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【永久保存版!?】「鬼滅の刃」がどのように人気になっていったのか?宣伝施策まとめ

こんにちわ

いよいよ本日、10月16日(金)から、全国の映画館で「鬼滅の刃 無限列車編」が上映開始されました。

初日からにIMAXで観に行ってしまいましたがとても楽しかったです。そして、よくあんな映像作れたと脱帽しかありません。

さて、今回の映画は、アニメ映画としてもコロナ後の映画としても最も全映画業界人が注目している映画だと言ってもいいくらいです。劇場もほぼ満席・・。

おそらくというか、必ず週明けには「鬼滅の刃」のヒットの秘密とか、どうなったのか?いろいろなところで聞かれると思います。そこで、今回は事前に何が起こったのかをまとめて備えようというコンセプトで書き始めてみました。

今回なぜ異常現象に感じたかですが、例えば、TOHOシネマズが公開日に合わせて、映画館の全席開放をします。

さらに、「TENET テネット」で話題になったIMAX形式でも上映されます。そして悲しいことに一部の劇場では「TENET テネット」の上映を終了します。

それほどまでに、日本の映画界がこの作品に注目している、またはコロナ後の映画業界を救う作品として位置付けられていると思います。

火曜日の座席指定券の発売日には、席が買えない!とtwitterでも話題になりました。

(公開日のグッズコーナーの様子)

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さて、今回は、「鬼滅の刃」がどのような仕掛けでヒットまでつながったのか?よくある外から書く批評というよりも、少し中の人になった気分で、研究してみようかな、と思います。

(注意)この記事は途中から有料にさせていただきます。買っても読んでもらいたいなと思う。価値あるまとめなので。

罫線たんじろう

はじめに

今回の手法としては、既に既知となっている情報(ネット上にあるもの)をベースに、時系列的に宣伝企画書を作っていくような感じで行います。

そうすることにより、「あー作品が良いからヒットしたんでしょ」という感じではなくて、「こんなに周到に宣伝準備をしているからこそ、ここまで盛り上がっているのか?」というような通常とは違う!ポイントを見つけることにあります。

その作業をしていくことにより、今後宣伝やマーケティングに携わる方が、今自分たちがやっている施策について振り返りながら、さらにブラッシュアップする機会になれば良いなと思いました。もちろん自分もです。

そして、あわよくばこれをまとめて、周囲の人に「鬼滅の刃」のヒット要因について聞かれたときに、いちマーケティングを行うものとして話せるようになったら良いなと思いまとめています。

なお作品については、アニメを全て見ている、または漫画をすべて読んでいる認識で進んでいきますので、細かいアニメの設定は割愛しますのでご容赦ください(自分はアニメもそうですが、ジャンプで最後まで読んでいます)。

今回は、いくつかフェイズを分けて考えていきたいと思います。

googleトレンドで盛り上がりを調べてみました。

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これはグーグルトレンドで「鬼滅の刃」の盛り上がり度を比較したグラフです。参考までに「ワンピース」「ドラゴンボール」を挙げております。

「鬼滅の刃」は、青い線ですが、こうしてみると、アニメの放送から一気に上がっていき、映画発表でさらに数値が上昇したことがわかります。そこで4つのフェイズに合わせて考えていきたいと思います。

1 漫画連載開始〜アニメ化発表
2 アニメ化発表〜アニメ放送開始
3 アニメ放送期
4 映画発表〜映画公開

この4つの期間でそれぞれ調べていきたいと思います。

罫線たんじろう

まず事前に読んでおきたい記事をあげます。

■ 「鬼滅の刃」がどのようにして生まれたか?(週刊少年ジャンプ編集部 片山達彦さんのインタビュー)

ここでは、吾峠先生がいかにして「鬼滅の刃」を生み出したのかについて編集担当者の体験からエピソードが語られています。

この中で、吾峠先生の人柄に関してチェックしておきたい箇所は下記です。

セリフの力が圧倒的(言葉の本質を見ている人)
・キャラクター像を考えるときに、吾峠先生のカッコいい見た目の一つに『ゴルゴ13』があったと判明
銀魂が好き
『ジョジョの奇妙な冒険』のファン ※呼吸法は『ジョジョ』の波紋の呼吸に通じるところもあるし、不死身の鬼というモチーフも『ジョジョ』を彷彿とさせる
・リアリティを大事にする(普通の人間がそんなにすぐ強くなるわけない)
・先生は、自分のために描いていない。いつも考えているのは、読者が楽しんでくれるかどうか。
小中学生でも理解できるわかりやすさと、作家性の両方を兼ね備えた作品である

