画の1ページに載っていた、とても真摯な老齢な言葉だった上に、そのセリフを言ってくれた漫画は、彼女に印象が似ていたのだ。だから、本質探しを続ける彼女に、”きっとあなたの求めている魔素というものはこういうものだろう”と思って渡した言葉の一つだった。

 …それでも実際に彼女に会った時に知ったのは、一人の女性としての彼女だったけれど。
 私は自分から生み出すことがとにかく下手だったので、いろんなものから譲り分けてもらいながら彼女と対話をしていた。

 いつもものすごく早いスピードで私の前からいなくなり、感情を他の人に書き換えられて帰ってくるあなたへ、私がまごついてその瞬間に出せてこない答えは、
いつもあなたの中ではなかったことになるでしょう…?お互い様だったけれど。(ひとまずは置いておこう)と思ったんだ。私は。

 他人に書き換えられて、書き換えられて笑い続けるあなたを、私はどういう感情で見ればいいのか、いつもわからなかった。
 ただ私に触れた時のことだけを覚えている。
 私は愛された記憶しか思い出せない。そんな魔法をかけられているからだ。この魔法は、他の人と関わると明滅した。(消していいと思っているのか)と問われた。

 あなたの周囲にいる人と関わると途端に消え失せた。なんだ、私がいなくても楽しそうだ。大丈夫そうだ。大丈夫、ですよね?

 私の知らない物語。それでも”私が一番あなたに愛されていた”と示そうとして、随分な言葉を投げつけたのだろうと思う。私があなたの周囲にいる人間の中で、私があなたに一番愛された人だった。
 あなたの夫を除いて。

 あの輩となぜ私が同じに見えた?

 あの親友となぜ私が同じに見えた?


 なあ、あなたの夫がいなくなることになるとしても、私はあなたの隣にいていいのだろうか。分を弁えているつもりではみ出したのではないだろうか。いつからあなたは昔から夫とうまくいかなかったのだろうか。私も彼もいてもよかったはずだったのに。
 「結婚もしていて、あなたという友人もいて、私はこんなに幸せで良いのかな」というあなたを、私は否定しなかったでしょう。別に何にもおかしな関係ではなかったあの頃を、それを私は、守れなかったのだとしたら。

 私と一緒にいるときだけしか楽しいことがないという、それすら私は信じられなかった。あなたはどこにいて何をしていても笑っていた。

 私はあなたが心の底から欲する犠牲者に成れただろうか。
 私の目に映るあなたはいつも人を殺したがっていたけれど。

 もちろん悪魔付きみたいな話にしたくなかったから、
 私はどうにか普通にしていたのに。

 殺人者。”私と彼は本質が同じ”というのなら、つまりそういうことでしょう。
 自分を押し殺すもの、そういう意味でしょう。手を差し伸べるの、当たり前になるんでしょ?周りの誰もが。あなたのことを好きになるくらい”普通のこと”なんでしょう。最低のクズが。

 
 あなたは生きていくのだから。私と同じ目にあう未来よ、ごめんなさい。私が彼女を殺すことができなくて。こんな言葉の一つも、あの頃彼女にはもうとてもじゃないけれど正しい(私が伝えたいと思う正しさで)伝わり方をしなくて、「ポジティブな言葉しか欲しくない!」とひよこのように叫ぶ姿を、私は(ごめんなさい)と思いながら離れた。

 ただただ辛かった。私も彼女もお互いをいじめぬき、寂しさからそばに寄り、今全てを失って別の道を歩んでいる。
 あなたの夫が不倫をしていたかわからないなりに、浮気の現場のようなものをチラつかせた時に、あなたの味方をしてあげられて居ただろうか。私は。落ち着いて欲しくて別の可能性を見せたりしたけれど、わかっただろうか。私の性格を。
 …逃げたかったように見えただろうか…。私は、余裕がない場所で選択するのは避けたかった。



 私の認識の仕方が間違っているのは知ってたんだ。こういう言葉を言う年配の女性の相手を職場で何度もしてきたから、彼女があの場で”ここは仕事です””仕事仲間がいるんです”と言う以上、そう、”客”というのは私なのだろう。”客”。客に求められているのは、笑顔で受け取り返すこと。

