幻獣戦争 2章 2-3 英雄は灰の中より立ち上がる④
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幻獣戦争 英雄は灰の中より立ち上がる④
10月27日隠岐の島諸島群、西ノ島比奈麻治比売命神社沿岸部に艦隊が到着。
俺達九州要塞第一戦闘師団試験大隊は、車両と機体を揚陸させ作戦準備に取り掛かった。西ノ島は、隠岐の島に最も近い20キロ程度の広さを有する離島で、現在では駐留部隊以外の民間人は、関西要塞近郊に避難しており事実上無人島と化している。幻獣に占領される前は、隠岐の島も含めて近辺の離島群にはそれなりの島民が暮らしており、その生活風景が廃墟として今も残っている。
今作戦の最重要兵器80センチ自走砲こと『タケミナカタ』は、戦略機とヘリによる低空中運搬が行われ、設置地点は、比奈麻治比売命神社(旧地)より10キロ後方に離れた山間部に展開。射撃指示は、比奈麻治比売命神社(旧地)に設営した防御陣地からとなった。他の野戦特科車両部隊は、そこより5キロ後方の山間部に展開。当初危険性が高いため射撃指揮所は用意する予定はなかったのだが、神代博士の強い希望により、他の野戦特科車両部隊が展開する地点に急遽併設することになった。
俺は最後まで反対したが博士が折れなかったため、やむを得ず野戦特科車両部隊が展開している陣地を補給陣地としても使えるよう強化。霞達支援中隊を護衛として随伴させている。なし崩し的に後方支援部隊を集中させてしまっているから、最悪幻獣に陣地を突破されても防御陣地としての役目を果たしてくれるだろう。
俺達迎撃兼陽動部隊は、旧比奈麻治比売命神社(跡地)に展開して上陸してくるであろう幻獣を要撃する。残った戦車隊は比奈麻治比売命神社(跡地)の後方3キロ地点に展開。戦略機部隊の支援に回る。随伴してくれている支援艦隊群は西ノ島、中ノ島内海に展開。いつでも砲撃支援が可能な状態を維持してくれている。他にも航空支援大隊が北九州自衛軍芦屋基地に集結、要請があり次第出撃できるよう即時待機してもらっている。
作戦準備が滞りなく完了した10月31日夕刻、作戦開始時間まで待機するだけとなったところで問題がひとつ発生していた。
俺は旧比奈麻治比売命神社(跡地)防御陣地に仮設された休息用テント内で、コーヒーを淹れていた。
「……駐留部隊が使えないとはなあ」
テント内に設置されている飲食用テーブルの空いている席に座り、頬杖をつき持参したガスバーナーセットで、沸騰させているポットのお湯を眺めながらボヤく。正直当たっては欲しくなかったが予想はしていた。幻獣の侵攻を水際で防衛していたからな。消耗していて当然。だが、消耗しているのは兵器と弾薬だけであって欲しかった……
駐留部隊の隊員の殆どが精神的に疲弊しており、戦闘に参加できるレベルの士気を維持できていなかった。戦う意思はあったが、参加させれば間違いなく自爆していくような人間ばかり。中ノ島駐留部隊も例外ではなく、部隊長は『隠岐の島が取り戻せるなら我々が生贄になります』と、馬鹿げたことをのたまっていた。仕方ないので勇司と堰口司令を混ぜて協議した結果、療養が必要と判断。やむなく関西要塞へ撤収してもらった。
「俺達の大隊だけで陽動か……被害が出ないように戦うしかないか」
俺は持参した豆を手挽ミルで挽き、持参したドリッパーに敷いたフィルターに入れ呟く。時刻は既に夕暮れ時、途方に暮れることが出来るならまさに丁度良い時間帯だ。
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次回に続く
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