ちなみに、コミックは、累計発行1億部を超えました。週刊少年ジャンプで1億部を超えた漫画は、過去に7作品しかないようです。

ちなみに7作品とは、「ドラゴンボール」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「ジョジョの奇妙な冒険」「SLAM DUNK(スラムダンク)」「ONE PIECE(ワンピース)」「NARUTO-ナルト-」「BLEACH(ブリーチ)」です。これらの作品に並ぶこととなりました。まだ単行本が発売されることからさらに記録は伸びていくと思われます。

罫線たんじろう

さて、今回の宣伝試作分析においては、下記のインタビューと公式情報を活用していきます。

■「鬼滅の刃」のアニメ化のマーケティング戦略について(アニプレックス 高橋祐馬さんのインタビュー)

アニプレックスのプロデューサーである高橋祐馬さんのインタビューです。この方がメインの仕掛け人なので参考にしたいと思います。

アニメを放送するテレビ局や配信サービスを増やして多くの人が見られる環境をつくり、劇場での先行上映で原作ファンとの信頼関係をつくり、ラジオや番組で視聴者をつなぎ留め、新しい視聴者を獲得した。
「場をつくることは、意図して努力しなければ創れないもの」
高橋氏は「ヒットの魔術はない」と説く。「結局は一人ひとりの視聴者の重なり合い。だからこそ、個人が何を感じるのか、どう思うのかを大切にし、誰が見ても理解できるよう制作した。その結果、1の総体を大きくすることができたのだと思う」

記事では上記のような言葉を話されていました。これが具体的にどういうことなのかを考えていきたいと思います。

また、同じ高橋さんのインタビュー記事が掲載されている「日経エンタテインメント!」2020年11月号も参考にさせていただきます。

最後に、時系列を追うのと情報の抜け漏れ確認で、作品のSNSを使わせていただきます。

(公式twitter) https://twitter.com/kimetsu_off?s=20

では、まず最初に漫画連載開始〜アニメ化発表を考えてみたいと思います。

なお、調べ方としては、googleで期間を限定してひたすらニュース検索をしました。そのため多少漏れもありますがご容赦ください。

罫線たんじろう

1_1 漫画連載開始〜アニメ化発表 <情報整理>

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作品単体だけでその期間を調べると下記のようなトレンドでした。

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小さくなり恐縮ですが、ボックスに左から番号をふっています。

① 連載開始は、2016年2月15日です。当初はこんな感じのニュースでした(取り扱ったのはコミックナタリーのみです・・)

② 連載開始してから約8ヶ月たった10月ごろ(第3巻が出るころ)には、ギャグ要素が良いということでニュースがでました。これは主要キャラである我妻善逸(あがつまぜんいつ)や、嘴平伊之助(はしびらいのすけ)がようやく登場し、作品としてのバランスが取れてきたことが要因に考えられます。

③ 2016年12月にコミックス第4巻が発売されました。その際に『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博先生が称賛のコメントを帯に書いたことで話題になりました。合わせてLINEスタンプも発売されました。

<実際の帯のコメント>
(希望:絶望)≒(憎悪:愛情)
私が好きになる作品の黄金比率です。これは・・・大好きです。

④ 2017年1月、この時から人気が高まったことがわかります。それは、コミックスの大重版を記念して、巻頭&表紙となりました。

⑤ 2017年3月、第5巻発売の折にはは、「こち亀」でおなじみの秋本治先生からの帯コメントをして話題になります。

<実際の帯のコメント>
炭治郎!頑張れよ!!と日本的美学のある作品です!敵も仲間も全員怖すぎる!
禰豆子~早くなんとかしてくれよ~ 心配で心配で(心配で、心配で)

⑥ それから期間はまた開きます。10月25日のジャンプ47号では、初の人気投票が行われました。応募総数は26,105票だったそうです。

⑦ 12月25日には、『鬼滅の刃』のポスターがジャンプ本誌につきました。

⑧ 2018年3月には第10巻が発売しました。帯は「空の境界」「Fate」シリーズなどを手がける奈須きのこ先生によるものでした。

みなさん気付いたでしょうか??そうなんです、「空の境界」「Fate」シリーズも今回のアニメと同じ、ufotableとアニプレックスのコンビで提供された作品です。なんと、アニメ化の発表3ヶ月前にそのようなフラグを立てていたのですね。(すごい!!)

