子供の頃、私は保育園に通っていた。 東京の郊外ながら少し広い園庭には、ブランコや砂場、ジャングルジム、すべり台といったいろんな遊具が置かれていて、夕方、親が迎えに来るまで飽きることもなく、よく遊んだ。 その園庭の一角に、鉄棒もあった。3つほど連なってあったそれは、支柱を赤や黄色でカラフルに染めていて、子どもの興味を引くには、極めて効果的な色をしていた。 おむつも取れないような小さいうちは(記憶もないが)恐らく、見上げて眺めることしかできなかっただろう。しかし、ある日、
習い事の帰り道。最寄りのひとつ手前の駅で電車が止まり、待てど暮せど動かないので、しびれを切らしてタクシー乗り場に走ったのだった。 時刻は0時を回っていた。同じような帰宅する人々の列に少し並び、自分の目の前にちょうど良く停まった黒いセダンのタクシーに乗り込んだ。 「すみません、三丁目の公園の辺りまでお願いします」 行き先を告げ、シートベルトを付けて、ホッと人心地ついたような気がした。 明るすぎる騒々しい電飾だらけの駅前を抜け、車は大通りをスイスイと走った。 家