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【詩】やがて来る時に

 あぁ、彼が死んだ!
 もう死んでしまった! なんということか!
 もう彼は口がきけないのだ あの言葉を紡いだ口が
 あぁ、彼は世界のミューズだった 彼の言葉はまさに…!

 誰かを呼べよ 医者などいらない 今はパン屋の方がよほど良い
 お前は知らぬだろうが パン屋は夜に働くのだ
 昼にうそぶくやつじゃない 俺はそれを知っている
 さあ走れ! 世界に向けて!
 彼が死んだと言いふらせ!

 願わくば少年 牧歌の中からやってこい
 羊がいなくなってから 悔いを知ったかの男
 今はお前のその嘘が 役に立つかもしれないのだ
 誰が聞こうが誰ひとり 信じたくなど無いのだから

 お前は走れ!少年よ 使い走りとなるがいい
 ただひたすらに往復し ただひたすらに死をしら
 ただひたすらに謳うがいい 彼が残した詩を知らせ
 それは一度広まれば 否定できない虫の知らせ 在るべき未来の ひとつの形

 あぁ哀しきかな彼の死が 理想世界への第一歩
 彼が死んでからこそが 彼の思いが馳せる時
 地上の隅まで 這うときなのだ
 お前がもしも 悪魔の諜報員スパイならばと 考えるほどに二流だろう
 死こそもっとも人々の 関心寄せるものだから
 それこそ悪魔が嫌うもの 懐疑と信仰 まさに関心 付け入る隙もありはしない

 けれどもいづれわかるだろう この世は永く続かぬと
 いづれきたるその時に 誰一人として いぬことを
 それより早くに来るだろう やがて来る時に わかるだろう
 走って帰る少年が 見るべきお前は 亡骸だろう

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