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「鬼滅の刃」ヒットの理由をマーケティング視点で考える。

鬼滅の刃が流行りに流行っている。
漫画の発行部数は1億部を超え、ジャンプの歴代の人気漫画であるワンピースやブリーチ、ナルトと肩を並べるほどになっている。
同時に映画(劇場版 鬼滅の刃 無限列車編)の興行収入は100億円を突破。歴代最速記録として千と千尋の神隠しの記録を抜いたほどだという。https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2010/26/news106.htmlhttps://www.mangazenkan.com/ranking/books-circulation.html

そんな流行りに乗って漫画やアニメを見た方も多いのではないでしょうか?
私もその一人です。
ただ、いまいちなぜこんなに人気になっているのか分からなかったので少し考えてみようと思います。
私は映画評論家でも漫画評論家でもないのでマーケティング視点で。
本記事では作品の”売り方”ではなく、コンテンツそのものに焦点を当て、なぜ売れているのかを考えます。

分析の手法として”3C分析”の考え方で見てみましょう。

①Company(自社分析)

まずは鬼滅の刃という作品の特徴を見ていきましょう。
あらすじはこう。(ウィキペディアより抜粋)

時は大正。主人公・竈門炭治郎は亡き父親の跡を継ぎ、炭焼きをして家族の暮らしを支えていた。炭治郎が家を空けたある日、家族は鬼に惨殺され、唯一生き残った妹・竈門禰󠄀豆子も鬼と化してしまう。禰󠄀豆子に襲われかけた炭治郎を救ったのは冨岡義勇と名乗る剣士だった。義勇は禰󠄀豆子を「退治」しようとするが、兄妹の絆が確かに残っていることに気付き剣を収める。
義勇の導きで「育手」鱗滝左近次の元を訪れた炭治郎は、禰󠄀豆子を人間に戻す方法を求め、鬼を追うため剣術の修行に身を費やす。2年後、炭治郎は命を賭けた最終関門である選別試験を経て、「鬼殺隊」に入隊する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AC%BC%E6%BB%85%E3%81%AE%E5%88%83

作品の大筋を見る限りでは際立った特徴はなく、まさに週刊少年ジャンプに相応しい王道なバトル漫画に感じる。
ただ、他の人気バトル漫画と比較すると鬼滅の刃の特徴が見えてくる。
特徴①登場人物のキャラクター性
同じジャンプの人気バトル漫画のワンピースやドラゴンボールなどと比較すると主人公が戦う動機がまず異なる。
主人公の炭次郎は戦いが好きではない優しい少年だ。彼が戦うのは鬼になってしまった妹を救うためである。ドラゴンボールの悟空が強い敵と戦うのにワクワクしているのとはかなり違うのが分かる。
特徴②心理描写が厚い
また、そんな主人公のため弱音も結構吐く。
ケガをすれば痛いし、雪山を走れば息が苦しくなる。

作品全体を通して登場人物の”心の中の声”の記載が他のバトル漫画と比較して多いのだ。(ハンターハンターのような心理戦は例外)
これは敵の鬼にも同様の表現が見られ、戦いの最中や終わりに人間だったころの敵の回想シーンが入り、心理描写を行っている。

「鬼滅の刃」という作品の提供価値は”共感”と”応援”
苦しいと悶えながらも必死に妹や人々のために戦う主人公の姿。人間味のある情緒的な表現が読者に共感を生むのだろう。
鬼を目の前にして悟空ならワクワクしながら戦いを挑むし、ルフィなら戦った後に仲良くなる気がするが、炭次郎や善逸は怖がる。
そういった1つ1つの出来事に対する人間味のある反応が共感を呼び、登場人物たちを応援したくなる。
つまり、ワンピースやドラゴンボールといった他の人気バトル漫画の読後感は主人公に対する”憧れ”や”かっこいい!”という気持ちが強かったが、それと比較すると鬼滅の刃は”分かる!でも頑張れ!”という感じなのだ。
この根本的な作品の提供価値が他作品と比較したときの特長であると考える。

②Customer(市場・顧客分析)

では、次に市場・顧客の特徴を見てみよう。
読者のニーズは作品の提供価値である”共感”と合致したのだろうか?

特徴①読者に作品の共感性が刺さった
雑誌広告ドットコムのデータによると週刊少年ジャンプの男女比は約8:2だそうだ。


一方で鬼滅の刃の読者層の男女比は4:6と女性の方が多いらしく、雑誌全体の男女比と大きく異なる。
よく女性は情緒的で男性は論理的と言われるが、本当だろうか?
ビッグデータで分析した結果、本当だったらしい。
女性は男性と比べ情緒的、感覚的な思考をするタイプにあり、特に高校生~新社会人はその傾向が強いそうだ。そしてこれは週刊少年ジャンプのメインの読者層と同じであり、パイの大きな層のニーズと合致していたことになる。
以上の読者層の男女比から作品の”共感性”という部分が読者に刺さったのではないかと考える。

特徴②共感性は情報拡散に効果的
Googleトレンドで作品の盛り上がりを見てみるとアニメ放送時期から異常なまでの伸びを見せている。(作品のPR手法についてはこちらのnoteを参照していただければと思います。)

平成27年度の総務省のデータによるとユーザーの情報拡散に最も影響を与えているのは”内容が面白いかどうか”ではない。”内容に共感したかどうか”である。
作品の異常なまでの盛り上がりはそのPR手法の素晴らしさもあるが、作品の特徴とユーザーの思考がマッチしていたことが大きい。
SNSで情報が拡散され、それに興味を持ったユーザーは作品を読む。設定が王道であるためユーザーの参入障壁が低いのだろう。作品を読んだユーザーはそれに共感し、さらなる情報拡散を生む。コメントがつく。
そういった循環が大きなバズを生んだのではないだろうか。

③Competitor(競合分析)

最後に競合の漫画にも触れておこう。
直接競合になるのは同じ週刊少年ジャンプの漫画であるため、同紙の連載作品を見てみよう。
連載中の作品は20ある。
これらの作品は鬼滅の刃と比較して弱かったのだろうか?
いや、そうは思えない。
これは個人的な感想になってしまうが、どの漫画も面白い。
ではなぜ鬼滅の刃が特にヒットしたのか。

この中で王道バトル漫画と言えるのは下記になりそうだ。(違ってたらごめんなさい。。)
・ワンピース
・ハンターハンター
・僕のヒーローアカデミア
・ブラッククローバー
ただ、これらの作品の読後感に持つ感想は”憧れ”や”かっこいい!”であり、鬼滅の刃の提供価値とは根本的に異なる。
つまり、鬼滅の刃のコアになる提供価値と他作品は競合しづらく、週刊少年ジャンプの読者のうち、②customer(市場・顧客分析)で述べたような層を総どりすることができたのではないかと考える。

まとめ

色々とデータ等用いて鬼滅の刃がヒットした理由を考えてみました。
3Cの視点でまとめるとこう。
①company(自社)
→共感性という作品の強みが生きた。
②customer(市場・顧客)
→作品の強みはバズりと読者層に相性が良かった。
③competitor(競合)
→他の漫画と提供価値が被らなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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