【番外編】スポーツ初観戦の初心者をアウェイ遠征に引っ張っていった話
こちらの記事を拝読し、感化されて書く二番煎じです。わたしはゲスト当人の許可を得ていないので色々とぼかして書きます。
○概要
【舞台装置】
・対象試合は2022 J1リーグ第19節 G大阪×浦和
・関東からパナソニックスタジアム吹田へ遠征
・19時キックオフ
・座席はいわゆるバックロアー指定、ハーフウェイラインのほぼ延長線上、前方ブロックの最後列あたり(ビジターユニ着用不可エリア)
・両チーム共に直近のリーグ戦はあまりスペクタクルな試合内容、パフォーマンスとは呼べない状況
【ゲストの属性情報・背景】
・女性(20代)
・ふだんスポーツ観戦の習慣はテレビ中継も含めてない
サッカーはテレビで代表戦を見たことがあるくらい(あとでわかったこととして吉田麻也、内田篤人あたりは知識として知っていた)
プレイヤーとしても小学校の体育でボールを蹴ったことがある、くらい
・部活動レベルで時間制・混戦型のチームスポーツの経験あり
・ゲストは1ヶ月ほどの連勤を乗り切った直後の週
【得られたもの】
・未体験のエンタメ、馴染みのないコミュニティに踏み込む初回の心理的ハードルを乗り越えた実績
・ゲストがどれくらい目の前のコンテンツを咀嚼できるのか、観戦レベルを把握
・この先の展開が気になる、主体的な関心を確認
・"次"の体験を求める言質をGET
【配慮したこと】
・動機付け
・負担感の軽減
・体験価値の最大化
・後味、終わり方への気配り
・コンテンツが響かなかった場合のセーフティネット
【反省点】
・興味志向のリサーチ
・事前のインプット、惹きつけ
○きっかけ
第14節、いつもの通りホーム鹿島戦におひとり様で参戦した私は、その足で今回のゲストとの約束へ。
軽くお酒を嗜みながらおそるおそる切り出されたのは「今日どうだった…?」
「今日は埼スタで試合観てから行くよ」と事前に伝えていたのだが、どうやら負けていたら機嫌が悪いんじゃないかと心配していたらしく。自分なりに結果もチェックして、この日は1-1の引き分けだったもんで心配していたそうな。当たり散らしたりしたことなんてないんですけど。
「勝てなかったけど、お互いバチバチで良い雰囲気だったし、楽しくて良い試合だったよ」と努めておだやか〜に返したところ、「レッズが勝てなかったら絶対に不機嫌ってわけじゃないんだねー」と。やべー奴だと思われてるのかな。
そこでもう少し引っ張ってみようと思った私、「スポーツとかあんまり観ない?」「部活で○○やってたよね?」など探りのジャブを挟み、「一回いっしょに観に行ってみようよ」と軽いノリで提案、首尾よく「いいよ」の返事を獲得。
今後アウェイ遠征やJ1全部見る活動、引退するレジェンドのグッズに22万円を注ぎ込む熱意に理解を得られるかどうかが懸かる、一世一代のプランニングがスタートしました。
○実現したいゴールの設定
まず最初に今回の方向性、言わば大事にしたいことの確認です。
大目的は明白、「初のサッカー観戦というイベントを通じて、ゲストに楽しんでもらうこと、サッカーを観に行ったことに良い感情を持ってもらうこと」。当たり前なんですが、これを目指していくことになります。
まず、何かを始めること、新しい環境に飛び込むことに心理的にハードル・ストレスを感じる人は少なくありません。それでも今回、「やってみる」ことは前項で担保できているため、「やってみてよかった」「またやりたい」の段階に進む必要があります。
理想はサッカーという競技、あるいはサッカー観戦というコンテンツ、究極は浦和レッズのサポートにハマってくれること。
わからないものに興味を持つことはあっても、わからないまま関心が続くこと、ハマることはありません。ゲストとはほかで築いた関係性があるので、多少強引でも二回目まではこぎつけられると考えていました。
たとえ一回目で刺さらなくとも、ラストチャンスになりうる二回目で効果を挙げるため、目の前で起きていることをどれだけ咀嚼できるか、どうしたら面白さをわかってもらえるか、何が刺さるかを一回目で確認する必要がありました。
その上で、本人のwillを引き出し、それを汲み取った"次"の企画を提示する。それを繰り返して深く潜っていってもらう、そのための第一歩として計画したのが今回となります。