ちなみに、富樫先生、秋本先生、奈須先生の帯は下記のtwitterをご覧ください。

⑨ そして、TVアニメ化の発表がなされます。それがでたのが、2018年6月4日です。

11巻と言えば「吉原遊郭編」がちょうど終了するところです。本誌だと「刀鍛冶の里編」でしょうか・・。そんなときにアニメ化が発表されました。なお、この時点ではアニメの放送時期が決まっていないので、各関係者間でまだ交渉中だったのだと思われます。

アニメ化の発表の際に、ティザーPVも公開されました。この時はまだ声優も未発表だったため映像のみです。しかしながら、ufotableの制作と決まりざわつきました(googleトレンドでも反応あり)。

原作者サイドもアニメ化の発表の際に話題になるように力を入れます(※両作品とも同じアニプレックス作品なので、アニメ側の施策かもしれません)。

「約束のネバーランド&鬼滅の刃:Wテレビアニメ化記念 渋谷駅に左右で意味が変わる!?ポスター」と人気2作品を同時発表したのです。

ポスターは横長形式となっており、右側と左側、読み始める方向で物語の結末が変わる仕様。「約束のネバーランド」は右から読むと脱獄の物語、左から読むと服従の物語、「鬼滅の刃」は右から読むと希望の物語、左から読むと絶望の物語が展開され、2作に共通する“鬼”という敵に対峙した、

罫線たんじろう

1_2 漫画連載開始〜アニメ化発表 <宣伝考察>

連載開始が2016年4月です、アニメ化の発表が2018年6月です。そこまで約2年2ヶ月ありました。その間に大きなポイントとして下記の3つのことが必要ではないかと思います。

A. アニメ化権の獲得(獲得するには制作会社、スタッフィングやビジネスプランが必要)
B. 具体的なビジネススキームを組む(上記実現のための制作から回収までのプラン)
C.アニメの情報出しのタイミングやその方法(ターゲット含む)

なんとなくそれを起こしてみたのが下記表です。超勝手な推測です!

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A. アニメ化権の獲得(獲得するには制作会社、スタッフィングやビジネスプランが必要)

連載が始まって間もなく、高橋氏は集英社にアニメ化を打診。その後、座組を検討する中で、制作会社をufotable(ユーフォーテーブル)に決めたという。「過去十数年制作を共にしてきて、物語の明暗や夜のシーン、戦闘の描写を得意とするufotableがつくる鬼滅の刃を一人のファンとして見てみたかった」と高橋氏は言う。

先ほど参考にした記事には上記のように書かれていました。つまり、2016年時点(日経エンタでは、16年中頃と記載)でアニメ化を打診しつつ、制作会社であるufotableに相談したのだと思います。

通常人気のアニメ制作会社は、かなり先まで制作作品が埋まっており、最低でも2-3年先の放送作品として相談するというのがほとんどです。ですので、2019年4月のアニメということを逆算すると、2016年中には、打診をしていたということが考えられます。

ちなみに座組みという話で、プロジェクト費用の概算の算出が必要です。この時点で、映画化が決まっていたのかは分かりませんが、単純なアニメ製作費として計算すると、2クールなので、1話3,000万円(下記の記事のMAX)とした場合、26話なので、制作だけで7億8,000万円のプロジェクトです。

これを様々な方法で回収していくスキームを2016年中に決められたのだと思います。そして、これを、「アニプレックス」・「集英社」・「ufotable」の3社でお金を出し合い製作委員会を組成しました。

なお、なぜ、「鬼滅の刃」をアニメ化しようとしたかについて3つのポイントを語られていました。

1 「”呼吸”という主人公側の技、敵の鬼たちの”血鬼術”と、見たことがないバトル描写」
2 一見相反する「王道と”新規性”」
3 「キャラクター性に紐づくセリフ」
「テレビアニメという映像表現として、キャラクターの魅力や毎週の物語の面白さはもちろん必要です。『鬼滅の刃』には少年の成長物語や仲間との出会い、人と鬼との戦いといった王道かつ普遍的な物語性が根っこにありながら、自分はそれを”新規性”と読んでいるんですが、実は、敵である鬼にもすごく悲しい過去があったり、あるいは主人公側も各キャラクターがそれぞれ悲しみや別れを背負っている単なる勧善懲悪ではない物語が非常に面白いと思いました。」
「吾峠先生のセリフ選びは、日本人にはみな同じ50音を与えられているのに、なぜこんなに魅力的に並べられるのかと思います」
(以上、「日経エンタテインメント」のインタビューより)

