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短所を長所に変えたいやき

自分にはどんな長所があるのか… 自分は他人にどう見られているのか… 性格診断ゲームです。対象年齢15歳以上とありますが、ことばや性格に関心があれば、小学校高学年や中学生でも十分遊べます。ルールは簡単。その上、発見が多い。自己紹介ゲームにもなる… ゲームの紹介をしていたら、自分にもオモテとウラがあることに気がつきました。

1. ゲームの紹介

まず何でもいいから、カードを一枚とって見ると、「論理的」。裏返すと、「理屈っぽい」。つまり、同じ性格でも、良く言えば「論理的」だけど、悪く言えば「理屈っぽい」ってことです。それぞれ、「なりたいやき」「やめたいやき」と呼びます。

それから、「理屈っぽい」のカードには矢印があって、その先は32番。カードを探すと、そこには「自分に素直」。つまり、「理屈っぽい」人は、「自分に素直」な人と相性がいい、ってことです。

良く言えば「論理的」で、悪く言えば「理屈っぽい」人は、良く言えば「自分に素直」で、悪く言えば「感情的」な人と相性がいい、ということです。ほんとかな… でも、自分の短所を補い合っている関係であることは、まぁ、わかります。

遊び方その1:カルタで変えたいやき(3人以上用)

1. 取り札の「なりたいやき」をオモテにして並べる
2. 読み札の「やめたいやき」を読む
3. 同じ性格で、よく言いかえられたカードを探してとる

つまりは「カルタ取り」です。

例えば、読み手が「変人の彼は理解できない絵を描いた」と詠んだら、取り手が「芸術家肌」のカードを探して取る。「変人」のなりたいやきが「芸術家肌」であることを知らないと、お手つきしてしまうかも。でも、やっていればすぐ覚えます。

自分の短所にとらわれている人が、その長所の側面に気づく。ポジティブ思考のトレーニングです。

遊び方その2:自分のいいとこ知りたいやき(1人用)

1. 取り札の「やめたいやき」から、自分の短所を5枚選ぶ
2. 選んだカードを裏返すと、自分の長所が現れる
3. 矢印の先にある番号のカードを探すと、自分の短所を補うパートナー像が現れる

一人遊びです。自分の「いいとこ診断」と「パートナー診断」ができます。トランプ占いとか、タロット占いみたい…

遊び方その3:イメージ調査したいやき(4人以上用)

【ゲームの準備】

1. 親を決めて、取り札の「なりたいやき」から、自分の長所を8枚選んで隠しておく。
2. 子に、すべての読み札を配る。

自分から見た自分と、他人から見た自分は違うもの… つまりは、親の性格について、自己評価と他者評価がどれくらい一致していて、どれくらいずれているかを診断するゲームです。

【ゲームスタート】

1. 子は「なりたいやき」を見ながら、親のイメージから遠いカードを1枚選んで捨てる
2. 1枚捨てたら、左隣の人に、持っているカードをすべて渡す
3. 捨てて渡して、捨てて渡して… を繰り返し、全員が持っているカードが合計8枚になるまで絞る
4. 親が隠していたカード8枚の「なりたいやき」を公開する
5. 親のカードと子のカードが一致した枚数=イメージ一致度

「なりたいやき」でプレーするのがミソです。「やめたいやき」でプレーしたら、親は子から「ダメ出し」の集中攻撃をくらって、つらい思いをするかも… 説明書にも、「ケンカに注意!」とあります。

2. 『変えたいやき』で自己紹介する

カードゲームは、アイスブレイカーです。「はじめまして…」の人たちが、打ち解けるきっかけをつくってくれます。そんなわけで、私も、担当していた英語のクラスで利用しました。

気になるカードを1枚見つけて、英語で自己紹介してみよう。ルールは3つ…

1. 「なりたいやき」と「やめたいやき」の、どちらもカバーすること。
2. 100点は狙わないこと。60点~80点で十分。
3. My name is 名前+苗字. は、やらないこと。日本人の名前は英語ネイティブに覚えてもらえない。Hello. I am Ken. で十分。

すると、こんな成果があがりました。

英語モードで自己紹介できる

私は自分を「ロマンチスト(romantic)」だと思っています。まぁ、単なる「妄想癖(day dreamer)」なんですけど… 例えば、こんなことがありました…

「~学校で、~部に所属し、~会社に就職し…」 日本人の自己紹介は、たいてい組織の連続です。その発想のまま英語にしても、聞き手の印象には残りません。「自分は誰なのか?」と「それを示すエピソード」は、英語モードの自己紹介に有効です。

「良く言えば…悪く言えば…」が身につく

私は、良く言えば押しが強い(aggressive)ということになるかもしれないけれど、悪く言えばちょっとずうずうしい(shameless)ところがありまして、例えば、先日も…

どんな表現も、発話者の立場や価値観を帯びています。自分の性格の良し悪しを明確にすれば、それが自己診断であっても、説得力が増します。

言いかえが身につく

英語で「弁が立たない」が思い当たらなくても、いろいろと工夫できます。

形容詞的: I am not eloquent. I am not fluent in speech.
動詞的: I cannot speak eloquently. I don’t have a fluent tongue.
名詞的: I am not a good speaker.
その他: I am not good at speaking.