○対象カードの選定
現地観戦の醍醐味として観客席の熱狂を伝えたい、自分が最も広くゲストの疑問に答えられる、折角ならば自分と同じチームを好きになってもらいたい、などの理由から浦和レッズの試合をターゲットとすることは確定。
また気が変わらないうちに実行する必要があること、ゲストのお仕事のスケジュールから、候補は7/2G大阪A、7/10FC東京H、7/16清水A。
加えて日本平には私自身が参戦したことがない点、日曜開催となり翌日ゲストの都合と合わない可能性が残っていた点、アクセスの難点などを考慮して候補は前の二試合。
最終的に、以前の実体験から角度のあるスタンドが実現する俯瞰視点とピッチとの近さの両立、チャントがない中で臨場感をもたらす屋根による手拍子の反響、遠征組ならではのレッズサポの密度、ボールプレーを重んじ、かつ擬似カウンターで縦に速い攻めも持つ両者のチームスタイルに依拠するエンタメ性への期待、複線利用を見込める好アクセス、などの観点からパナスタを選択しました。
加えて、もしもコンテンツそのものが本人の及第点に達しなかった場合に、負の感情や疲労感を補う意味で観光地/日本の台所・大阪は絶好のロケーションでした。「試合はイマイチだったけど全体的には楽しい旅行だったね」といえるセーフティネットを張ったわけです。最後の記憶がイマイチな試合になるよりも、その後の楽しい記憶でカバーできれば(誤魔化せれば)、ほとぼりが冷めればまたサッカー観戦に誘う芽も残ると考えました。
○ねらいの達成度
ゲストの観戦レベルは計れたか?…◎
「行ってみてよかった」と思ってもらえたか?…○
「また行きたい」と思ってもらえたか?…◎
"次"へのヒントは得られたか?…◎
⇒今回の体験にプラスの感情を持ってもらえたか?…75点(本人採点)
1.観戦レベルについて。ゲストの反応がところどころうろ覚えなので当時の私自身のつぶやきを引用しながら振り返る。
JR茨木駅からバスに乗り、スタジアムに向かう道すがら、競技規則のインプット。「11人対11人、7人の控えのうち5人まで交代できる」「45分ハーフで前後半、真ん中で攻める方向を交代する」「イエローカード2枚で退場、この試合中は戻れないし代わりの補充もできない」などなど、「サッカーをはじめからていねいに」。
どうやらイマイチわからないのはプレーが止まる法則性と再開方法。そこか。ボールが動いてればいいけど、「今こうなってるから静かなんです」ってだいたいアナウンスしてくれないもんな。
ものごとはシンプルに、「(タイムアップ以外で)プレーが止まるのは大きく二つ、ボールが外に出た時と反則があった時。再開方法は、プレーを止めてしまったチームの相手側から。」
「ボールが長辺から外に出たら出たところからスローイン、短辺からなら攻撃側が出したらゴールキック、守備側が出したらCK」。「角から蹴るのってそれかー!」とのこと。ふむふむ、わかってきた。これは体系立てればいけるヤツだ。
「グラウンドの中で始めるのは何?」ということでラフプレーとハンドはざっくり解説(「こういうガイドラインがあるだけで結構さじ加減なのよ」と)。警告や退場の要件は割愛。
反則でやっぱり気になるのは「オフサイド」が飲み込めるかどうか。ラグビーのスローフォワードはわかるとのことなのでそこを起点に。
「考え方は「待ち伏せ禁止」。ラクビーと違うのはパスが出てからだったら前に出ていいところ。ボールの動きの方向じゃなくて、もらう人の位置」「相手DFよりも縦方向にゴールが近いところで待ちぶせた人が触ったらオフサイド」
「プレーへの関与」「ボールラインがオフサイドラインになる場合」「GKが前に出ていた場合」は割愛。二番目のやつはいざ発生したらラグビーを持ち出して説明できると計算していました。
が、後ほど実際に観戦しながら少し欲張った私。「さっきGKとDFの間がオフサイドになるところって言ったけど厳密には違うんだ」オタク仕草が出てますね。「正しくは、GKも他の選手も関係なく、2人の相手選手より手前で待たなきゃいけないんだ」
さすがに「やりすぎたか…?」と思いましたが、「今のはGKの後ろにもう1人いたけど、ああいうことでしょ」と。天才か…?