B. 具体的なビジネススキームを組む(上記実現のための制作から回収までのプラン)

上記は、あくまでも構想なので、それが現実的に可能かどうかを探っていく作業が必要です。そこで語られていたのが例えば下記のようなことです。

放送が深夜枠だったことに対しても「視聴率を追ったわけではない。作品にとって正しい場所だった」(高橋氏)と話す。
「深夜だからといって視聴者が限定されるわけではない。録画をしたり配信サービスを利用したりと、届け方は様々。深夜で放送していることを知らずに、動画配信サービスをファーストウインドーとして見るケースも少なくない」(高橋氏)。そこで、作品を見やすい環境をつくるため、異例の展開をする。通常の深夜アニメであれば4、5局で放送されるところを、何と20局と提携したのだ。(省略)地上波放送だけでも人口カバー率は約70%以上。それだけで8000万人が視聴でき、BS/CS放送も含めれば、テレビのプラットフォームだけで日本全国の人が視聴できる環境をつくった。加えて、動画配信サービスも「契約できるところすべて、約20社と契約した」(高橋氏)

ちなみに、「通常の深夜アニメであれば4、5局で放送される」とされますが、これの理由はメディア費用がかかるからです。アニメの場合、テレビ局にかけてくださいというお願いをするので、30分の枠を買うことになります。その金額は放送局を足せば足すほど大きくなります。そのため、多くのアニメ作品は、メディア予算が限られるため、多くの放送局でかけませんニコニコ動画やAbemaTVでも見ることができるので、わざわざ網羅する必要はないのです。

ただし、ここまで放送された場合、そのアニメにどれだけ力を入れているかという姿勢がアニメファンに伝わります。「え、鬼滅の刃はこんなところでもやっているの?このアニメってどれだけすごいの!?」と視聴者は思います。その時点で他のアニメ作品とは一線を画します。それが日本全国の人が観れる環境づくりだと思います。

つまり、この20局でかけるということが、本企画のビジネスプランを遂行していく上での鍵だったのだと思います。

この作業をするのは大変だと思います。例えば2016年4月にアニメ放送したとした場合、各局の放送ラインナップは、大体半年前に決まってきます。そこから、逆算すると、2018年秋には決めている必要があります。今回のような20局で考えると、さらにその前の春か夏ごろにはこの相談を開始していたのではと思います。

C.アニメの情報出しのタイミングやその方法(ターゲット含む)

2018年の6月が最初の情報出しがありました。これはジャンプの本誌とも連動している施策でした。まず、大前提として2019年4月にアニメを放送すると決めている場合、この発表の情報出しの際には、ほぼあらゆることが決まっていると推測されます。

その理由としては、声優が忙しいからです。なんで?と思われるかもしれませんが、大きくは宣伝に関わります。後述でも出てくる数々の主演声優の出演する宣伝スケジュールですが、人気声優はかなり先まで埋まっております。そのため、半年から1年以上前から抑えておく必要があるのです。。

例えば、2018年10月にキャスト発表と同時に生アフレコイベントをやっていますが、それを実行する上では、2018年の頭にはもう予定を抑えている必要があるのではないかと思います。

とすると、主演の花江さんなどは、2017年〜2018年初頭のあたりで決まっていたのではないかと思います。

さらに6月の情報出しに関して、映像が出ています。それも、炭治郎が動く動画です。そうすると、それまでに竈門炭治郎がどのようなキャラクターデザインで、どのように動くのかが決まっていないといけません。映像制作だけで考えてこうした30秒の動画を作るのに、3ヶ月程度かかると推測すると、2017年時点ではキャラクターデザインなどはある程度決まっていたのではないかと思います(実際にufotableのインタビューでは、2018年はテレビ放送などをおやすみして「鬼滅の刃」に費やしたと書かれていました)。

以上が、アニメ化発表までの考察です。では、また情報出しに戻っていきます。

罫線たんじろう

2_1 アニメ化発表〜放送開始 <情報整理>

次の期間は、アニメ化発表から、アニメの放送開始までの期間です。下の表で見るとまだ大きな動きはみられません。

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では、具体的に「鬼滅の刃」のみで拾っていきます。映像が多く出るわけではないので、第1話放送の直前でグッと上がっていきます。

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では、左のボックスからまた追っていきたいと思います。

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