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幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦②

2023.04.06『幻獣戦争』より発売


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幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦②

「そうだな――朱雀は特科を中心とした工兵部隊、真那は機動力を中心と即応部隊、霞は兵站管理を中心とした補給部隊。呼称は任せるが、それでどうだ?」
 俺は3人を見たまま訊く。朱雀は射撃、真那は近接、霞は万能。昔の記憶のままなら霞は3人の中で頭一つ抜けていたはずだ。一番重要な兵站関係を任せても問題ない。

「了解。という事は戦略機以外も編成されるんですね?」
「そうだ。砲撃と工作に特化した車両に戦略機を混成して編成する。ついでに答えるが、即応部隊は戦略機のみ編成。補給部隊にも車両と戦略機を混成させ、通信部隊も組み込んでいる」
 勇司は朱雀の問いにそう説明する。

「心得た。私は陸将の直掩部隊なのだな」
「あたしは、皆さんのお母さん係ですね」
 真那は満足げに笑みを浮かべ呟くと、霞は冗談交じりに二人を見ていった。
「ははは。井上さんは相変わらず例えが面白いですね」
 その言い方に一樹が面白そうに笑う。

「だって、朱雀君、真那ちゃん、麗奈ちゃんはいつも無茶ばかりするんですもの。皆陸将のモノマネが大好きなんですからね」
「どういう意味よ……」
 霞の言葉に一樹の隣に座る麗奈は不満げに呟く。
「忘れていたが、天宮麗奈一佐の処遇はどうする?」
 麗奈に一瞥にすると勇司は改めて俺を見て問うてきた。
「どうしますか? 本部長」
「君が決めたまえ」
 俺は判断を丸投げしようと本部長に訊くが、本部長はそう即答する。まあ、そうなるよなぁ。

「……わかった。天宮麗奈一等陸佐。貴官は教育大隊への転属を命じる」
 黙して待つ麗奈を見て俺は淡々と告げる。決めていた事だしな。
「――!! どうしてよ!!」
 麗奈は俺を見て激高する。恐らく、俺が何も言わないことに腹を立てているのだろう。昔のこいつはもうちょっと丸かったはずだ……この反応をみても、休息が必要だというのは間違いではないだろう。

「……俺が居ない間、無理をさせてしまってすまなかった」
 俺は取り繕うべきか迷ったが素直に謝罪する。そう、無理に無理を重ねれば人は追い込まれ、心を蝕れ豹変していく。昔の俺と一緒なのだ。今の麗奈は……
「どうして、どうしてそんなこと言うのよ! もっと恨み言を言いなさいよ! あたしのせいで貴方は――」
「今後しばらくはひよっ子達に君の経験をフィードバックしてやってくれ。それが我々の戦力向上に繋がる」
 涙を漏らし悲痛に言葉を漏らす麗奈に、かける言葉が見つからなかった俺はあくまで事務的に伝える。

「……了、解」
 麗奈は消え入りそうな声で辛うじて頷いた。
「あ、ついでに私らの紹介も良いかしら?」
 重苦しい空気を変える勢いで麗奈の隣に座る神代博士が、霞の隣に座る水原を見て手を挙げる。
「ああ。そう言えば神代博士は比良坂陸将とほとんど接点がなかったな。紹介しよう彼女は我が軍の戦略機、天照、さらに各要塞と戦略兵器の生みの親にして天災の……天才博士、神代(かみしろ)希望(のぞみ)技術一佐だ」
 博士の言葉に勇司が慌てて説明する。天才の……天才のなんだ?

「どうして天才でつまるのよ」
「いやあ、なんと説明したらいいか言葉が見つからなくてね。出来れば博士から説明して頂きたい」
 不満そうに述べる博士に勇司は困り顔で言う。
「まあ、いいわ。私と黄泉……だけじゃないけど、私らは精霊、と統一しておくけど、精霊に命を救われ同化した人間。さしずめ契約者とでもいうべきかしら? という存在よ。多少のインチキはお手の物よ」
 彼女は茶目っ気交じりに自身を紹介した。 

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次回に続く


2023.04.06『幻獣戦争』より発売

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