事前にここまで説明してたら無理があったでしょうが、目の前で見ながら答え合わせできたのがよかったんでしょうね。お勉強が好きな人は少ないけど、いま観ているものを理解する助けはほしいものです。
解説してない主だったルールはGKへのバックパス、DOGSO、交代可能な回数など。必要ない必要ない。実際に起きて、気になったら聞いてくれたらいい。
試合の進み方、大枠がバッチリわかったところでいざ試合へ。この試合は開始からガンバのプレス攻勢、我らが浦和は今振り返っても月内どころか今季中断明け後でもワーストの内容だった(8/2現在)。
ゲストからは先のツイートの通り、「浦和はもっと頑張らないとじゃない?もっと一人一人が仕事しないと。」と厳しい言葉。だが大体合ってる。
「浦和の8番あんまりじゃない?取られすぎ。脚も速くないし見劣りするんだけど?」よ、佳穂ー!!
実際この試合はガンバの前からの規制がハマっていたことに加え、奥野・齊藤の前向きのチェックが出足鋭く、普段の佳穂を知らないゲスト様から見てピッチ上の現象としてはそう見えるのも致し方なし。
「足でボールを扱う技術がチーム内でも特別高くて、何より両足をまったく同じように扱える選手は貴重で、価値も高いんだよ」背負う責任を果たすべく弁解する私。
と、この辺りで気づく。これは懇切丁寧な解説で頭でっかちにさせる必要ないなと。優勢なチームだったり観るべきポイントは自分で見つけられる人だと。
ということでここからは初心者ということは傍に置き、2人して試合展開にギャーギャー騒ぐ見方にシフト。32分の失点シーン、38分の幻の失点シーンと、浦和としては完全にやられた場面ながらも、広いピッチをハイスピードで縦断する攻撃とクオリティの高いゴールが見られたことはひとつラッキーだったと思う。
で、また後述するけれども80分ごろ、終了を待たずしてG大阪 1-0 浦和レッズのスコアボードを背に退場。これはやってしまいましたなぁ。いや寧ろ私が見ていなかったからこそ…?閑話休題。
行きがけにチェックしていた帰りのバスの出発地へまっすぐ歩く。ひたすら歩く。その中で今日の試合の印象を聞いてみる。
「印象に残ったプレーとか選手とかあったー?」
「雰囲気すごかった!始まる前の花火もビックリしたし、周りの席みんなガンバ応援しててゴール決まった時とかお祭りみたいだった。浦和もあんな狭いところにすごい数の旗で迫力あった!手拍子もすごく響いてた。テレビで観るより時間経つのが早く感じた」うむうむ。上々じゃないか!
「あとね、↓
私「そ、そうか、なかなか、見る目が、あるんじゃないか?(震え声)」
マジかよ。黒川・小野瀬の仕事量の多さ、ショレの別格ぶりがサッカー初観戦でわかるものなのか???
狼狽する私に追い討ち。「次は浦和のユニフォーム貸して」
"次"いただきましたぁー!!次はね、🥷じゃなくてもいい、堂々と浦和を応援できる場所に行こう。
○企画にあたって配慮した点
そんな訳で(5,000字が見え、辛くなってきてわかりやすく端折るなど)、見事次回の、それも浦和を背負うもの(暫定)としての参戦について言質を得た今回のチャレンジ。
企画だいすきな人間として私が心掛けたのはどんなことだったでしょうか。前段で触れたところも含めておさらい。
【動機付け】
「サッカーの試合に関心が強くない、ハマらないかもしれないターゲット」に対してまず考えたのは、試合というコンテンツ以外のわかりやすい価値を準備すること。
とは言っても、埼スタの提供する副次的な価値、イベント?スタグル?関係各位には本当に申し訳ないのだがサッカーを観るために行ったことしかない私には正直わからない!
