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【短編】退き際と人生について

唐突かもしれないが、常々思っていたことがある。老いぼれについて、彼らの共通点はひとつだけ…それは退き際を弁えないことである。
いつまでもその席に座ろうとする、その執着たるや。
だから、言ってやったんだ。そしたら、こうやって異動だ。
でも、同時にずっと大好きだった先輩が辞めると聞いた。そしたら、なんだか、どうでも良くなったんだ。だってこんなこと言うんだぜ、聞いてくれよ。

「君たちに、最後だから全部言おうと思う。
これからは君たちは、俺の部下でもなんでもない!だから、どこかで会ったら対等に付き合おう!飲み会も全部折半だ…ははは!

俺は今回大きな決断をした。それはもう取り返せない決断だ。この決断のために、俺は一年間悩んだんだ。この会社の良いところも、悪いところも知っているが、全力でやってきたんだ。だから、この会社でずっと!と思ってた。

でもな、人生一回しかない。本当に求めているならチャレンジしたらいい。君たちだってそうだ!
実績の有無はしょうがない。やってみなくちゃな、ないんだから。
めちゃくちゃ怖かったけど、やると決めて、上司に宣言をした。
この会社に来る時も、つまり転職した時もそうだった。のちの上司に、さっき言ったことと同じことを言われた。俺は、「挑戦したいです」と言ったんだ。
そしたら、一時間半後に面談を始めると言われた。
家に帰ってスーツを着て、履歴書作って写真を撮って、家を出た。準備らしい準備なんかなかった。これまでの人生を携えて俺は面談した。そしてこの会社に来た。
ただ、転職は成功したが、親父に家を出ろと言われた。大手を抜けて、こんなぽっと出の会社に行くなんて、と。
しかし、親父のような人を増やしたいんだと伝えると、態度は180度変わったのだ。
「やってみろ」と。親父はそう言ってくれた。
ちょっとムカついたけど、それはそれで嬉しかったんだ。

なぁ、君たちはどうなんだい?
もしも、何も制限がないのならば。どうしたい?
最大限価値を発揮したら、どれくらいの人生を歩めるだろう。
考えてみてほしい、一回しかないこの人生だ。もしも最大の価値をみんなが発揮して、謳歌できたら、できなかった時の何回分の人生を歩めるのかを。
やりたいこと全部やったらいい。謳歌しろ。ちっさいことでも何でもいい。やるんだ!やれると思って!
自分しか、自分を信じられる存在はいない。自分とは一生付き合わなければいけないのだから。
自分を愛せ!
今ここで話しているという事実、この縁!君たちとの出会いが愛なんだ。
たくさん届けてくれ、この会社でもいいし、どこでも良い。
みんなを応援してる。お互い、うんとがんばろう。
もうこれっきりだ!!」

だからさ。俺辞表書いたよ。昨日付けで退職してきた。帰省のチケットはこれから取るけどね。親への連絡は、着いてから。

あぁ、本当に馬鹿馬鹿しいよな?

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