幻獣戦争 2章 2-3 英雄は灰の中より立ち上がる⑥
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幻獣戦争 英雄は灰の中より立ち上がる⑥
対岸の主力部隊よりこちらが脅威だと判断しているのかもしれない。攻撃がないだけマシだが、初撃を迎撃されるかもしれんな……対策を考えおくか――
「朱雀君の魔弾、迎撃されそうね」
そう思案していると、起きたのか複座席の黄泉が声をかけてきた。
「おはよう。まだ寝ていても大丈夫だぞ」
「おはよう。貴方が起きているのに二度寝はできないわ」
俺が気遣うと、黄泉はそう答え、コックピットモニター越しに微笑みが映って見えた。
「俺は責任者だからな」
「大型幻獣の取り巻き達もこちらに目を向けているわね」
俺の言葉に黄泉は話題を替え、対岸の隠岐の島那久沿岸部の映像をコックピットモニターに表示する。対岸は蜘蛛型とタウロス型が密集。渡河してきそうにも見えなくもないが、警戒しているだけのようだ。
「夜明け前で良かったのかもしれないな。この時間帯が一番幻獣の動きが鈍る」
「どうするの?」
俺の言葉に黄泉は訊き返す。
「朱雀の射撃前に機体の出力を限界まで引き上げて注意を引く」
俺は検討していた案を口にする。要は注意を逸らしてしまえばいいのだ。
「楯があるから攻撃されても大丈夫?」
「そうだな。もし攻撃されたら前と同じように楯の力場を展開して防御しよう」
振り向き微笑む黄泉に目を向け俺は答える。
「了解。本隊の方はもう展開してくれているみたいよ」
黄泉は居直り頷くと機器を操作して、コックピットモニターに周辺海域の映像と戦域図を切り替えて表示する。味方主力艦隊が既に隠岐の島近海に展開して攻撃準備に入っている。
「気が早いな。俺達が居なかったら迎撃されているぞ」
「皆、待ちきれないんでしょうね」
ボヤく俺に黄泉はそう言って映像を大型幻獣へ戻す。時刻は午前4時未明……作戦開始まで1時間を切った。
「黄泉、大隊各員を起こしてくれ。即時戦闘準備で待機。ただし主機の出力は引き上げるな」
俺は黄泉に指示して機体の稼働準備を始める。
「了解」
黄泉は頷き通信回線を開き大隊各員に通達する。
11月1日午前5時45分、観測を続けていたが大型幻獣に大きな動きはなく、相変わらずこちらを凝視したままだ――注意を引くしかないな。
「黄泉、朱雀に繋いでくれ」
俺が指示すると、直ぐに回線が開かれ朱雀がコックピットモニターに映し出される。
「どうしました?」
「敵がこちらを警戒している。だから射撃前に俺達が注意を引く。注意が逸れたら黄泉がお前に連絡する。そのタイミングで射撃しろ」
緊張気味に問う朱雀に俺はそう述べる。
ここまでお読み頂きありがとうございます!
次回に続く
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