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#24 Vienna

2019年9月26日

のそのそと体を起こし始める。まさに周遊旅行の中だるみって感じがして、行きたい場所も全然決めていなかったので、どうも朝っぱらから活動という気にならない。

昨夜スーパーマーケット徘徊をした時、帰り道にベトナム料理屋さんをいくつか発見して、まだ食べてもいないのにあのフォーのスープとかの優しい味を勝手に脳内でいただいていた。普段は素通りしてしまうけれど、真っ暗な道に店内の明かりが漏れていてそれがなんだかドラマチックで、ちょっと恋しくなった。この旅でまだアジアンなご飯を口にしていなかったので、ここまできてウィーンで食べてしまうのってなんか悔しいよな、とか頭の中では考えつつも、手は携帯の地図を開き、足はいつの間にかベトナム料理屋さんへ向かっていた。体はいつだって正直だ。向かったお店はその名も〈Happy Vietnam Restaurant〉。お店は小さく、地元民もアジアからの観光客もどちらもいて、ランチタイムはいい感じにぎゅうぎゅう賑わっている。

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頼んだのは恋しきベトナムヌードル、ブン。麺の上にはカリッとジューシーな豚肉と大好きな揚げ春巻きがのっていて、下にある甘酸っぱい汁を混ぜていただく。日本にある好きなベトナム料理屋さんでもよく食べている料理。本場のものとは違うかもしれないけれど(ベトナムには行ったことはない)、今このタイミングで食べられたことがすごく嬉しくてかなり満足。活力が湧いた。

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美術館の前を通るとなんとも服装の色合いが美しいマダム。パンツの色が、オーストリア名物のお菓子Mannerの可愛いパッケージの色と同じ!ヨーロッパのマダムやムッシュ(なぜかフランス語で呼ぶ)を見ていて楽しいのはみんなが時代に流されることなく好きなように合わせているところ。そして色使いも鮮やかで真似したいくらい(実際するとなるとめちゃくちゃ難しい)。

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トラムに30分くらい乗って郊外のグリンツィングというところまで。途中、窓に降り注ぐ光が暖かくうとうとしていまい、1駅向こうまで行ってしまった。少し歩いて戻る。

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坂道になっているので停留所からはバスなどを使って登っていく。ちょっと街を過ぎてから住宅街のあたりで降りる。そこから坂を下るように歩いていると、並木から栗が次々と落ちてきた。このあたりは高級住宅街となっているようで路駐でめちゃくちゃお高いブランド車があちらこちらに並んでいるのだけれど、栗はお構いなしにかなり高い位置からボコーン、ボコーンと音を立てて車を傷つけていた。住人もそれを見つけてきっと「うわっ、栗最悪やん」とも思わないのだろう。そんな出来事もひっくるめて自分の車を愛らしく感じるのかもな。

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このグリンツィングでは“ホイリゲ”と呼ばれる文化が盛ん。ワイン酒場のことで、自家製ワインと軽食が楽しめる。軒先に松の木や看板がかかっているところがホイリゲの目印。

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ぶどうの木が気持ちよく並んでいた。大衆に愛されるホイリゲ、オーガニックにこだわるホイリゲ、小さなこじんまりとした雰囲気の落ち着くホイリゲ、ビュッフェが美味しいホイリゲ…。たくさんあるので何人かと青空の下、おしゃべりしながら楽しみたい文化。

またトラムへ乗り中心地へ戻る。今日グリンツィングへ行く前に本屋さんへ寄ったとき、私がウィーンでやりたかったことを思い出させてくれた(忘れとったんかい)。それは映画『ビフォア・サンライズ』のロケ地へ行くこと。行きたかったのは〈Café Sperl〉というカフェ 。俳優イーサン・ホークとジュリー・デルピー(服装めっちゃ可愛い)がひたすら話すロマンティックムービーで、このカフェでも会話が繰り広げられるのだ。

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工事していたので窓から見る眺めがちょっと残念。窓際で本を読みながら相手を待っている女の方がとても格好良く見えた。

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コースターではなく、トレーに乗ってやってくるドリンクは特別に美しい。

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歴史を感じる内装。なんかこのお店の雰囲気、どこかで見覚えがあるような…。そうだ、私が喫茶店を好きになったきっかけのひとつのお店、神戸にある〈にしむら珈琲店〉だ。ここではウィーン菓子をイメージしたケーキを食べることができるのを思い出した。たしかにこの老舗カフェっぽい内装も似ている。思い出せたことにすっきりした。

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街中をずっとぐるぐるしていたら、あたりは真っ暗に。ウィーンに溢れるネオンの飛び出す看板が好きだ。これは〈aida〉というチェーン展開しているケーキショップ。いたるところにあるのだが、なんとも可愛いのだ。電気が切れているお店も多々あって、あちらのお店では「ida」、こちらのお店では「aid」…。この曖昧さもまた良し。

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ケバブスタンドの看板。

明日はウィーンを経つので部屋に戻り少し荷物をまとめる。シェアアパートメントはシャワールームも部屋にひとつしかないので、耳をそばだてながら入るタイミングを伺う。すかさず行くのもなんだかせっかちみたいで嫌だしちょっと空けて5分後くらいに向かおう、とか色々考えていると、3分後くらいに違う人が動きだす。次が空くまでNetflixでも見ておこう、と30分くらい見ていると、また別の人が動きだす。

ずるずる時間がずれていき、ようやく眠りにつく。

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