知らないことをいくら考えても答えは出ない。思いきってスタジアムの外に価値を求めよう。埼玉の…か…ち……?(筆者は埼玉の生まれです。あしからず。 住まないと良さはわからないよね(フォロー
んなら旅行・美味しいもの・良いホテルと一緒にしちゃえば良いんでね!?主にこんな逃げ腰の姿勢でG大阪アウェイという参戦カードが決定しました。
※美津の(お好み焼き)、わなか(たこ焼き)、だるま(串カツ)、北極星(オムライス)、せんば自由軒(カレー)だけじゃない。私が自分の足と鼻でたどり着いた二軒を置いておきますね。みんなでお金落として守ってください。
【負担感の軽減】
ただでさえ慣れない遊びに興じるのに、心身の余裕と回復は不可欠。後に残るのが度を超えた疲労感では、ちょっと良い思い出も辛いものに記憶がすり替わってしまいがち。
はじめからネックは混雑と、それに付随する拘束時間の長さとトイレ問題、感染症への不安だと考えていました。
対策は至ってシンプル、時差通勤と指差し確認です。
ふだん道路渋滞も念頭に、埼スタには3h前に到着する経路検索で出発、試合後は選手がトルシエ階段に見えなくなるまで立ったまま見送るカーシェア→指定席組の私も、また旅先では車線変更を1度間違えたら航空便に乗り遅れるような日程を詰め込む私も、この日はゲストの体験向上が最優先。
お昼前に大阪到着後、腹ごしらえは梅田駅の食堂街。暑い中余計な移動はしない。グレードお高めの宿に直行、荷物を置き、何もせず2hほど暑さにへばった身体を休める、休める。
出発はスタジアムで待ち疲れることもなく、かつ交通機関がピークの谷になりそうな(類推)時間、試合前練習の最中にスタジアム入りするような調整。
茨木益から乗ってきたバスを降り、帰りのバスも同じポイントから出ることをきっちり確認。Googleマップでマッピング。
入場ゲートを潜ったときにはもう中からの手拍子が聞こえているが、慌てず騒がずトイレの位置を2人で確認。出入り口の近く、自席の近く。催していなくとも着席する前に行っておく。
今回は満腹だが、ついでにコンコースにも売店が充実していることを見せておく。
前半35〜40分くらいの時点で「トイレに行くなら混む前のこの時間帯」アナウンスも忘れない。
そして今回に限り、「楽しくなければ前半限りで席を立つ」ことも視野。1h見て面白くないものをそのままもう1h見せられて、また来たいと思うケースは稀なはず。
それなら潔く切り上げて他の要素でカバーし、次の機会に賭ける。もっと体調が良ければ、機嫌が良ければ、気温が高すぎなければ次は印象が変わるかもしれない。決定力に期待できなければ条件を変えて試行回数を増やす。
帰るタイミングも、どんな試合展開でも80分くらいを見込んでいた。持論だけれども、帰りの満員バス、満員電車に捕まるかどうかはスタジアム観戦の後味をガラリと変えると考えている。とりわけこのご時世ではストレスが段違い。
なお今回は80分時点でそろそろ行くかと声をかけたとき、「もう少しだけ」とまさかの逆引き留めがあり。嬉しい驚きだった。
結局85分過ぎに後ろ髪を引かれながらスタジアムを出ると、地元の小学生くらいの集団を引率する保護者集団とかち合った。なるほど、このトータルコントロールを考えるのは子育てに似た気持ちなのか。
人もまばらな夜道を歩き、見事帰りのバス便の始発に並んで座ることに成功。完全にプラン通りだ、そう思っていた。この時までは。
【セーフティネットの準備】
前述のように、仮に試合観戦の体験がいまいちなものになったとしても、おもてなしの精神で絶対にトータルで満足させようと考えていた。
そのための旅行との統合であり、とっておきの晩酌の確保であった。
加えて翌日は複数プランの用意。起きてみて残っていた体力で選べるように手元でアレンジした行程は4パターン。いくつかの幹事をこなしてきた意地ですね。
結局満足度の点では杞憂でしたが、体力的には良い保険になりました。
○反省点
さて時は半日巻き戻り、おそらく試合を最後まで見て早歩き、もしかしたらフルスプリントでたどり着いたガンバサポを横目に優越感に浸っていると隣に座るゲスト様が気付く。「なんか点入ったっぽくない?」
ん???
自分も周囲の会話に耳を澄ませると、どうやら「追いつかれるとはウンヌンカンヌン」
なんだって??
やってしまった。浦和を応援しておきながら、チームを最後まで信じることができず、せっかくの劇的同点弾をゲストに見せることができなかった。
いや、相手のガス欠で盛り返してきていたし、信じていなかった訳じゃないが、確信していたら天秤にかけて残っていた可能性は高い。そこまで信じきれなかった。
ともあれバスの出発を待ちながらスマホの小さな画面で問題のシーンを確認。松尾の切り返し、PK獲得、ゲストの推していたショルツが沈める。ゴメン……。
ただこの辺り、その場にいる間だけでなく、あとからでも試合の行方を気にしていてくれたこと、一緒になってDAZNを確認するくらいには惹きつけられていたことを確認できたのは収穫だった。
そのほか、冒頭の記事など拝見していての気づき、後からの反省事項を箇条書きで。
選手のキャラクターに興味を持ってもらう、事前にチームを知ってもらう努力の欠如…YouTubeチャンネルは有効かもしれない。自分がもともと興味のあるコンテンツ以外をほぼ観ないので気がつかなかった。
スタジアムで過ごす試合前の時間は退屈だと思い込んでいた…屋台や人のワイガヤなど、お祭り感が今では特に非日常で刺さるかもしれないことが頭になかった。
というわけで、次は本物の浦和レッズをお見せしよう。
GO TO SAITAMA .
駄文にお付き合いくださりありがとうございました。