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料理も食事もシンプルでいい

みなさんはお料理が好きですか?

長年リフォームやリノベーションに携わる中で
いつも感心してしまうのが、
お客様のキッチンへの情熱です。
キッチンは、まるで家の心臓のように、
家の中でとても重要なポジションにあります。

お客様とショールームに行くと
当初の予算よりもハイグレードなものを
選ぶお客様が多いのも、その情熱の表れです。

特にインテリアにこだわりがないお客様でも

「キッチンだけは気に入ったものを」
「キッチンは良いものを」

とリクエストされることがよくあります。

逆に、
ご主人様がインテリアにこだわりが強く、
奥様は特に主張されない場合でも、
キッチンの話になると急に

「キッチンだけは
彼女の好きなものにしてあげたい。」

とおっしゃるのです。
家族の食卓を支える場所として、
キッチンが特別な場所であることがうかがえます。

しかし、実は私には、
キッチンに対して長い間複雑な思いがありました。

正直なところ
私はあまり料理が好きではありません。

インスタグラムで見かける
美味しそうな簡単おつまみやサラダなど
「自分が食べたいもの」で「簡単そうなもの」
は作ってみようと思いますが、
毎日、家族のために
栄養バランスを考えた三度の食事を作るのは
料理好きでもなくレパートリーの少ない
私にとっては大変な苦しみでした。

そんな私ですから、
お客様のキッチンに対する情熱が
あまり理解できなかったのです。

まわりのデザイナーたちが
自宅にこだわりのオーダーキッチンや
高級キッチンを採用しているのを見て、
素敵だなと思う反面

私は「もっと安いキッチンでいい。
キッチンにまで料理のプレッシャーを
かけられたくない」と感じていました。

振り返ってみると
プレッシャーをかけていたのは誰でもなく
自分自身だったのかもしれません。

テーブルいっぱいに手作りの料理を並べる
インスタグラマーや、
友人との集まりにサラッと自分の手料理を何品か
差し入れする料理上手なママ達に憧れ
勝手にプレッシャーを感じていたのです。

「料理が好きではない」という言葉は、
昔の私にはとても言えなかったでしょう。

「私、料理好きじゃないんだ」というのが、
「私、良い母親じゃないんだ」と言っている
ように感じていたからです。

そんな私を救ってくださったのが
土井善晴先生の
『一汁一菜でよいという提案』という本です。

この本と出会い、私の料理に対する考え方は
すっかり変わりました。

昔の庶民の暮らしでは、
「みそ汁、ごはん、漬物」だけの
一汁一菜が普通でした。
だから今でも、
わざわざおかずをたくさん考えなくても、
具だくさんのみそ汁とごはんがあれば、
それで十分だと教えてくれたのです。

この考えに救われた私は、
今では「具だくさんの味噌汁を作る」
ということだけを大切にしています。

冷蔵庫にある野菜やきのこを
ぽんぽんと放り込むだけで、
美味しい味噌汁ができる。
朝食時に大きな鍋いっぱいに作っておけば、
あとはごはんと惣菜でも、
パスタと味噌汁でも、何でもOK。

そして、料理に対するプレッシャーは
すっかりなくなりました。

時間があれば凝った料理を作ればいいし、
なければ買ってきてもいい。
何よりも、
私には土井先生のお墨付き(とも言える)
「具だくさん味噌汁」があります。
もう恐れるものはありません。

こうして、
私は土井先生のおかげで
長い間抱えていた「キッチンの呪縛」から
解放されました。

今でもキッチンの引き出しには、
私を助けてくれる
レトルト食品が入っています。

でも、その引き出しを開ける時の気持ちは、
以前とはまるで違います。
自分の思い込みを捨てたことで、
無用な罪悪感から解放され、
心から食事を楽しめるようになったのです。

不思議なもので、
プレッシャーから解放され
自分のスタイルができてくると、
料理もどんどん楽しくなっていきます。

とはいえ、
やはり私は高級キッチンでなくてもいい。
キッチンも、食事も、シンプルにいこうと思います。

みなさんは、どんなキッチンが理想ですか?

#エッセイ #シンプルライフ #暮らし  #料理 #断捨離


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