 その瞬間に、私はうんざりした。

 私はそんなにも迷惑な客の役しか勤められないのか。いいえ、私は客を迷惑だと思ったことなど一度もなかったよ。私は、だって私は一応は一介のベテランと呼ばれる場所の人間で、
 どう足掻いたって社会で起きる全ての責任を自分で取らねばならない。あなたのような、一年目に迷惑な客に対し不安定にとにかく泣きじゃくる新卒を想起させる人ではなかったし、職場にいて情緒不安定にも泣きじゃくる離婚調停後のシングルマザーでもない。でも、あの呟きだけがこだまする場所における態度の出し方によって”われわれは仕事をしている”とあなた方がいうようならば、私はその場所を破壊する厄介極まりないレッドカードやろうだったに違いない。


 なぜそばにいられないのかはお互いが一番わかっていた。時間と心が欲しかった。それでも彼女が他人の手を借りないといけないということもわかっていた。
 私の手紙なんて読まないくせに、自分の手紙ばかり押し付けてくる彼女の中の彼を殺そうとする私。”社会的信用がない者同士”では、何にもできるようにはならなかったんでしょうね。「私はしっかり仕事をしていた」、「あなたもしっかり仕事をしていた」、それなのに。

 飽きてなどいません。覚悟がないと笑うなら笑え、
 罵倒するのなら自分が最低である自覚くらいしてくれ。



 もうあなたとは友達になれないと誰も言わないのに、
 誰も言わないのに。どうしたらいいんだよ、と言われたらこう答えてしまうだろう。

「どうしたくもない。傷つけあったのは私と彼女の間の話だ。相談したいわけじゃない。整理したいのに、もう取り合えない。好きだったことが辛いってなんで踏み躙られたような声が出るんだろう。こんなに幸せなのに。」

 好きだったことすら、全部なかったことにしたい。
 それでいてまだ、ラインのスタンプが送れないのは、私の方なのだ。
 きっと君の頭の中ではな。


 泣いている間の自分を可愛がってやりたいという軟弱なだけの輩なのだろう。
 明日にはまた私の頭は、仕事の事でいっぱいになる。
 やり損ねた青春が私を殴りにくる。
 笑顔を作らせに。


 頑張っているから、遠くで叱ったりしないでよ。褒めて。
 …あなたが私を笑顔にしたんだよ、無理やり。したくもないを貼り付けて続けてきた仕事のために。でもいまだに泣いてしまうから、
 あなたが他の人と幸せな姿だけは、きっと安心して見守ることができない。だから家になど行かない。会社になど行かない。なぜあんなもの教えたんだ。

 あなたたちは言った。”嫉妬する君は美しくない”と。
 私は思った。”嫉妬さえ許容できない人間を、女じゃないとは思えない”。

 嫉妬心の渦巻く場所で、煮湯を飲んで仕事をしてきた、多分それがあなたをダメになった理由だった。

 最初から、ハナから住む世界が違ったよ。それでも愛情をもらってしまったと信じています。遠くで叱ったり、しないで。褒めてよ。軽々しくあなたを好きだということさえできない私の目の前で、好きだとのたまったあの者を殺さずに許した、私のことを。

 あの者のいう”好き”という発音は、きっとあなたにとって必要な養分だった。
 そう思うと、あなた方の関係に吐き気がしてたまらない。
 あなたが私をその位置に置きたがった、そのことから全て、否定する。
 カップリングなど糞食らえ。あなたの好きなその世界など、2度と好きになるものか。繊細な男が嫌いなのだろう?
 そりゃよかったな!私は女だ!私は男が好きなのじゃない。あなたのような色狂いじゃない。

 私が好きだったのは、女性性だった。あなたの中に一欠片だけ残っていた、今にも消えそうな女性らしさだった。頑張っているあなたの雄叫びのような、守るもののための女性らしさが私はえらく好きで、それでいてサポートできなかった。
 男どもの言う、「甘えではないか」と言う声が、脳内で消えなかった。私が戦っている社会というのは、酷く舐めたもので、優しい人でいっぱいだから。

 味方でなく、敵でなく、私は一体なんなのだ。友人でなく、恋人としては不完全で、私はどうしたらよかったのだろう。手を出されるだけで満足して笑う傀儡のような、あの場所から今も泣いている。何度言ってもどうにもならない。
 幸せになれ。世界に蔓延る、優しい漫画の王子のような、手の差し伸べ方も素直な言葉も何にも持ってはいない。
 祈りなんていう意味のない言葉で、遠くからあなたを呪う。罪悪感で死にそうになりながら、娘を一人で育てなければならなくなってしまったあなたを。

 愛してるなんて言えない。


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