学生さんに幸あれ(2)

死んで尚、死にたい気持ちは変わらない。
自分が一向に自分であり続ける事に、
嫌気が差してこその乱心だ。
自分のことが好きとか嫌いとか、
だから楽しいとか辛いとか、そんなシンプルな
生き方なら、前を向くたびに強くなれる。
もうやめたい。終わりたい。消えたい。
「死にたい」はその実現のための欲求であり、
決して、死ぬことが目的な訳ではなかった。
死んでも未だ自分は自分のままなんて、
もう死ぬことも出来ないなんて、
まだ「死ねば楽になれる」と思えていた
生前の方が、遥かにマシではないか。
死んで間も無く死を後悔しているわけだが、
「生きる」から解放された事には、
確かに安堵を覚えているのだ。

校舎の上空を分厚い雲が覆う。
日は閉ざされ、風が強く吹いている。
雨が、直に降る。

門が開くのと同時に入ったその高校には、
生徒が1人も居ない事を願っていた。
職員室にしっかりと落下する影と
肉塊の叩きつけられる音を届けるべく、
飛び降りるのに選んだのは自分の教室から
三つ右の教室。勿論屋上からが良かった。
遺書は残さない。靴も脱がない。
死ぬ気満々な痕跡など残したくもない。
窓の外でひらひらと舞う蝶に手を伸ばすように、
呼吸するのも忘れて死を追いかけていた。

学校の対応は迅速で、生徒もちらほら現れる頃に、
それを遮るように緊急車両が次々と入ってきた。
自分は、まだ自分の遺体を見下ろしていない。
綺麗な遺体なら一目見に行っても良いが、
転落死だしな…。
緊急保護者会とかいじめアンケートとかで波が立った学校はあまり好きじゃないが、好きじゃない光景を他人事で見られるのは嫌いじゃない。

死んでしまったら、やっぱり生徒では居られないな。
学校を歩くのに違和感がある。
死んでしまったら、やっぱりさっぱり消えたかった。
感覚に現実味がない。全てが不干渉で流れていく。
この手応えの無さは何だ?
死んで形のない何かを失い、存在し続ける。
何かで埋めなければ、
その穴から崩れて消えてしまいそうだ。
「在る」ことを確かめなければ、
ただ「在る」ことが辛い。「在る」だけでは辛いよ。

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