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障害のある夫婦だってケンカする!

障害のある夫婦でも時には他の多くの夫婦と同じように夫婦ゲンカをすることがあります。当事者が神でも仏でもないように、配偶者も女神でも天使でもなく人間です。

夫婦でケンカをするということは、別々の環境で生きてきた人間が一緒に暮らす上でお互いの価値観をすり合わせ、妥協点を見出すための1つの過程。つまりは一緒に生活する上で、ケンカは必然なのではないでしょうか。わかって欲しい相手だからこそ、不満も愚痴も出るのかもしれませんね。

しかし、障害のある夫婦というのは一種の依存関係に陥りやすいのが特徴です。対等のようでいて、なかなかそうもいかないのはケアの必要性にあるのかもしれません。ケアを全て家庭外に委ねることはなかなか難しいのが現状ではないでしょうか。

では障害があるがゆえの夫婦ゲンカの難しさについて、考えてみましょう。



障害があるがゆえの夫婦ゲンカの難しさ


✓出て行こうにも出ていくこと自体が困難

当事者側の立場で家を出て行こうとする場合、まず出ていくこと自体が物理的に困難なことがあります。移乗がひとりで安全に行えるか、自力で玄関から外に出れるか。加えて排泄や呼吸に関わるもの、薬などの必要なグッズを即座に用意できるか、安全に身を寄せたり時間をつぶせる場所はあるか。考えなくてはならないことが山積みです。障害の程度や環境によっては、出ていくことさえ不可能です。

一方配偶者の立場で出て行こうとする場合、自分が出て行ってしまうと障害のある夫や妻の生命の安全が守られるか。排泄や食事など最低限の部分を保障してくれる人はいるかどうかということを考えねばなりません。

出ていくことひとつとっても、簡単ではないのです。



✓ケンカになっても逃げ場がない

少し離れて冷静になる時間が持てないとなると、イライラしたままケアをする・されることになります。直接体に触れるようなケアには特に、する側の気持ちが反映されやすいのではないでしょうか。

少しくらいケアが雑になってしまうこともあるかもしれません。それに対して「そんなやり方しなくてもいいじゃん!」などと言ってしまえば、またそこから新たなゴングが鳴ってしまうことは想像に難くないでしょう。

離れたくともお互い離れられない部分が多いのが障害のある夫婦のケンカ。


✓命の危機に直結する

先ほども述べましたが、障害があると「もうあなたなんか知らない!」が命の危機に直結することにもなりかねません。痰の吸引、薬の管理、排泄の介助や寝がえりの介助、食事などを担っているのがもし配偶者1人だったら?ケンカしたままケアをする・されるか、もしくは死かを選ばざるを得ない状況になるかもしれません。(そんなことは決してあってはならないのですが)

※食事が摂れないと低血圧や低血糖を起こし気を失うこともありますし、痰が自力で出せない人は吸引をしないでいると呼吸困難に陥ります。排泄を怠れば尿路感染症から敗血症を併発したり、寝がえりをうてなければ褥瘡(床ずれ)を起こし、最悪の場合は命を落とすこともあります。


✓子どもを連れて出るか、置いてくか?

ケンカをして家を飛び出すとき、小さい子どもがいる場合は子どもを連れて出るかどうかも大きなポイントになります。障害を抱える当事者が子どもを連れて出るとなると、お世話や子どもの安全確保などが保てるかという問題が出てきます。

一方配偶者が飛び出すとなると自分が子どもを置いて出て、障害のある配偶者が子どもの世話や安全確保を保てるかどうかを考えねばならなくなります。


✓配偶者が出て行ってしまった時、配偶者の立場を考えると親兄弟等にケアを頼み辛い

仮に頼る相手がいたとしても、自分たちとの距離が近い人にはケアの代行をを依頼しづらいという側面もあるのではないでしょうか。ケアはお願いしたいけど根掘り葉掘り聞かれてくないし、相手の立場も考えると関係が近いからこそ気軽にヘルプが出しづらいということもあるかもしれません。


配偶者と当事者の距離感が他の夫婦よりも近くなりがちだからこそ、離れることが困難で選択肢が狭まり、クールダウンが難しくなりやすいのが障害のある夫婦の夫婦ゲンカの難しさ。



ケンカになりそう、、、どうすればいいの?


では、障害のある夫婦は一体どうしたらいいのでしょうね?

モヤモヤを抱えたまま過ごすしかないのでしょうか?それとも話し合えばわかるのでしょうか?

そんなに簡単にいかないのが家族や夫婦…。

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✓相手に対するポジティブな気持ちは日頃からはっきりしっかり伝え、ケンカを避ける

他の多くの夫婦より、何に対してもエッジがきいてしまうのが障害のある夫婦の特徴。ならば必要以上にお互いがポジティブな声掛けをして絆を深めておくことも大切かもしれません。


✓ケンカになりやすい話題や時期は相手を避けたり、必要以上に関わらない

「人には快・不快のたまるコップがあり、その大きさは人それぞれ。不快のコップが溢れると感情が崩壊する」という話を聞いたことはありますか?

体調不良や不安、困りごとや悩みが既にコップに入っていればいつもより入る量が少なく、沸点が低くなっているかもしれません。相手の体調や不快になりやすい話を見極めておくことも、ケンカを避けわることに繋がるかもしれませんね。

そういう時は必要以上に関わらず、ポジティブな言葉だけを選んで掛けることも有効です。


✓頼り先を増やすことで選択肢を増やす

私は大丈夫よ!なんて思っていても、いざケンカになってしまえばすべてを放棄したくなるかもしれません。そんな時に連れ出してくれる人や、残した家のことを頼ることの出来る先を見つけておくなど環境を整えておくことは大切です。


✓クールダウンは必要

ケンカに発展した後はもちろんのこと、ケンカに発展しないうちにこまめにストレスを発散しておくことは有効な対策でしょう。どんな人にもクールダウンの時間は必要です。


私たちはこうしています!

「障害のある夫婦」であるウィルチェアファミリーのメンバーたちはこうしています。


(当事者側)

・相手の機嫌が悪そうな時は触発しないよう距離をとる。

・売られたケンカでも買わずに受け流す。

・気分転換してその日のうちに帰宅。

・もし出ていかれても命に危険が及ばないように心づもりと環境整備をしておく。(ネットスーパーや出前宅配を調べたり登録するなど)

・日頃から配偶者が息抜きできるよう配慮している。


(配偶者側)

・こらえきれなくなったら子どもの長期休みを見計らって実家に帰る。(もちろん必要な部分は整えてから)

・当事者が家出することもあるけれど、家出前の車椅子の移乗はお互い怒りながらも見守りはする。

・必要な介助や準備は整えるが、洗濯物やお弁当など可能な範囲で放棄することもある。

・自分へのご褒美は多めに設定している。



まとめ

障害のある夫婦はその関係性が密になりやすい側面があり、密であるからこそ摩擦を起こしやすい状態にあるのかもしれません。

障害を負って夫婦の潜在的な問題が浮き彫りになることもあれば、障害を負ったことで当事者の本来の性格がより強調されることもあります。

障害があるということは様々なことにエッジが掛かり、選択肢を狭めることなのかもしれません。

もしあなたが当事者にだったとしたら、配偶者だったとしたら…。ある日突然当事者や配偶者になってしまったら…

あなたはどう乗り切りますか?




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