英語で「優柔不断」が思い浮かばないときは、反対語や類義語で言いかえてみます。

「優柔不断」の反対は? →「優柔不断ではない」 →それって言いかえると? →「思い切りがよくて…」「しっかりと決められて…」「ブレなくて…」 →ということは、「思い切りが悪い」「しっかり決められない」「ブレる」と言えばいいのか… →I am not good at deciding things.

英語で「衝動的」が表現できないときは、その状況を思い浮かべて描写してみます。

When I go shopping, I cannot stop buying things I find. I always buy things without planning.

訳語が思いつかなくても、それを示すエピソードさえあればいい。そして、聴いてくれている人に、逆に尋ねてしまうんです。

What is the word? それって何ていうの?

自己紹介に、すべて自分で何とかしなければならない、というルールはありません。

3. 性格って何だろう…

ゲームの紹介をしていたら、自分の性格に気がつきました。それは、「二面的」です。自分にはオモテとウラがある。だから『変えたいやき』にひかれるのか…

こんな性格に、「なりたいやき」はあるのでしょうか?「本音と建て前」「計算高い」「こずるい」「二枚舌」… 「やめたいやき」ばっかりのような気がします。

英語と日本語。イギリス人と日本人。いつでも、どちらか一方から、もう一方のことを考えています。これを英語で言えば?だったら日本語なら?イギリス人的な自己紹介は?だったら日本人的な自己紹介は?そうした習慣が、二面的な性格をつくったのかもしれません。

マーガレット・サッチャーの性格論

最近、ある映画を見ながら、「性格」について考えさせられました。もう10年近く前の作品なのですが…

最近は「考え」よりも「気持ち」 … 今の時代の問題の一つは
人々の関心は「どう感じるか」で 「何を考えるか」ってことじゃない
「考え」とか「アイデア」こそが面白いのに … 
「考え」は「言葉」になる
その「言葉」が「行動」になる
その「行動」がやがて「習慣」になる
「習慣」がその人の「人格」になり その「人格」が          その人の「運命(さだめ)」となる                 「考え」が人間を創るのよ。 私の父の言葉
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 (2011)』より

私はイギリスの北部に留学していました。ですから、どれだけ多くの人々がサッチャーの政治に批判的か、肌身で知っています。にもかかわらず、そうしたイギリス人の意識の奥底に、サッチャー的な人生哲学が横たわっていることも、経験から知っています。

強い女性ですよね、サッチャーは。そうでなきゃ、総理大臣なんて務まらないのかなぁ… でも、そこには、イギリス人が共有している性格観があるような気がします。

1. 性格は変えられる。
2. 変わるか変わらないか、それは「自分次第」。
3. 性格の起源は「考えること」。「感じること」ではない。

まことにもって、御説ごもっとも。正論だと思います。実際に採用されたり、行われたりすることはない、という意味も含めて「正論」。日本じゃ、ちょっと無理でしょう… でも、イギリスでは採用されたり、行われたりしています。これが個人主義です。

『変えたいやき』の性格論

そこへいくと、『変えたいやき』のなんと弱腰なこと… いやいや、『変えたいやき』批判じゃありません。そこに日本人的な性格観があるような気がして…

1. 短所でも、見方を変えると長所に変わる
2. 短所を補い合うのがパートナーシップ
3. 自分から見た自分と、他人から見た自分は違う

性格が変わると言っても、それは「モノは言いよう」のレベルです。そのものが変わるんじゃなくて、見え方が変わる… ウーン、日本的。

そもそも、どうにもならないのが短所って思いませんか?自分の短所を改める努力も大切だけど、相手の短所を受け入れる努力の方が現実的。これが日本人だと思う。

さらに言えば、性格は相対的。家族の前では「でしゃばり」でも、学校や会社では「引っ込み思案」だったり。その上、性格の自己評価と他者評価が一致しないとすれば、もう、なにをどう変えればいいのか… 自分を変える力よりも、空気を読む力。和を貴ぶ日本人。

マーガレット・サッチャーとたいやき。どちらかに軍配が上がるっていうことではないんでしょう。性格には、個人的な側面と、社会的な側面とがあるってことですよね。私にはどちらもあります。発想の泉であり、悩みの種でもあります。

ちなみに、引用した映画のタイトルは、イギリスではThe Iron Lady。日本では「鉄の女の涙」。「涙」を付け足したところに、日本人の解釈があるように思えるのですが…

「知」に働いて角の立ちまくった女が最後に見せた「情」。たいやきのいい匂いがプンプンしませんか…

参考
『短所を長所に変えたいやき』株式会社アイアップ
Phyllida Lloyd (2011) The Iron Lady (film)
邦題『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

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